先月(2012年1月)書いた拙稿『真冬の公園にDSする小学生がたむろしている理由』 が、2月末になって異様なほど反響を呼んでいる。当サイトMAMApicksだけでも現在7000リツイート弱。加えてもともと配信された先(livedoorニュースやAmebaニュースなど)に2ちゃんのまとめサイトなどからのリツイート拡散を含めると、1万リツイートをも超えそうな勢いだ。

おかげさまで子どもの授業参観のときに同じクラスのママから(あれ読んだわよ!)と耳打ちされ、「藤原のかーちゃん」心底どっきりした。身の回りの事実がネタなだけに、アシのつくのがはやい。

まあ身の回りといえば実に卑近な話なのだけれど、先日ついに末娘(1歳児)を遊ばせていた公園の遊具までもが全撤去されてしまいショックを受けた。その公園にはそもそも対象年齢2歳児程度の安全な遊具(1番高いところでも1メートル以下)しかなかったのであるが、それすらも邪魔になったのか。

近所の人の話ではゲートボール場として再整備されるらしく、お年寄りに恨みはないけど「そりゃないよ」と言いたくなった。これからは昼間、どこで子を放牧すればいいのか。モヤる。

kouen
しかし、こういうモヤモヤは筆者の予想よりも多くの人の中で共有されていたのだろう。或いは現状を初めて知った大人の皆さんの驚きや憤りの声も聞こえ、感慨深かった。

当メディア『MAMApicks(ママピックス)』のテーマは「親になったから、見えるものがある。」というものだが、じっさい筆者も子どもが生まれて公園に行って初めてビックリしたクチであり、おそらく子育てしていなかったらわざわざ禁止事項が書かれた看板など眺めることも無かっただろうから。

-----

さて拙記事への様々な反響のなかに、際立って気になるものがあった。

それは「都会の公園は大変だね~」「子育てするなら田舎のほうがいいな~」といった(比較的良くある)コメントに相対する。「田舎にはもともと公園自体が無い。子どもが遊ぶスペースなんて無い」「田舎なら子どもをノビノビ育てられるなんて幻想」といったものだ。

曰く「田舎ほど子どもの家と家とが離れ過ぎているから、放課後おちあってどこかで遊ぶこと自体が不可能」「田舎ほど子どもだけで徒歩移動はあり得ない(自家用車での送迎が基本)」等の比較的都市部に住んでいると、思いもよらなかったような実情である。

思いもよらない? 否。本当は、知っていることは、知っていたことである。そも、筆者の子ども時代にも家の近所に「児童公園」などというものは無かったし、だいたい公園にできるほどの余計な空き地も無かったのだ。住まい一帯は「県立自然公園」の中に含まれている、風光明媚な山の中だったから。

inaka

その頃、放課後の子どもたちがどこで遊んでいたかといえば、山や川や道路や人んちの敷地やその裏を通じる道なき道であった。これは昭和50年代の話だが、数年に一人の頻度でそんな川では溺死者が出たし、車の通りは疎らなのにも関わらず、交通事故もままあった。崖下に落ちる子どももたまにいた。

筆者自身、小1の頃だったか、ビニール風呂敷を駆使した「ひみつ基地」を渓流上の崖地に設営し、ずり落ちそうになったところを友人が青くなって親を呼びに走り、半狂乱になった母親に回収された記憶が、今もおぼろげに残っている。

「あの頃は良かった」という話ではない。他に場所が無いからそういう遊びをしていただけのことだ。しかしある時期を境に、その一帯の子どもたちは良かれ悪しかれの「外遊び」一切ができなくなった。本当に身近なところに住んでいた、「一人で小学校から下校したり、一人遊びをしていた」女の子たちがつぎつぎと姿を消し、変わり果てた姿で発見されたからだ。

それは後に宮崎勤が主犯と判明する一連の事件だった。有名なリポーターの東海林のり子氏が、ある日自分の通学路に立ってリポートしているという光景は非現実過ぎ、また報道ヘリの騒音で授業が妨害されるという状況は地域全体をピリピリした異様な空気で満たした。

筆者はすでに中学生だったけれど、歳の離れた妹はそのとき幼稚園児で、妹のみならず子ども達は皆、幼稚園や小学校から帰宅したら庭先にすらも一人で出ることを禁止された。

-----

そもそも田舎の家は門扉などで閉鎖されていないし、施錠されていないことすら普通だ。そのうえ家々の裏の「道なき道」を通りさえすれば、何キロでも人目に触れずに移動することができてしまうために、一度子どもの姿が消えたらもう探しようがないのだった。

しかし同様の事情、事件は時代と場所を変えても勃発する。クルマ移動が当然の「田舎」であればこそ、サッと拐(かどわ)かされればひとたまりもない。別の土地の「田舎」で子育てしている友人がいる。数年前その土地の子どもが攫(さら)われ、殺される事件があった。

友人は言った。「田舎の子は、夏休みは外で毎日虫取りしたり自然の中で遊べていいなあとかってよく言われるけど、それ、ただのイメージだから」。

「農薬撒いてあるのが分かってる草むらに、虫取りに入らせるワケ無いでしょ? クラスの友だちの家まで片道3キロあるのに、炎天下歩かせて遊びに行くの? 40キロの道、80キロで飛ばす車の脇、歩道もないのに自転車なんかで行かせられるの? 夏休み、うちの子はずーっと家でエアコンかけてマンガ読んでるかゲームしてるだけ。図書館とかいったってクルマでも15分かかるからね、買い物のついでに置いてくるとかしか……。」

正直こうぶっちゃけられるまで「田舎で子育て=ノビノビ」という安易なイメージ、図式が筆者の中にもあったのだ(自分の経験を棚に上げて)。でも「言われてみればその通り」であり、ぐうの音も出なかった。

じゃあ一体どこでなら、子どもを「ノビノビ」遊ばせることができ、「安心して」育てることができるというのだろうか。だいたい、そんな問い自体が、もう不毛なのだろうか。


「それぞれの場所で今できる限り」のことを親たちは、尽力するしかないのだろうか。10年前の小学生はもう大人になってしまっている。そして今ここにいる子どもの育つ時間は一瞬たりとも止められはしない……。


藤原千秋藤原千秋
大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。おもに住宅、家事まわりを専門とするライター・アドバイザー。著・監修書に『「ゆる家事」のすすめ いつもの家事がどんどんラクになる!』(高橋書店)『二世帯住宅の考え方・作り方・暮らし方』(学研)等。9歳5歳1歳三女の母。