アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は先週、児童保護基金(Children’s Defense Fund)総会のビデオ演説で、幼児期の教育はきわめて重要で、幼稚園や保育園で良質な教育を受けることで、貧困が減少し、将来の所得増加や持ち家率が高まるとし、幼児教育への投資の必要性を訴えた。

全米から3,000人以上の教育関係者が集まり、経済、政策的な側面から子どもの貧困撲滅や権利向上などについて話し合ったこの会議の基調講演。自身も元大学教授で、教員の妻を持つバーナンキ議長は、幼児教育の重要性を強調し、それがなければ成長後の高校中退や低賃金、公的支援への依存、犯罪の可能性が高まると指摘した。

逆に、家庭の経済状況がどうであれ、3歳から5歳にかけて良質な教育を受けた子どもは、そうでない子どもに比べて、40歳になった時にマイホームを所有している率が高いという研究結果も引用した。

さらに、FRB議長らしく、「幼児教育は良い投資案件で、インフレ調整後の年間リターンが10%以上を見込める。これほどのリターンを約束できる投資案件は他にはほとんどないだろう」と幼児教育への投資効率を強調。幼児教育への投資は、子ども自身や家庭はもちろん、社会全体の利益になると説明した。

幼児教育への予算投入を国全体の利益につながる効率的な投資とする考え方は、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者ジェームス・ヘックマンも唱えた説で、「同じ1ドルを幼児期に投資した場合と大人になってから投資した場合とでは、前者のほうがリターンが高い」という論文も発表されている。


初等中等教育でも課題が山積で、それ以前の年齢では、待機児童や保育士不足など、「保育」の部分ばかりがクロースアップされがちな日本。国全体の利益につながる効率的な投資として、改めて「幼児教育」を考え直すことが必要なのではないだろうか。


恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!