子をもつ親であれば、一度は児童館を利用したことがあるだろう。自治体が運営する児童館は、室内遊具やおもちゃが揃い、読み聞かせや工作などのイベントも随時開催、0歳児から小学生あるいは中学生までが安心して遊べる場だ。働く親をもつ小学校低学年の子にとっては、放課後児童クラブとしても機能している。

筆者も長女が0歳の頃から、徒歩圏内の区の児童館を利用しているが、たくさん遊びたい!というときに重宝していたのが、都が運営する東京都児童館だ。遊具や遊びのメニューが豊富なのに入館無料で、親子で一日遊べる。

渋谷駅から徒歩5分の好立地にあり、区外の子連れ友人との待ち合わせに利用するほか、保育所に入る前には、ここでじじばばに子どもを託して仕事に行くなど、非常に活用しがいのある施設であった。

気がつかぬうちに廃止されていた東京都児童館

それが、東日本大震災を機に、老朽化のため一時閉館に。年が明けて、そろそろ改修工事も終わり、一部でもオープンしているかと期待を込めて東京都児童館のHPを開いて驚いた。「休館及び閉館のお知らせ」となっているではないか!
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そのお知らせによると「11月30日開会の平成23年第4回定例都議会に提案して」いた「児童会館廃止条例」が、12月15日の本会議において可決されたとのこと。そして「このことに伴い、児童会館は平成24年3月31日をもって廃止となります。」という。

今後は「これまで児童会館が担ってきた、『地区児童館への情報提供や児童館活動の研修の場、 子どもの創意工夫を引き出す遊びの提供』などの機能を、24年度中に開設予定の子ども家庭総合センター(仮称)に移転し、都全域を対象とした区市町村への 支援を重点的に行っていきます。」と案内されている。

機能が違う!代替新施設

なんだ、北新宿に移転するのか、あ~びっくり、よかった……と、「子ども家庭総合センター」のサイトを見て、これまた驚いた。機能が違うではないか! 新施設は育児・教育相談を一括して行うのを主たる業務とするもので、これまでの児童館で行ってきた「子どもの遊び場」の要素はほとんどない。

東京都の担当部署に確認して、経緯や今後について聞いてみた。まとめると、次のようになる。
  • 東京都児童館はもともと老朽化が指摘されており、子ども家庭総合センターの開設と同時に一部機能を移転させる方針だった。それが震災が起きて休館から閉館へとなってしまった
  • これまでも児童館というのは「子どもの遊び場」のほか、「地域の児童館指導員を教育する場」としての役割があった。子ども家庭総合センターでは、その機能を引き継ぐ。したがって渋谷にあった児童館のような遊び場の要素は少ない
  • 開館した昭和39年は児童館が少なかったが、いまでは各地にできてきている。都が児童館を直接運営するのではなく、市町村が整備できるように後方支援に徹するのが都としての今後の役割と判断された

開館から47年も経っているのだから、老朽化による「休館」はやむを得ないが、なんとも急な「閉館」宣言に感じてしまう。しかし実は、2008年くらいからひっそりと広報はされていたそうだ。東京都児童館のHPの「お知らせ」をクリックすれば、知られるようになっていたようである。

他県の場合を調べてみた

そうか、大型児童館の役割は終わったのか…と、残念に思ったが、他県はどうなのだろう。調べてみると、公立の大型児童館というのは実は多くはないようだ。東京は恵まれていたほうだったのだろう。

大阪・堺にある大型児童館「ビッグバン」にいたっては、府立でありながら、大人の入場料は1000円、小学生600円もする(名誉館長が松本零児氏で、凝った空間演出だそうだが)。

一方で、三重県・松阪市の「みえこどもの城」のように、これまでの科学館的な常設展示などから「いつ来ても何かが変化しているような、 イベント運営・参加体験型の児童厚生施設」に生まれ変わった例もある(アートスペースなど場所によっては有料だが、入館料は無料)。

各児童館のHPを見ていると、行ってみたい!と思う施設も少なくない。宿泊型児童館というのが存在することも初めて知った。旅行時には利用しがいがありそうだ。

「子どもの育ち」をどう考えるかの各自治体の姿勢が垣間見える

大型児童館の役割は、都の担当者が言うように「環境変化」にともなって変わっていくのだろうが、一方で「子どもの育ち」をどう考えるか、自治体の姿勢をも映し出しているとは言えまいか。

一口に「子ども」といっても年齢、性、個性によって遊びの種類はさまざままであり、近所のこぢんまりとした児童館も必要だが、いつどんな子が訪れても楽しく過ごせ、かつ親のお財布にも優しい公立の大型施設は、今の時代だからこそ、望まれるのではないだろうか。

ちなみに東京都児童館跡地は、「都市再生ステップアップ・プロジェクト」として「渋谷・青山・原宿を結ぶ人の流れを創出し、生活文化やファッション産業等の発信拠点を形成」するものに生まれ変わるそうである。

東京都児童館ホームページ


江頭紀子江頭紀子
調査会社で情報誌作成に携わった後、シンクタンクにて経営・経済に関する情報収集、コーディネートを行いつつ広報誌も作成。現在は経営、人材、ISOなど産業界のトピックを中心に、子育て、食生活、町歩きなどのテーマで執筆活動。世田谷区在住、6歳1歳の二女の母。