「今どきの子どもは財布を三つ持っている。両親がひとつと、双方の祖父母がひとつずつ。」
……そんな表現を耳にしたのは、私がまだ結婚もしていない頃のこと。最近の子どもは甘やかされちゃってやだなぁ、なんて他人事のように思っていた。

さて、子どもを持った今、現実はどうか。

確かに持っている。私たち両親の財布の紐は比較的かたいので、実質0.5くらいにカウントするにしても、2組の祖父母、ここに2個。5才の男児とくれば、テレビのヒーローに憧れおもちゃに明確な関心と欲求を持つ年頃。

「お父さんの方のおばあちゃん 」とかそういう人間関係はさっぱりわからないのに、「ウルトラマンレオの人形をくれたおばあちゃん」なのか「ウルトラエッグをくれたおばあちゃん」なのかは、絶対に間違えない。


……友人がぼやいていた。祖父母とデパートに行ったら、目を離した隙に仮面ライダーのベルトをおじいちゃんが買ってあげてしまった。クリスマスプレゼントの予定だったのにがっくりしたらしい。

別の友人も、用があって祖父母の家に預かってもらったら、仮面ライダーのベルトとともに帰ってきた、と困惑していた。

これに類した経験が私もある。あぁ、その「ゴーバスターズ」の変身アイテムは、お誕生日にもらう約束をしたはずだよね……。

ガチャガチャや、コンビニの食玩などにまで口出しするつもりはないけれど、仮面ライダーのベルト級になるとレベルが違う! そんな大物を、何の記念日でもない時に、欲しいからという理由だけで買ってもらえてしまう状況というのを、果たして容認していいものか……。

-----

誕生日やクリスマスだって、両親(12月はサンタ)+両方の祖父母=合計3個の記念日級おもちゃをもらえてしまうのだ。それに加えて叔父叔母など親戚からもらうことだってある。それだけでもかなり飽和状態に思えるのに、記念日でもない時に大物を買ってもらえてしまうのでは、なんだかもう際限がない。

親としては、息子がいつでも好きなおもちゃを買ってもらえる状態というのは好ましいと思えず、欲しいおもちゃは、誕生日やクリスマスまで楽しみに待つ、という経験をして欲しいと思ってしまう。

それに物理的に、親はそうしょっちゅう子どもの娯楽にお金を使ってはいられないのも現実。スーパーで節約する100円も、そのガチャガチャに吸い込まれる100円玉も、出どころは同じと思うと自然にブレーキがかかる。

-----

一方、祖父母世代にしてみれば、孫は可愛いし、喜ぶ姿を思うと買ってあげたくなる。しかも、孫の数が少ないから、目もお金も集中する。

私が子どもの頃は、ひと祖父母当たりの孫の人数が大勢すぎて、孫に誕生日やクリスマス毎にプレゼントする習慣なんてなかった。時代の感覚もあるかもしれないが、単純にコストを考えても、10人の孫に1人あたり年間1万円使ったら、それだけで10万円。一方、孫が1人しかいなければ年間1万円で済む。

この差は大きい。孫が数人しかいなくて余裕があれば、手をかけるな、という方が無理なのかもしれない。大きな温度差だ。

それがおじいちゃんおばあちゃんの楽しみなんだからありがたくもらえばいいんだよ、と言う人も多いだろう。もらえるだけいいじゃない、うちなんか何もくれないよ、と言われることもあるから、贅沢な悩みというのもわかる。

でも、なんだろうこの違和感は。
あぁそうだ、毎朝折込チラシをチェックしながら卵はこっちのスーパーが安いとか、牛乳は明日の方が安いとか、真剣に比較検討している親の金銭感覚を、かなり超越した異空間に息子が独りいるのである。

「魔法のランプがあなたの欲しいものを何でも出してあげま~す!」

憧れのおもちゃを手に満面の笑みの息子と、同じく幸福な笑みに包まれている祖父母を眺めながら、両者のこの幸せを奪ってでも息子をもう少し世の現実に向き合わせるためのルールを作るべきなのかどうか、逡巡する母がここに。


よちよち歩きの頃、明らかにブランドものの洒落た仕立ての良い服に身を包まれた息子の両脇に、そういえば最近ユニクロ以外で服を買ってないなぁ、という状況の夫と私。……子どもだけ、明らかにファッションのグレードが高い。

どこからどうみてもアンバランス。

決して「私たちのことはいいの、あなただけはちゃんとしたものを着なきゃ!」とかそういうことではない。子どもの服はプレゼントです、プレゼント。そう、「財布を三つ持っている」のは親の私ではない、子どもの方なのだ。

親子間における財布の数の不均衡を象徴する事象、あなたのそばにもきっとあるはず。


狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。