先日、男児の「ちんちん」を「ムキムキ」するか否かというコラムを当サイトで書かせてもらった。それを読んだ元男児・現オッサンたちの反応の多くが「頼むから、ほっといてやってくれ」というものだった。

全国のムキムキトラウマの奥さま方、どうかご安心を。そもそも包茎と陥没乳首に関しては世間の風当たりが強すぎるんですよ! その話はまた別の機会に……。

しかし、「ほっといてくれ」と言われても「♪ほっとけないよ~」と、体が楠瀬誠志郎してしまうのが、母親という性。「ムキムキ」から「シコシコ」へ、性に目覚めてからの子どもは驚くべき早さで、母親の望む「無垢なる男子」から遠ざかってしまう。息子がAKBの水着姿に若干異なる反応を見せ始めた時点で、私たちは覚悟を決めなければならないのだ。

「コイツら、赤子じゃねぇ」と。

考えてみれば、「寝返り打った!」「あんよした!」と子どもの成長をあんなに喜べていた自分が、どうして「ちんちんが勃った!」ことを歓待できないのだろう。朝、「ママ触って~ちんちんが硬くなってるよ~」という子どもの無邪気な発見に、口をつぐんでしまうのだろう。

子どもの“性長”という気まずさに、親たちはどのように対処すべきなのか。悩める男児持ちママたちにぜひともお届けしたいのがこの『うちの子モッコリ』(発行:パーゴルフ 発売:学研マーケティング 1,050円[税込])。


中学男子を持つ母親であり、長らく成人男性向け漫画を描いてきたあかぎりゅう氏が、自身の経験やママ友たちとのやり取りから学んだ性少年への対処法を一冊にまとめたコミックエッセイである。

“うっふんあっはん”な創作活動を生業としているあかぎ氏だが、中身はごくごく普通の中学男子ママの日常。いや、むしろエロが日常にあるからこそ、自分の子どもにどこまでオープンにするべきか悩むのだと思う。

「赤ちゃんはどうやって出来るの?」と聞かれたら。掃除機がベッドの下から『デラべっぴん』(※2004年休刊……)的なものを吸い出してしまったら・洗濯機に夢精パンツが放り込まれていたら。恐ろしい執念でPCのフィルタリングを解除してしまったら。そして……彼女が出来たことを知ったら。

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男児ママがこれからぶち当たるだろう「エロの壁」に対して、「○○すべき」ではなく「うちは○○だったけど、△△っていうママもいたよ」と井戸端会議感覚で語りかける。専門家へのインタビューも織り交ぜつつ、慌てる母たちに「とりあえず落ち着け」とお茶を出すように。

多くの母たちが子どものエロに「落ち着けない」原因、それはあかぎ氏が本書の中で語っている。「私の親世代は『性教育なんてもってのほか!』の人たちなので、性に関する話題はタブーだった」。

生理について授業があったことを母親に伝えると、「でも、あんたには関係ないからいいのよ」とそっぽを向かれる。彼氏が出来たことを報告すると「お母さんだらしないことはキライだからねっ」と頭ごなしに叱られてしまう。

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こうして性や異性のことを「イケナイコト」として封印してしまった女性は多いのではないだろうか。少年の性問題はギャグになっても、少女のそれはギャグにはならない。同世代の少年たちと同じように、興味も関心も悩みもあるというのに。

「そういうのがイヤだったから、息子にはおおらかに接してきた」というあかぎ氏。疑問にはきちんと答えるのと同時に、倫理観やルールに関しては毅然とした態度で接する。

「性犯罪のニュースが流れたときは徹底的にコキおろす。こういうことをするヤツはサイテー人間だよ」ということを教えるために。一方で「お笑い番組でエロネタなどをやっているときは、家族みんなで大爆笑してますけどね~」。

「ルールを守れば、エロは楽しい」― タブーを抱えたまま大人になってしまった母たちが乗り越えるべき第一段階はそこにあるのだろう。

しかしながら現実には性のルールを破ってしまう種類の人間がいる。そして、いわゆる性犯罪に手を染めるのは、(もちろん女性でもいるが)おしなべて男性だ。この事実が男児持ちママたちを呪うのである。

後ろからやってきた男子学生にいきなり腕をつかまれたり、小6くらいの少年が何やらコーフンしながら近づいてきたりという、変態遭遇あるあるトークの中で、あかぎ氏がつぶやいたこの一言が心に刺さる。

「息子を持つ身になって考えるとさ、あの男子学生もあの男の子も、家に帰ればきっといい子で、お母さんは大切に育てていたんだろうなと思うよ」。

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あの日あの時、自分を恐怖の淵に追い込んだ露出野郎や痴漢クズと、隣でスヤスヤ眠るこの息子は確かに同じ「性」。一体どこが分かれ道となっているのか、そればかりは答えがあるものではなく、日々の生活の中から積み上げていくしかない。まぁ「性」に限ったことではないけどね。

完全あけっぴろげがイイとも、超閉鎖的がイイとも思わない。両親や子どものキャラもあるし。私だって少女時代、『エ○ティーン』の投稿コーナー読んで興奮したし、こっそりAV鑑賞もした。

だからといって、今現在人の道に外れるようなことは(たぶん)していない(と思う)。「見て見て!コネマチ!」とはしゃぐ息子を眺めながら、漠然と「モッコリから始まる親子の絆」を思った。ただ、息子よ。それコネマチじゃない、コマネチだ。

・うちの子モッコリ
西澤 千央(にしざわ ちひろ)西澤 千央(にしざわ ちひろ)
フリーランスライター。一児(男児)の母であるが、実家が近いのをいいことに母親仕事は手抜き気味。「散歩の達人」(交通新聞社) 「QuickJapan」(太田出版)「サイゾーウーマン」などで執筆中。