「ねえ知ってる? Aママって○○コーチとデキているらしいわよ」
「えー!? 何それ? どこ情報?」
「Bママの妹のパート先の人が○○コーチと知り合いで、平日にAママとデートしているところにばったり出くわしたらしいのよ」
「でもたしかに、Aくんっていつもレギュラーじゃない? ちょっと怪しいと思っていたのよね」


『発言小町』あたりで探せばいくらでも出てきそうな話だけど、こんな下世話な噂がママ友の間で流れたらどうだろう? それどころかもしも自分がAママの立場で、噂が事実無根であったとしたら?

折しも新年度。ママ友づきあいは子どもの人間関係にも関わってくるもの。いわれなき悪評が広まった場合の対応策を頭に入れておくと、いつかどこかで役立つかもしれない。

プレジデントムック『ヤバすぎる! 男と女の深層心理学』に、「ヤバイ噂話、悪口、デマを打ち消す法」が記されていた。内容はビジネスマン向けだけど、ママ友関係にも十分応用できそう。以下、「子どもの習い事先のコーチとの不倫の噂」が流れてしまったケースで、その対処方法を考えてみた。

噂が広まる方程式とは?


「私は自分の目で見たものしか信じないわ」という崇高な人もいるが、じつは古来より人間は噂好き。「口裂け女」も噂の産物である。そして噂の広まる量は、心理学者のオルポートとポストマンによって公式化されている。

噂の流布量(R)=重要性(i)×証拠のあいまいさ(a)


「Aママが○○コーチと不倫」という噂は、まず「不倫」という衝撃度が高く、あいまいさもしかりだ。まさか、Aママが「○○コーチと付き合っていま~す☆」と公言するわけがなく、不倫の確証なんて誰にもつかみようがない。この公式に照らし合わせれば、不倫ネタはまさに“広がる噂のチャンピオン”。

また、人から人へと伝わるにつれ、噂話の内容も具体的になる。冒頭では「Aくんがいつもレギュラーなのは怪しい」という情報が加わったが、いずれ「Aママと○○コーチは不倫していて、そのおかげでAくんはレギュラーに抜擢されている」と話が大きくなる可能性は高い。

逆説的に考えれば、インパクトが大きく裏をとれない情報は「単なる噂かデマ」として聞き流してもよさそうだ。

「ここだけの話」はあっという間に広まる


「ここだけの話」は噂話の枕詞。でも「ここだけの話」は、かなりの確率で広まるだろう。というのも、「ここだけ」と言った時点でその話の重要度はぐぐっと上がるから。類語義語として、「あまり人に言わないでね」「本人にはないしょね」と言ったフレーズもある。

そして「いい噂話」よりも「悪い噂話」の方が広がる点にも注目したい。「Aさんが宝くじで100万円当たったらしい」という話より、「Aさんが詐欺で100万円をだまし取られた」というほうが世間の口にのぼるだろう。筆者は、「他人の不幸は蜜の味」という心理が働くというよりも、本能的に人間は悪いことや危険なことに反応しやすいからだと思うのだが。

つまり「ここだけ」でしか言えない誰かの悪い話は、インパクトが大きく事実があいまいであるほど流布されていく。人の悪いママ友に、「チーム内不倫なう」とSNSなどでつぶやかれたら、学区を飛び越えて話は伝わっていくかもしれない。

ヤバくてまずい噂の対処方法は?


はっきり言って、広がってしまった噂はどうにもならない。先のプレジデントムックでも「やりすごす」「気にしない」こともひとつの解決策としている。「Aくんは○○コーチにひいきされていて、いつもレギュラー」という噂であれば、たしかに騒ぎ立てないほうが得策なことも。Aくんの実力を周囲に見てもらえば、いずれ真実が明らかになるだろう。

ただ、「不倫」など、家族にとっても影響が大きく、不名誉な噂であれば周囲に相談した方がいいとのこと。

しかしながら、ママ友ワールドには会社と違って組織を束ねる「上司」はいない。リーダー格のママに相談するのもよさそうだけど、なかには近寄りがたい人も。そこで頼りたいのが、顔の広い人気者のママだ。

チームやクラスなど大人数の集団をよく見ると、じつは3~4人の仲良し小グループがいくつも構成されている。そして仲良し組【1】は仲良し組【2】とくっつくが、仲良し組【3】とはあまり交流がないなど、混ぜこぜになっている。

ところがなかには、仲良し組【1】【2】【3】どころか【4】とも【5】とも繋がっているような人気者ママがいる。人気者ゆえ、人当たりがよく話しやすかったりするので、こうしたキーマン……いやキーママを見つけて相談すると、噂の火消し役となってくれるかもしれない。

だけど大事なのは、「噂はウソだよ、Aママはそんなことをする人ではないよ」と、どんな状況でも味方になってくれるママ友を持つこと。また、万が一、お互いの悪い噂をキャッチしたときに、「あなたの悪い噂を聞いたんだけど……」とちゃんと伝えあえるような信頼関係をママ友と築くこと。

子どもを通した人間関係とはいえ、ママ“友”だもの。たった1人でも、いざというときに支え合える真の友がいれば心強いはずだ。


中澤 夕美恵中澤 夕美恵
出版社、編集プロダクション勤務を経て、出産を機にフリーランスに。育児雑誌を中心に、恋愛コラムからメンズ向けムックまで幅広く編集、ライティング活動を続けている。11歳息子、8歳娘の母。