3月も終わりを迎え、週刊誌や受験情報サイトでは、大学合格者数の速報が数多く特集され始めている。東大合格者数では今年も開成が昨年実績を30名近く上乗せする形で、30年連続トップの座をさらに更新した。

そして当サイトでも既報のとおり、トヨタやJR東海などの東海エリアの有力企業が設立した全寮制エリート校「海陽学園」が、第一期生から13名の東大合格者を出したことも話題を呼んだ。

さらに今年、もうひとつ注目されたのが、公立中高一貫校の躍進である。
昨年のことだが、都立白鴎高校が“白鴎ショック”として受験業界で大きな話題を呼んだ。東大現役合格者を5名輩出したことにある。え?たった5名でなぜ?

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元々、都立白鴎高校は1888年に開校した都内でも有数の伝統校。都立高を卒業された読者には、往時の第5学区のトップ校、といったほうが馴染みがあるかもしれない。じつは同校は2005年に、都内初めての公立中高一貫校として生まれ変わった。その中高6年間を過ごした第一期生が、昨年3月に大学受験を迎えた。

東大合格者5名という数字はたしかに絶対数では大きなインパクトはない、しかし白鴎高校のそれ以前の東大合格者は2005年が最後、複数名合格に至っては10年以上なかったという。つまり中高一貫校に生まれ変わったことによって、東大現役合格者5人を輩出する「大躍進」を成し得たということになる。ちなみに近年の有力な新興私立進学校ですら、初年度から5名もの東大合格者を出した実績はない。


そして迎えた今年の受験シーズン、都立中高一貫校からは白鴎のほか、新たに小石川(旧第4学区のトップ校)、両国(旧第6学区のトップ校)、そして桜修館(旧都立大附属高校)から中高一貫第一期生が大学受験を迎え、その東大合格者数に注目が集まった。

結果は、小石川:4名、両国:3名、桜修館:4名、白鴎:3名(※後期日程発表前)。

昨年度の白鴎の例を出すとこちらも目覚ましい実績のような印象だが、小石川、両国の場合、早慶も含めて過去の実績を調べてみると、あいにく躍進とは言い難く、むしろ例年並みだ。以下が両校の近年の合格実績である。2011年以前は高校入学者のみ。
(※2012年は未確定、2009-2011年は学校発表の数値)

▼両国高校
--------東大--早稲田--慶應
2012年 ---3------40-----8
2011年 ---1------32----18
2010年 ---1------33----19
2009年 ---3------18----13

▼小石川高校
--------東大--早稲田--慶應
2012年 ---4------39----11
2011年 ---2------36-----6
2010年 ---2------46----14
2009年 ---0------58----14


さて、そもそも公立中高一貫校とはどのような学校だろうか? まず、入学にあたっては入学試験に合格する必要がある。入試問題は、小学校で習う知識で十分に解答が可能な適性検査と、作文が出題される。

ただし高い読解力・思考力・表現力が求められるので、現実的に学校の勉強だけでの対応は難しいといわれるが、難関私立校のような知識・テクニックを求める受験勉強とは若干質が異なる。進学塾や通信教育では「公立中高一貫受検対策コース」を設けているほどだ。

私立と大きく異なるのはやはり授業料だろう。中学は義務教育なので無料。高校も、2010年度より高校授業料無償化がスタートしたため無料である(教材費等の諸費用は有償)。


何より教育内容に特色を打ち出している。たとえば小石川は文科省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定を受けて、理科好き・数学好きを育てる自然科学教育に力を入れるほか、中学3年時における全員参加でのオーストラリア語学研修をはじめとした国際理解教育にも力を入れている。

芥川龍之介の母校の流れをくむ両国は、さすがかねてより国語教育には定評があり、正課の国語のほかにも「考える国語」のコマでは、スピーチやディベートなどを通して、論理的に考え、豊かに表現する力を養う。

そして桜修館では、後期課程(高等学校段階)からは第二外国語(フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ハングル)を受講することができるそうだ。


このように、公立中高一貫校は進学実績という側面によらずとも、教育内容において私立校を脅かす魅力を持つことがわかる。一部報道では、リーマンショック以降さらに拍車がかかって「私立中学受験バブルはすでに終わった」という論調が見られる。

たしかに展望なき私立中学は今後、近年の経営破たんした私立大学のような末路に陥ることが予想される。一方で、公立中高一貫校への期待や人気はますます高まることだろう。


深田洋介深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。