米ワシントンポスト紙のウェブマガジンに、新年早々、“Parent Trap – Can parent share child-raising responsibilities equally?” (子育ての罠 ―― 夫婦間の平等な子育て分担は可能か?)というタイトルのショッキングな記事が掲載された。


自分たちの親世代にとっては普通だった、「結婚すれば女は家庭に入り、家事・子育てに専念。男は外で稼ぐのが仕事で、家庭をかえりみない」というスタイルは、我々世代には受け入れ難く、夫婦とも、家計の上でも、物理的にも、気持ちの上でも、対等に子育てに関わるというのが、現代社会の多くの夫婦にとっての「理想の子育て」である。

しかし、現実に、完全に50%ずつの分担なんて不可能で、「理想の子育て」という幻想に支配されているからこそ、現代の親たちは、実は、これまでのどの時代よりもストレスを抱えているのではないか、という内容だ。
記事では、平等な子育て分担という“罠”にはまった何組かの夫婦の格闘をレポート。
例えば、ワシントン郊外に住むある夫婦は、どちらも恵まれたキャリア、収入、フレキシブルなワークスタイルを持ち、二人で協力しながら、5歳と3歳の子どもたちを健康に育て、申し分ない躾け、教育を与えている。

一見すると、まさに現代社会のお手本のような共働き夫婦だが、夫婦とも口をそろえて、そんなライフスタイルを「カオス」「ストレスフル」と表現し、「毎日いっぱいいっぱいだ」と言う。

別の夫婦の夫は、夜の帰宅後、洗濯物をたたみ、子どもの宿題を見てやりながら、こう言う。「うちの親はこんなことしなかったよ。今、僕たちは、自分の親とはまったく違うやり方で子育てをしている。それは自分たちが選んだこと。だけど、このやり方は、夫婦とも余計な負担を背負うってことを意味するんだ」。

実際、ある研究機関の最新の調査によると、現代アメリカの多くの父親は、親世代よりずっと子育てに関与しているものの、「父親であること」により多くの負担を感じているという。


一方、結婚生活の変遷を研究している学者は、こう指摘する。「現代社会の多くの夫婦が、家庭外での仕事と子育て、両方の喜びや見返りをシェアしたいと切に願っているにも関わらず、夫婦どちらかがより多くの時間を家庭で過ごし、仕事の時間を削らなければいけないとすれば、それは女性だという風潮がまだあるのも事実です」。

記事には、現代の理想の夫婦像のストレスから解放される手段として、あえて、妻が家庭での子育てに、夫が外で稼ぐことに専念することにした夫婦も登場する。

妻は、夫婦で完全に平等であろうとして、最初の結婚に失敗。二度目は、“伝統的な結婚生活”に戻ることに決めたという。「必要な犠牲を払ったということ。子育てに関して言えば、私が90%で夫は10%。それでとてもうまくいっているのよ」。

とはいえ、夫婦共働きでなければ家計がまわらない家庭も多いだろうし、このやり方がベストとは到底思えない。結局、年十年も前の夫婦像に戻らないと家庭がうまくいかないなんて、悲しいではないか。

では、現代病ともいえる、子育ての罠にはまらないためには、どうしたらいいのか?記事はこう締めくくる。

結婚して子どもができれば、自動的に平等な分担生活が始まるとは決して思わないこと。子どもが生まれた瞬間から、日々追いまくられる生活が始まり、夫婦でゆっくり「何をどう分担するか」「自分たちにとっての平等の意味」を話し合う時間はなくなる。夫婦で日ごろからよく話し合い、常に目を光らせておくこと。

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それができれば苦労しないよ、と言いたい気もするが、新年早々、考えさせられた記事だった。アメリカでも日本でも、まだまだ男女の役割分担の固定観念が根強いなか、「夫婦ともに平等に働き、平等に子育て」という理想像ゆえ、息苦しさやストレスを感じる夫婦が多いのも事実だろう。

だって実際問題、今の社会構造じゃ、男女とも50%ずつの平等社会は無理だもの。それでも、我々はやるしかないのだと思う。親世代から少しずつ社会が変わり、とにもかくにも、女性が外で働き、男性が子育てするのが普通になってきたように、私たちの子ども世代には、本当に平等な夫婦像が確立されていることを願って。


恩田 和(Nagomi Onda)恩田 和(Nagomi Onda)
全国紙記者、アメリカ大学院留学、鉄道会社広報を経て、2010年に長女を出産。国内外の出産、育児、教育分野の取材を主に手掛ける。2012年5月より南アフリカのヨハネスブルグに在住。アフリカで子育て、取材活動を満喫します!