― 国民的美少女コンテスト。後藤久美子が「国民的美少女」をキャッチコピーとして売り出し、いわゆる“美少女ブーム”を起こしたのをきっかけに、それに続く美少女を発掘せんと1987年から開催されている由緒正しきオーディション。

現在までに米倉涼子や上戸彩、武井咲、忽那汐里などを輩出。他にも、華原朋美(予選敗退)、宗廣華奈子(鈴木紗理奈・第六回演技部門賞)、持田香織(予選敗退)、山崎静代(南海キャンディーズ・予選敗退)などの顔ぶれも。今年は10万通以上の応募の中から2名のグランプリが選ばれた。 ―


先日、日曜の昼間をアンニュイに過ごしていたら、やっていたのです、「国民的美少女コンテスト」の密着番組。見るでも見ないでもなくチャンネルをガチャガチャしていたわけですが、なんというか、途中から番組に釘付けになってしまいました。
その理由は、番組に挟み込まれていた武井咲と上戸彩と米倉涼子による笑顔カラッカラのオスカープロ先輩後輩鼎談……ではありません。

たしかに上戸彩は懸命に、「米倉さんとはすっごい仲良しなんですよ。誕生日会とか呼んでもらったり、あと誕生日会とか……」と苦しそうなトークをしてたし、武井咲の笑顔は終始引きつっていたし、米倉センパイはスピードラーニング経由ブロードウェイ仕込みのアルカイック・スマイルかましていたし、純真無垢な国民的美少女も、芸能界という荒波にもまれてたくましくなるものだと感慨深くはなりましたが。


私が心引きつけられたのは、美少女たちの奮闘ぶりより、鈍色に輝く親御さんたちのはしゃぎっぷり。娘がもし美人だったら……親はこんなにもトチ狂ってしまうものなのか、と。そこには、娘のためと言いながら、ついつい己のエゴを爆発させてしまう、女たちの悲しき性があったのです。

美少女たちの平均年齢は約13歳。察しますと母たちの年令は40前後といったところでしょうか。美の世界においてはトンビが鷹を産む例はまれですから、どの母も「私だって昔はブイブイ言わせてた」臭がハンパない。

「娘には女優と東大を両方目指させてます!」と豪語していた落合信子風のママは、水色のケリーバッグを抱えて娘の塾の送り迎え。候補者たちの日常に密着するVTRなのに、塾から出てきた娘に笑顔で抱きつくという過剰演出……なんの再会っ!

信子風ママ曰く「夕飯は軽く、その代わり朝食はしっかり」が美の秘訣とのことで、朝のキッチンに出てきたのは国産牛ステーキ。しかも信子、焼く前の肉をおもむろに切り始めたではありませんか!心の金子信雄が「ちづる!肉汁が逃げちゃうだろ!」と叫びましたよ。まあとにかく、朝からトンカツやら焼肉やらをお召し上がりになるんだそうです。

極めつけは風呂上り後のマッサージ。「お母さん、いつもありがとう」と娘から母へ……ではなく、ソファーに座らせた娘の脚を母が丹念に揉むわ揉むわ。そこまでしてるのに、「菊川怜さんみたいな女優になってほしい」って、憧れがビミョー過ぎる……最終的に小倉さんの隣ですよ……。


大体「子どものため」と親が言う時の80%は「親のため」。信子家は余裕がありそうですし、金持ちコントを観ている気分で楽しんでいました。しかし、中には笑えない(まあ誰も笑わせようとしてるわけじゃないですけど)母もいるんです。

演歌歌手を目指していたというとある母は、「結婚で破れた夢を今度は娘に託したい」とアツい目で語るんですよ。え、ええー?奥さんドサ回りに疲れて結婚に逃げただけなんじゃないの!?


筆者は、以前これまた日曜昼のドキュメンタリー番組で観た、アイドルを目指す親子を思い出しました。夫と離婚し、女手一つで育てる母。自分の身なりは一切構わず、ダンスやボイトレに生活費をブッこむ。

娘は平日はレッスン、週末はアイドル活動でクタクタ……地方のパッとしない大所帯アイドルの中でさらにパッとしない娘に、母は苛立ちを隠しきれない。そして禁断のあのセリフを娘にぶつけてしまう……「アンタのために、お母さんどんだけがんばってると思ってるの!」


子どもが「アイドルになりたい」「芸能人になりたい」と言い出したら厄介だなぁと思ってたけど、誰からも褒められる容姿を持つ子どもに、くすぶり続ける“女”としての自意識を爆発させてしまう母親の方がずっと厄介なんだと気づかされました。

キレイと言われたい、チヤホヤされたいという執念恐ろし。そう考えると、他人を身代わりにすることなく「私が一番!」と自己完結させる美魔女のなんて健全なことよ……


西澤 千央(にしざわ ちひろ)西澤 千央(にしざわ ちひろ)
フリーランスライター。一児(男児)の母であるが、実家が近いのをいいことに母親仕事は手抜き気味。「散歩の達人」(交通新聞社) 「QuickJapan」(太田出版)「サイゾーウーマン」などで執筆中。