「寮のある学校」というと、日本でも高校くらいからであればそれほど珍しいわけでもない。一部には、英国のパブリックスクールにならい、「エリート教育」を標榜した私立の全寮制中高一貫校もあるほどだ。

しかし、これが幼稚園となると驚かれるだろう。じつはおとなりの中国では、そうした寄宿制の幼稚園が決して珍しいわけではない。ちなみに中国における「幼稚園」は「幼児園」といい、日本でいう保育園と幼稚園の両方の機能を持った教育施設である。

そして中国では、寄宿制の幼児園も数多く存在している。親の感覚では、「そんなに小さいうちから子どもを終日預けるなんて!」と思うだろうが、月曜から木曜(もしくは金曜)までを幼児園で過ごし、週末を家族と過ごす家庭も多い。
もともとは戦時中の混乱期に、子どもたちを社会が親に変わって保育することを目的に生まれた制度だそうだが、共働き家庭が一般的という中国の社会事情になじみ、現在にも引き継がれている。

このたび筆者は中国・華南地域の中心都市である広州市の幼稚園を取材する機会を得た。訪れたのは広州市の中心部にある「黄金幼稚園」。同園に通う児童は企業家や政府の役人の子息などが多く、いわゆる富裕層が通う名門幼児園だ。

3歳クラスから6歳クラスまでの4学齢で400人の児童が在籍しており、うち140人が寄宿制、残りが日本と同じような送迎のある通園型である。

日本では滅多に聞くことのない幼児からの寄宿制とはどんなものだろうか。園長にきくと、「幼少期から親元を離すことに親子ともに当初は不安も多いのですが、子どもは2~3週間もすればその生活に慣れてきます」という。

通わせている親に話をきいたところ、「一人っ子ということもあり、それまでは何かにつけて親頼みだったりわがままだったのが、集団生活を通じて解消され、自分で時間管理ができるようになり、今では寄宿制にしてよかったと思っています」と話す。

近年、日本でもさまざまな家庭状況の問題と教育現場での課題から、子どもたちが不幸になってしまうケースもあるが、ひとつの解決策として、こうした幼児期からの寄宿制教育施設というのが、ヒントになるような気がした。


深田洋介深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。