英女王即位60周年記念式典の興奮と酔いも冷めやらぬ中、先週一週間は英国の新聞もゴシップ誌もまだまだみんな大忙し。というのも、英国の上流社交界を代表する大富豪家出身の若きセレブカップルが、3人の子どものみならず警察やら黒人ラッパーやらツイッターフォロワーやらを巻き込んで、派手な離婚劇を繰り広げたからである。

かたやユダヤ系大富豪、故ジミー・ゴールドスミス卿の息子、ベン・ゴールドスミス(31)。英上流社交界の華、貴族の血筋をひくアナベルとの間の末息子で、親二人も社交界の名士でありながらスキャンダラスな人生を送った。

本人は(上流階級の常で)イートン校を卒業して何不自由なく育ち、父の莫大な遺産を相続した後は資本家、社会・環境活動家として「有意義に遺産を運用する人生」を送っている。



対するは、かの一大銀行家、ロスチャイルド家とギネスビール創始者一族の間に生まれた長女、ケイト・ロスチャイルド(29)。父親が1996年にパリのホテルで首つり自殺をしたことで、同じく遺産を相続し、現在は3人の子どもを育てる傍ら音楽プロデューサーとして活動し始めていた。

若い夫婦ではあるが、もともとケイトが17歳の時に出会って以来の仲。大富豪家の「相続人」であるグラマラスなセレブ同士の結婚は英国の社交界を駆け巡る大ニュースであったが、この2年ほど夫婦の仲はうまく行っておらず、今年始めには一旦別居。

そして英国が英女王のジュビリーに湧きかけた5月30日の水曜日、ノッティングヒルの豪邸に警察が出動、ケイトへの暴行容疑でベンが逮捕されるという事態になった。

ベンの暴行の原因は、どうやらケイトが自らプロデュースする黒人ラッパー、ジェイ・エレクトロニカと不倫関係にあったこと。実はベンの側にもいろいろな醜聞はあったのだけれど、妻の不貞を疑い、ケイトの携帯メールの履歴を見たベンが、とうとう怒りのあまりケイトを「引っぱたき」(ベン自身の申し立てによる)、子どものおもちゃをケイトに向けて蹴りつけたのだとか。その後ベンは自ら警察を呼んだという。

しかし若い二人のゴシップはこれに終わらなかった。別居したその後もお互いのツイッターアカウントで相手を責め自己弁護をし、あてこすり、反駁し、派手なやり取りを繰り広げる。

その様子を数百万のツイッターユーザが固唾を呑んで追っていたのだが、劇場型の離婚劇が双方にとっても家族にとっても不利益と判断したのか、ようやく「これ以上は子どものためを考え、公式の場での発言はしない」という連名の声明を発表した。

“We are both deeply saddened that our marriage has ended after nine years. It is a matter of regret to us that, at a time when our emotions and those of our friends have run high, things have been said in public which should have been kept private. We accept our full share of responsibility for this. Contrary to what has been publicly stated, neither of us anticipates any major issues of contention to arise in the divorce, in which the interests of our children will come first. There will be no further comment, either directly or indirectly, from us on any aspect of our family’s private life.”
(スポークスマンによって発表された夫婦の共同声明:原文)


この声明文にある“Children come first”(子どものことを第一に)というフレーズ、学校でもよく聞かれる決まり文句なのだが、恵まれた家庭に生まれ育った若き夫婦がこの言葉に至るまで、社会を巻き込む派手な一週間を必要としたのが興味深い。

ゴールドスミス家にロスチャイルド家、ギネス家という英米を代表する富豪の3大ビッグネームを載せた久々の大型ゴシップはタブロイド紙やゴシップ雑誌のみならず保守高級紙の紙面まで賑わせ、「ツイッター離婚」なる名称まで生まれた。

高級紙のコメント欄では「この新聞でこんな話題を載せるなんてがっかりだ」「金持ちの甘やかされた子ども同士の離婚。現実の世界へようこそ」「ただもう愚かだ」と読者に切り捨てられる始末だが、どうしてなかなかの人気記事となっている。

夫婦はお互いのツイッターの履歴を削除し、ベンは3人の子どもと自分の母を連れてバカンスに出かけ、浮き世の喧噪から避難。“Children come first”、ツイッターのTLがあっという間に流れて行くように、この昼ドラめいた離婚劇も世の中からはあっという間に忘れられるのだろうけど、3人の子どもたちにとってはそんな一時的なものでも軽いものでもまったくないのだから。

【参照記事】
Goldsmith and Rothschild dynasties head for divorce
Rothschild heiress's marriage to Goldsmith scion is over... after she falls for a rapper called Jay Electronica
Discretion? How bourgeois: A society scandal with a 21st-century twist


河崎環河崎環
コラムニスト。子育て系人気サイト運営・執筆後、教育・家族問題、父親の育児参加、世界の子育て文化から商品デザイン・書籍評論まで多彩な執筆を続けており、エッセイや子育て相談にも定評がある。現在は夫、15歳娘、6歳息子と共に欧州2カ国目、英国ロンドン在住。