「海外に転勤になったの」と報告すると、「うわー!いいね!」という返答がくる。なぜだ!? 筆者は俗に言う駐在妻で、日本に帰るたび、「海外生活うらやましいな」と言われる。これは決まった挨拶なのか?と思うほどだ。

近年、アジア圏に転勤、または長期滞在する人が増えたという。なかでも中国の上海市には旅行者も含め、日本人が常時10万人もいるのだとか。


上海は今、日本人駐在員が最も多い都市。日本食材を扱うスーパーもたくさんあり、日本料理の店といえば寿司やラーメンなど数えきれないほどで、街を歩けばたくさんの日本語が目に入ってくる……そんな上海に転勤するとしたら、さぞかし住みやすいだろうと思われる。だから羨ましがられるのかもしれない。

しかし実際は言葉や習慣の違いに戸惑い、相談できる友だちもできず、夫を残して妻が帰国するケースも多いのだとか。隣国とはいえ、英語は通じず、たまにはアンチ日本ムードにも接するゆえ、ハードルは高い。

孤独を感じる前に、自分で何かに参加する!


仕事で出ていく夫に対し、残された妻は、友だちも親せきもいないなかで家に閉じこもり、孤独を味わってしまう。海外駐在はうつ病になるリスクが数倍あがるというので、孤独になってしまうことには最大の注意を払わなくてはいけない。

「さて、どこに出かけよう?」

上海の場合、未就園の小さな子どもがいたら、リトミック教室など、親子で集って楽しめる日本人向けのお教室があるのでママ友を作ることは容易である。しかし、子どもが大きかったり、いなかったりすると、とかく孤独になってしまう。

そんな時に頼りになるのが日本語フリーペーパーだ。日本料理屋や日本人が行きそうな店などにおいて手に入れることができる。そのなかで好みのサークルや習い事を探すのが、まずファーストステップ。

ここでは皆、友だちがいないところから始まるのだから、やさしく迎え入れてもらえるに違いない。何も興味がわかない場合はとりあえず中国語など現地語のグループレッスンに参加してみよう。上海では大学が開いている社会人クラスに、外国人奥さまクラスがあるくらい。とにかく孤独を感じる前に、自分で何かに参加するのが秘訣!

日本人との接触を避けない


奥さま同士の付き合いが大変そうだからと、最初から日本人との接触を避ける人がいるがそれはかなり駐在歴の長い人がやることであって、最初から避けてはいけない。

まず生活の基盤を整える情報から、新しいお店の情報まで、一番早くて正確なのが「奥さま情報」なのだから、奥さま同士の情報交換はまさに“生きるすべて”といっても過言ではない。

習い事のあとにランチをし、一緒にスーパーに寄ってお買い物をする。「何それ?おいしいの?」「○○ってどこに売っているの?」そんな会話から、自分の生活が数倍豊かになる。

たまに、会社の待遇の差や、住居の格差、お宅で拝見する高価な調度品などに打ちのめされ、「私はみんなと違うんだわ。」などと落ち込みそうになったとしても、海外で生活をしていくためには必要だと割り切って、情報交換を楽まなければならないのだ。

海外生活では頼れるのは友だちしかいないのだから。お互い助け合えるような関係づくりをなんとかして構築しなければならない。

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そんな生きるためのお茶の時間や、孤独を回避するための習い事をしている海外駐在生活を、日本からみると「毎日お茶していていいわね。素敵な生活だわ」と言われるのだ。

本当は日々人づきあいに疲れて、毎日どこかが故障して修理員が頻繁に出入りする水漏れする家に住んでいても、私たち駐在妻はそんな悲愴感を自覚したくないので、日本で生活する人にこう返すのだ。

「そうね。海外駐在も悪くないわよ」


川口 由美子川口 由美子
ライター、管理栄養士。著書「アレルギーっ子の簡単毎日レシピ100(青春出版社)」の他、雑誌やWEBで離乳食や幼児食などの家庭的レシピを紹介。All About「離乳食」等ガイド。夫の転勤に伴いアジアを転々としながら現地人に根付くアーユルベーダや漢方などを学ぶ。個人事務所「Food-Medi」を運営。8歳娘と2歳息子の母。