フランスのオランド大統領が先月、教育改革の一環として、フランス国内の公立小学校で宿題を廃止する案を提言。学校の勉強は学校で完結すべきであり、外国人の親を持つなど、家庭内で勉強する環境が整っていない子どもに対する不公平を是正し、国内で広がる一方の教育格差を改善することが重要と訴えた。


賛否両論、世界的な論争を巻き起こした“フランス版ゆとり教育”とも呼べそうなこの政策案。オランド大統領が主張するように、1日の授業時間を短縮して、放課後の補習やスポーツ、文化などの課外活動の実施とセットであれば効果を発揮するかもしれないが、家庭での学習機会を奪うだけに終わってしまえば、教育格差の是正どころか、格差のさらなる拡大を助長する危険もはらむ。
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例えば、貧富の格差が著しいここ南アフリカ。
放課後や休暇中の過ごし方(=保護者がどれだけ習い事や課外活動にお金をかけるか)によって、小学校入学前からすでに大きな格差が生まれてしまっている。プレスクーラーと呼ばれる幼稚園生が、毎日のように水泳だ、ピアノだ、KUMON(公文式)だとお稽古ごとに励み、日本よりはるかに長い休暇期間には、テニスやサッカーの集中講座やポニーキャンプに参加。

小学校入学時には読み書き、足し算引き算をマスターしているのはもちろん、クロールで25メートル泳ぎ、楽器のひとつやふたつ弾け、その上テニスや乗馬をたしなむというのが、教育にそれなりの時間とお金をかけられる中流家庭の子どものスタンダードである。

片や、黒人居住区に住む子どもたちは、学ぶ意欲があったとしても、親の経済力や治安の問題で、学校以外での学びの機会は著しく制限されている。この上、学校が宿題を出すことを放棄し、放課後の時間の全てを家庭の経済力と親の教育熱にゆだねてしまえば、彼らの格差は拡大する一方だろう。

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例えば、アメリカの夏休み。
2ヵ月以上の長い休暇にも関わらず、小中学校で夏休みの宿題が出されることはほとんどない。そしてその間、経済的余裕のある家庭の子どもたちは、勉強、スポーツ、芸術などさまざまに趣向をこらしたサマーキャンプに参加。心身ともにひと回りもふた回りも成長して、新学期を迎える。一方、そうでない子どもたちは、長い休み期間を遊んで過ごし、極端な場合には、ドラッグなどに手を染め、学校に戻ってこないという事例もしばしば報告されるのだ。


日本でも、公立小学校が宿題を出すことをやめれば、塾通いが加速し、塾に行かない子どもとの学力格差は広がる一方だろう。国全体の学力低下を招いたとしばし批判される日本のゆとり教育だが、「最大の弊害は、優劣の格差の増大だ」と指摘する専門家もいる。

仏版ゆとり教育、日本のゆとり教育の二の舞にならなければいいが――。


恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!