その日、私は電車で取材先に向かっていた。
手元の資料を読み始めた時、隣から聞こえた台詞に震えた。

「嫁のブログを毎日こっそり見てるねんけどな」

今、震え上がった嫁はどのぐらいいるだろう。
おそるおそる隣を見ると、60代後半と思われる女性2人が、百貨店の紙袋を抱いて座っている。
「今日も外食したとか、向こうの実家と出かけたとか、ちゃらちゃらしてばっかり。息子にご飯も作らんと……。ちょっと言うてやりたいけど我慢してるねん」
「ウチもやってるわ。孫の写真が見られるのは嬉しいねんけど、新しい服買うたとか好きな芸能人の話とか、あんまり女っぽいこと書かれるとイヤなもんやね」

もう資料の内容なんか頭に入らない。
そうか、そうなんだ。
彼女たちも「使いこなす」時代が来てるんだ。

侮れない!姑世代のデジタル活用率


知人は「義母にブログの愚痴を読まれて険悪になった」と話していた。某相談サイトには「ウチの嫁って非常識だと思いませんか?」と質問して、嫁世代に撃沈させられる姑がちらほら。

あなたの「お義母さん、パソコン弱いから大丈夫」というのは、思い込みかもしれない。確実に、「姑世代のIT化」は進んでいる。そして、これからも進み続ける。

やがて、彼女たちは現れるに違いない。
嫁のフェイスブックの「友達リクエスト」の案内に。
LINEの「知り合いかも?」のコーナーに。

「あら、お義母様ったら」と微笑んで「承認」をクリックできる嫁は、どのぐらいいるのか。人によっては、実母に見つかる方がめんどくさいケースもあるだろう。

ああ、困ったこまった。
この世には「つながらない」方が、「知らない」方が幸せな関係もある。

義父母との同居に疲弊して家を出た時、思った。

うまくいってた(たまに会うなら)。
大好きだった(たまに会うなら)。

「お義母さんにいただいた服でお出かけしました。娘も大喜びです!」と写メールを送ってきていた嫁が、ツイッターでつぶやいている。

「義母と服のセンスが合わないのが悩みの種~」
「困るよねー。ウチは写メ送ったあとは砂遊び用にしてるよー」
「それ採用w」

見つけた憂鬱、見つかる不幸。

「デジタル姑」を持った嫁は、つまらないことしか書けなくなる。

「義理実家から帰宅~。2泊3日の嫁業務はホンマ疲れる……」と書きかけて、モニターの前にいる姑の姿が浮かぶ。すすすっと削除。

「ただいま!ダンナ様の実家での~んびり過ごしてきました♪」

子どもの写真を添えて投稿した後、疲労と虚しさが襲ってくる。
帰宅したのに、まだ義理実家のリビングにいる気がする。

コメント欄にも気をつけろ!


言いたい放題だった友人の文章が、急に無難でポジティブになった時。

「お疲れ~!嫁業務しんどいよねー。また愚痴聞くから飲みに行こ!」なんてコメントを入れてはいけない。

彼女の楽しかったブログまたはSNSライフは、終焉を迎えたのだ。
そこは察して絡んであげよう。

「お義母さんに会うの楽しみにしてたもんね~。そうそう、この間教えてくれたレシピ、おいしかったよ!手早く毎日おいしいものを作るSちゃんママ、頼りにしてます!」

……ああ、人生の時間の無駄づかい。
「つながりの時代」に迷惑している人は、きっと多い。


山口照美山口照美
広報代行会社(資)企画屋プレス代表。ライター。塾講師のキャリアを活かしたビジネスセミナーや教育講演も行う。妻が家計の9割を担い、夫が家事育児をメインで担う逆転夫婦。いずれ「よくある夫婦の形」になることを願っている。著書に『企画のネタ帳』『コピー力養成講座』など。長女4歳・長男0歳(2012年現在)