ここ数年、ベビーブームのフィンランド。薄着の季節になると大きなお腹の妊婦さんたちが目につきます。高福祉国家のこの国で、昨年、第一子を出産した経験を元に、フィンランドの出産事情をお伝えします。

まず、妊娠が判明したら住んでいる地域の「ネウヴォラ」に予約を入れます。「ネウヴォラ」とは日本でいう保健センターのような所で、妊娠中の定期検診、出産後の子どもの健診や育児相談などが行われます。また「アイティウスコルッティ」という母体の健康手帳を発行してくれます。
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妊娠9ヵ月までは月に1回、その後臨月までは月に2回、そして臨月に入ると週に1回の検診があります。妊娠経過が順調な場合は第12週から20週まで定期検診はありません。この期間、まだお腹も目立たず本当に赤ちゃんが順調に育っているかどうか不安になったのをおぼえています。

検査費用はすべて無料

そして妊娠中の超音波検査は全部で2回のみ。12週目と20週目に、こちらは「ネウヴォラ」ではなく、総合病院で先天性の異常があるかどうかを調べます。12週目はダウン症の検査。これは任意ですが、高齢出産かどうかに関係なく、かなりの妊婦さんが検査を希望するそうです。

20週目の超音波検診では性別がほぼ確定できます。何年か前までは性別を聞くのに料金が発生していたそうですが、「生まれてきたら違う性別だった」というケースが多々あり、無料になったとか。ちなみにこれらの検査費用はすべて無料です。

育児スタートセット「アイティウスパッカウス」

妊娠6ヵ月に入ると、国から支給される「アイティウスパッカウス」と呼ばれる育児スタートセットか、もしくは現金(140ユーロ)が選べます。この「アイティウスパッカウス」には、赤ちゃんの肌着や布おむつ、防寒着や布団など、そのほか赤ちゃんの必需品が盛りだくさんに入っていて、さらに箱の中に布団を敷けばベビーベッドとしても使えるすぐれものです!
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現金をもらうよりはるかに価値がある内容で、初めての子どもの時は「アイティウスパッカウス」を選ぶ人が多いそうです。私ももちろん「アイティウスパッカウス」を選びました。赤ちゃんの爪切りやお風呂のお湯を計る温度計など、ついつい揃え忘れてしまいそうな物まで入っているので本当に助かります。

友だちも参加できるオープンなお産

出産予定日の3~4週間前に、出産する病院の見学会へ参加します。ちなみにヘルシンキで出産できる病院は市内に2ヵ所のみ。事前にどちらの病院を希望するか伝えておきますが、出産当日の混雑状況によっては必ずしも希望の病院で産めるとは限りません。

出産時の立会いは配偶者や(子ども以外の)家族、そして友だちも参加することができます。

基本は無痛分娩

フィンランドでは麻酔による無痛分娩が基本です。必要な場合は笑気ガスを使うこともできます。中にはこの笑気ガスだけでお産を乗り切るツワモノの妊婦さんもいるとか。私の場合、日本のように麻酔を使わずなるべく自然に産みたいとスタッフの方に伝えておきました。

が、人工破水しても痛みのため体が強張り、なかなか子宮口が開かず、予想では5cmのはずが、看護婦さんの「まだ2cmね」の言葉に、「やっぱり麻酔をお願いします!」となり、『麻酔を使わず自然なお産』という決意はもろくも崩れ去ったのでした。

麻酔後、胎児の心拍数が下がり、一時は緊急帝王切開になるところでしたが、その時すでに子宮口が最大になっていたので、そのまま産むことになりました。結局、夫と日本から来てくれていた母に見守られつつ、助産婦さんの上手なリードのおかげで、無事に出産を終えたのでした。
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通常、入院は3日間で、相部屋もしくは空いていればファミリールームという個室に入院することができます。ファミリールームには産まれて来た赤ちゃんの兄弟も泊まることが可能です。産後、休む暇もなく24時間体制で子どものお世話が始まるので、リラックスできるファミリールームはやはり人気です。

出生時3,000g未満は血糖値の検査

出生時の平均体重が4,000g前後というフィンランドでは、3,000g未満で産まれた赤ちゃんは低体重児とみなされ、血糖値の検査が行われます。低体重児は低血糖値の場合が多いらしく、2,660gで生まれてきた息子もやはり数値が低かったため、正常値になるまでこの検査は続きました。この世に出て来てまだ数時間しか経っていないのに、小さな足の裏に針を刺され、見ている方も辛かったです…。

さて、出産までにかかった費用は、2回の超音波検査と3日の入院費(個室)で約36,000円(当時レート)。日本と比べると超音波検査の回数や出産できる病院の数などがかなり質素ですが、出産にお金がかからず、しかも充実した妊娠・出産支援制度が整っています。

言葉の壁などいろいろと不安はありましたが、これらのシステムのおかげで、外国人の私でも安心して満足のいく出産ができたことは間違いありません。


中村雅子中村雅子
北欧デザインに魅せられ、2004年に渡芬。2007年、日本人の夫と共に日本のデザインプロダクトを販売する店「common」をオープン。また、フィンランドデザイン・雑貨を販売するウェブショップ「カウッパトリ」を運営。最近活動的になり始めた息子に振り回されつつ、フィンランドでの子育てを満喫している。家族は夫と2010年生まれの息子。ヘルシンキ在住。