「少子化対策」というフレーズを新聞やテレビで見かけるようになって久しい日本。しかし残念ながらまだ具体的な対策が見えていないのが現実だ。海の向こうのドイツやイタリアなど、先進諸国の中でも同じ問題を抱えている国は多い。しかし、そのなかにはかつて日本と同様に少子化に悩みながらも、あっという間に出生率を上昇させた実績を持つ国がある。フランスが、それだ。
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フランスでは1964年頃から出生率が低下、1994年には1.65まで下降。ところが翌1995年から徐々に上昇し始め、2003年は1.89、2007年には1.98まで回復。同年1.34の日本とは対照的に、ついにはEU 25ヶ国のなかでもトップクラスの「合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子供の平均数)」を誇るようになったのだ。

同国ではこの間、いったい何が起きたのだろうか。在日フランス大使館広報部長のジュール・イルマンさんはこう語る。
「それは制度が充実しているということが1つにはあるかも知れません。例えば、どこのどんな大企業であれ、地方の中小企業であれ、従業員はみんな25日以上の有給休暇をもらえます。これは、法律で決まっていること。また、女性社員に子供ができたら、企業は妊娠前後で計4ヶ月の有給休暇を与えなければなりません」
こういった制度の充実は、何も休暇に関するものばかりではない。

 「2人以上の子供を持つ親から希望があった場合、企業は3年間の育児休暇を取得させなければなりません。そして、その休暇取得後は、休暇前と同等のポジション、またほぼ同等の給料での復帰をさせること。その間は、企業に給与を支払う義務がない代わりに、国からおよそ500~600ユーロの手当てを保障しています」
 このような制度のおかげで、生活費やキャリアの心配をすることなく出産に関わることができるというわけだ。また、こうした育児制度だけでなく大切なことがあるという。
 「それは保育園です。政府は託児施設の充実には力を入れてきました。子供ができても、ほかに預けられる場所がなかったら、子育ての負担が増えてしまう。出生率の下降はこういうところから始まるんです」

そんな政府の意気込みを象徴するエピソードがある。パリの市長が託児施設の受入能力拡充が、市政の最も重要な課題であると訴えて、公邸を改造して市職員用保育所を作ってしまったのだという。
こうした子供を持つことに対する不安や負担を、できるだけ軽減してあげる制度がまさに実った結果といえるのだろう。

かくゆう、イルマンさんもこの制度を利用した1人である。

「フランスでは、父親に対しても出産休暇が認められているんです。生後4ヶ月以内なら、有給で約2週間ほど取得できます。私も今、5ヶ月になる赤ちゃんがいるんですが、妻の出産の際には、この休暇と普通の有給を合わせて1ヶ月ほど取得しましたよ」
 初めてのお子さんをということで、奥さんは育児でお疲れだったということもあり、休暇中はできるだけそばにいて、全面的にフォローしていたんだとか。
 いくら手厚い子育て支援制度があったとしても、父親が育児に無関心であっては、母親も産む気にはなれないだろう。イルマンさんのような父親としての存在が、フランスの出生率を上げている要因のひとつなのかもしれない。

D_01_08_france05-300x200ジュール・イルマンさん
在日フランス大使館広報部長6 ヶ月一女のDAD

■転載協力:FQ JAPAN
(この記事は2008年12月発売FQ JAPAN vol.10で掲載されたものです。)