拙宅には今年10歳、6歳、2歳になる三人の娘がいる。自分で生み出しておきながら何だが、家の中に自分以外の女が三人も居るというのは、なかなかに恐ろしい話だ。何故なら私は学童期から大人になるに至るまで、「女がいっぱいいる」環境が恐ろしくてならなかったクチだからだ。女が三人寄れば文殊の知恵じゃなくてコックリさん。いじめ陰口思いのまま。怖ーい。

だから女子校に進学するなんてもってのほか、自分で選べる高校以降は、つねに男女比が4対1とか20対1とか、そういう学校とか学部とかサークルとかゼミとか会社とか部署とかを選んできた。おかげでイジメとは縁が切れ、特に「モテて大変」などの幸運トラブルの経験もなく、安らかに生きて来られた。諸々、良かったか悪かったか定かではないが……。

こんなにも女が怖い私。それなのに、私の親戚筋は明らかなる女系だったりする。先祖何代かは婿取りが続いたという父方の従姉妹たち、十数人が出産した子ども二十数人(私の子の再従姉妹にあたる)のうち、男児はたったの2人しかいない点からもそれは明らかである。自然の摂理からして割合的におかしい。で、案の定、私自身も女児ばかり出産という女系っぷりを体現してしまった。

しかしいつだって上には上がいる。近所の女系おばさんいわく、「自分は7人姉妹最後の娘である」とのこと。7人って、しみじみすごい。そこんちのパパは家に帰るといつも8人の女に囲まれてたわけだ。自家製ハーレムだね!


さてさて、7人に比べればささやかなものながら、家の中に自分以外の「若い女」が3人も居るというのは、文字通り「姦」しい(=かしましい)ものだ。そして若い女たちの目はいつも、自分以外の女に対して、キビシいものだ。

だから母のいで立ち、体型、美容上の諸問題についてなどなど、日々容赦ない指摘が繰り出される。やれ「今日の化粧は濃過ぎる」とか、「顔がぼやーんとしてて馬鹿っぽい」とか、「ちょっと太ったんじゃない?」とか、「そろそろ年齢考えた格好しなよ~」とか。もーやいやいうるせーやい!(キレる母)

娘たちいわく、「みっともない」お母さんは見たくない。正視するに忍びなく、大変に不愉快である。しかし、「エロい」様相のお母さんはもっとも、いかんとも許し難い。風呂上がりに全裸で徘徊するなど言語道断である。恥を知れ!とのこと。

正論である。

私もかつて身に覚えがあることであるが、思春期前後、みょうに潔癖というか、「大人って不潔ッ」感に満ち満ちてしまう時期が、少女という存在にはある。そこで何かをこじらせると後々厄介な各種嗜癖が生じたりしがちなのであるが(あえて今は仔細には論じないぞ)、特に身近なところにいる「自分自身の二親」に対してその潔癖感は発揮されやすい。

知識としては理解していても、自分の両親がセックスしているなどと想像するだけで「オエー」となってしまうのは、現在の私にすらも、まだ存在する感覚だったりする。いかに自分がそうして発生した個体だとアタマでは理解していてもだ。理解していても……きもい……。

だから子というものは、父母にはどこか兄妹のように清い間柄であれかしと願っている、フシがある。じっさい、お年頃に近づいている最近の長子の言動からも、今ひしひしとそんな願いを感じているところだったりする。


しかしだ。各種女性誌メディア報道その他は、もっか「母さんも女を降りるなキャンペーン(=消費しろ消費しろ消費しろ)」を張っている様子。その論調が、つねづね気にかかっている。

まあ其方には其方のご都合があろう。何かを売りたくて女を降りるな磨けとな。っていうのは分かんないじゃないけど、そりゃアレかい? そりゃつまり婚外恋愛の推奨で家庭崩壊しろって話かい? それとも永遠に繁殖の世界から降りるなって言うことかい? っていったいいつまで産み続ければいいんだい? 何歳まで? 50歳? 60歳?

しかも産む前の女には少子化対策少子化対策産まない?論外産め産む機械ってうるさいのに、産んだら産んだで「自己責任」で「母の愛」で「家庭に戻れ」とかナントカ、泣く子やベビーカーすら邪険にする世の中なのに?

オンナを最前に出したエロい母親なんて、子が育つに連れ愛されるどころか気持ち悪がられるのがオチなんだぞ。家庭の平和のためには、母さんは速やかに婆さんになるべきなんだむしろ。「女を次世代に譲る」のは老いた生きものの道理だろーが。アンチエイジングだか美魔女だか知らんが、生殖能力がある限りイケイケって無茶に煽らんでくれよ頼むから。つらいわ。


ステキな老い方のロールモデルが見えない。かく母さんと婆さんのはざまで迷走しかけているのは私だけではないのかも知れない。おととい、オレンジ南瓜のバケモノ溢れる街かどで、めっちゃゴシック・ロリータな女性の後ろ姿を見た。交差点で前に回って振り向いたらその顔が見えた。絶句した。

ああ、コスプレであって欲しい。おりしもハロウィンなのだし。

でも、きっと違う。あの「魔女っ娘」と同じ年頃の私には、その本気と書いてマジぶりが、痛いほどに、分かった……。

藤原千秋藤原千秋
大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。おもに住宅、家事まわりを専門とするライター・アドバイザー。著・監修書に『「ゆる家事」のすすめ いつもの家事がどんどんラクになる!』(高橋書店)『二世帯住宅の考え方・作り方・暮らし方』(学研)等。10歳6歳2歳三女の母。