「ガーリー」という言葉が流行っているらしいです。
言うまでもありませんが、寿司業界のアレではなく、“女の子らしい”“少女っぽい”という意味です。

もちろんモノホンのガールたちはそんな言葉は使いません。
悲しいかな、ガーリーガーリー言いたがーりーなのは、たいてい少女の頃をとっくに過ぎた大人なんです。そして最近とみにガーリーを多用しているのがママ社会。
「ママだけどガールだもん♪おしゃれも子育ても楽しんでいこうよ」というキャッチの『mamagirl』(エムオン・エンタテイメント刊)なんていう雑誌まで創刊されるほどです。

“ガールが「だもん」”という発想がそもそも昭和……ということはまぁ置いておいて、「ママでもガーリー」というのは、大助・花子の花子師匠がピンクハウスを愛用するのと同じ類の欲望だということは理解できます。若さへの執着が3回転半して、結果見事にババアへと着地するというね。

……で、今回皆様に紹介したいのは、そんなもの悲しさがプンプン漂うTVプログラム、『キラ☆キラ Girly mama』(テレビ朝日 毎週金曜深夜2:50~3:20)。この☆は「つのだ☆ひろ」センセイから拝借したと思われます。

「普段忙しいママのために週に一度の楽しみ方を提案」というテーマで、毎週何だか楽しそうな、それでいて製作費安く済みそうな企画を取り上げていくこの番組。

出演者にも楽しそうで安そうなママタレが顔を揃えています。ゼニビッチでおなじみの紗栄子、いつの間にか帰国していた東原亜希、そして……誰?の住谷杏奈です。

表参道のカフェにふらりと現れるという『グータンヌーボ』丸かぶりの体で番組はスタート。「久しぶり~」「昨日から憂鬱だったの~」「今日はテレビモードでね」という紗栄子&東原のカッピカピな会話が吹き抜けの天井にこだましています。

そこで突如会話に割り込んできた知らない人、いや住谷杏奈さんが「いつもお迎え前の時間だけ会ってたじゃない?」と初ボイスをかますわけですが、そのカッスカスな声が完全にうちの近所のスナックのママ。(ママ?いやママだけどそっちのママじゃなくて……)と混乱しているところに「そろそろ企画を……」というスタッフの声が入ります。これまた『ロケみつ』インスパイヤーのよう。

しかしながら、このような構成上の安っぽさをあげつらうのが『キラ☆キラ Girly mama』の真の楽しみ方ではありません。ここはひとつ4人目の「ガーリーママ」として、「ママから女の子に戻る時間=シンデレラタイム(※番組解説より)」を堪能しましょう。

せっかくなので、「学生時代からそのファッションセンスで注目されていた女性ブロガー。現在はイベント企画やコスメグッズのプロデュースなどで活躍。広告代理店勤務の夫と結婚、1児のガーリーなママ」という設定で。郷に入れば郷に従え、人には添うてみよガーリーには乗ってみよ、です。


さてさて、初回の放送は“おしゃれスポットでお買い物”というガーリー魂むせび泣くテッパン企画です。「この時間って人少なくて良くない?」と言いながら表参道を歩く、紗栄子、東原、住谷、、、そして“ガーリー西澤”。

「ママになるとお店もっと早く開けて欲しくない?」と東原が言えば、紗栄子が「うちとかさぁ、お迎え2時だけどショップのオープンが11時とか12時とかだから本当に何も出来ない!」とこぼします。午前中で声が出ないのか、相槌しか打たない住谷に変わり、「分かる~パチンコ屋のモーニングと同じ感じでやって欲しい~」と答えましょう。「SATC」っぽいじゃないですか。

向かった先は、紗栄子さん行きつけというショップ。「こんにちは~」と微笑みながら常連ヅラして入店です。今日のテーマは「秋のトレンドを生かした最新ママファッションをショッピング&コーディネート」。

紗栄子、住谷がキャッキャしながら品定めをする中、自称好感度ママタレの東原さんが「子ども生まれてから買う物決めるのメッチャ早くなったの」と企画趣旨に沿った上品芸人発言をするので、「そうそう、私なんて授乳しながら買い物してるから店員さんも話しかけてこない~」など、さらに上行く「忙しガーリー」なネタをかぶせましょう。ガーリーママは食うか食われるか、です。

それぞれのママが選んだモノをテキトーに褒めながら次の目的地へ。途中見つけたたこ焼き屋さんで小休憩です。ここでは全員が庶民派ママアピールをかましてきますので、「たこ焼き食ってるくらいでデケー顔すんじゃねえ」という気持ちはグッと抑えつつ、口角上げて凌いで下さい。さすれば「杏奈さんってマヨネーズのイメージ。料理でもよく使ってない?」という東原さんの明るいディスりを楽しめます。

突然「悩んでるママさんって本当に多くない?」と、悩みはすべて金で片づけてきた紗栄子さんが一言。紗栄子さん曰く、「人の恋バナでドキドキしたい!疑似恋愛したいから~」だそう。

相変わらず住谷さんは「そう思ってるママさんも多いんじゃない?」とカッスカスの声で相槌しか打ちませんので、「夫が出会い系サイトで知り合った女子高生にユスられているらしい。そんな夫は多重債務者」とか、「オカシな新興宗教にイれ上げた義母が謎のお札や水やらを送ってくる」など、リアリティ抜群の悩みをぶつけてみたいものです。
いやいや、もちろん私じゃなくて、知り合いのママの話なんですけどぉ。


……どうでしょう。タイトルだけ聞いたら不安でいっぱいだった『キラ☆キラ Girly mama』も、疑似体験すればほらこんなに身近な存在に。ぜひ読者の皆さんも、ぺヤング探しと同じノリで、内なるガーリーママ探しをしてみてください。

今回、ガーリーママに擬態化して気が付いた「紗栄子なんてまだ甘い。本当にヤバイのは東原亜希」ということだけ、お伝えしておきます!

・『キラ☆キラ Girly mama
http://www.tv-asahi.co.jp/mamanobangumi/


西澤 千央(にしざわ ちひろ)西澤 千央(にしざわ ちひろ)
フリーランスライター。一児(男児)の母であるが、実家が近いのをいいことに母親仕事は手抜き気味。「散歩の達人」(交通新聞社) 「QuickJapan」(太田出版)「サイゾーウーマン」などで執筆中。