「この汚れは私のじゃないのに! なんで全部私が!」あぁ、機嫌が悪い時に掃除をすると、妙な不公平感に襲われる。新聞を読んでいる夫に「だったら手伝ってよ!」と心の中でイライラをぶつけているようでは「掃除してお部屋も心もスッキリ!」なんていうピンクのハートマークには程遠い。

MAMApicksでもご紹介した「おそうじブルー」なる現象。掃除に対して「義務感」があり、かつ「ストレス」を感じている主婦層をそう呼ぶ。この「おそうじブルー」層が主婦の多数派である実態を浮かび上がらせた「主婦のお掃除実態調査」を行った株式会社ダスキンが、今度は「夫のお掃除実態調査」を実施した。

ほほーう、どうでた? と、ちょっと意地悪な興味満点で、自称「間違い無くおそうじブルー」の母が集い座談会。調査結果をのぞいてみた。

やっぱりやらないのか……!


まずは、夫のお掃除分担の実態から。平日は、実に7割以上が主体的に掃除をしていない(「自分がやることはめったにない」55.3%、「主に家族が担当し自分は手伝い」20.5%)。これが休日になっても、5割以上の夫は主体的にやらない(「主に家族が担当し自分は手伝い」30.5%、「自分がやることはめったにない」25.5%)のだ。

「確かに他の家事に比べて掃除はしないなぁ〜。結局私だ」「早朝に家を出て深夜に帰って来るとそもそも平日は家にいないからね」「共働きでこれはあんまりだと思う! どっちも忙しいのに」

いかにもな結果に納得しつつも不公平感を訴える声が上がった。

プレッシャーもない!


主婦の「おそうじブルー」層は全体の4割と最多数だった(前回調査)のに対し、なんと「おそうじブルー男子」はたったの12.8%! 義務ともストレスとも感じない「おそうじマイペース」な夫が最多で45.0%と出た。義務感だけでみると、なんと7割以上がそもそも掃除を義務だと思っていない。


※株式会社ダスキン「夫のお掃除実態調査」 表2参照

「もともとやらないんだからストレスもないって」「義務感なければ気楽だよね」「見事に男女の数値が逆!」「自分の夫が『おそうじブルー』系じゃなくてよかった。プレッシャー感じて絶対つらい……」「『おそうじポジティブ』な夫だったら幸せだよね〜」

その気楽さがうらやましい、と皮肉がこもる。

感謝の言葉も、やっぱりない


では、やらないなりに「妻が掃除した後に感謝の言葉を送っている」かというと、6割以上が消極派(「あてはまらない」35.3%、「どちらとも言えない」29.7%)だ。「あてはまる」と答えたのは35.0%。

「ほんとに言ってくれないよね、ありがとうなんて。そもそも気付いてない!」「お風呂場を磨き上げた日、夫のお風呂上がりを待ち構えていたけれど無言だった」「別に『すごい!さすが!』とか褒めて欲しい訳じゃなくて『きれいになったね』ってひと言欲しいだけ」「美容院に行ったのに気付かないのと同じ現象だよね……」

もっと積極的にほめてくれていいのに! の気持ちが爆発。


3つの「ない」がイライラのもと!


「やらない」「プレッシャーがない」「感謝しない」。
さぁ、3つの「ない」が集まった。

だいたい妻のイライラの源泉はこの辺にある。妻がやるのが当たり前で自分から動く気が無く、変化に気付かず感謝の言葉もない。

妻はイライラを解消すべく、とりあえず「手伝い」を頼むのだ。

そして夫が「手伝ってくれる」時、たいてい自分とやり方が違うからつい言ってしまう。「え〜そのぞうきんで拭いちゃったの?」「そこはこの洗剤じゃないんだけど」。

夫が一番嫌いなのが「指示」「ダメ出し」されること


実は夫の側は、細かいやり方を「指示」されたり、やり方が違うと「指摘」されるのが一番頭にきてやる気がしなくなるらしいのだ。

座談会を見守っていた唯一の男性担当者が、ここだけは重い口を開いた。

「いや、本当に、せっかくやって、違うとかダメとか言われるのが一番きついんです。だったらもうやらない! と言いたくなる」

「なるほどそういえば、『やり方にまで口だすな!』って言われて大喧嘩に発展することが多いなぁ。」「うちはたいてい黙り込む。そうかそういう気分なのかなぁ」

妻がやり方に口出ししないのは、かなり重要なポイントのようだ。そして、それはとても、難しい。

例えば子どもが食器洗いのお手伝い。シンク掃除用のスポンジで食器を洗ってしまっても、「よくきれいに洗えたねぇ、かんぺきっ!」 と言って後でこっそり洗い直す。手伝いの楽しさを知って自信をつけて欲しいから、そんなこともできる。

でも、夫を相手にこれをやる心の余裕は、正直、無い。子ども用にその種の心は既に使い切っている。寛容さを失い自分スタイルに修正したくなるのだ。

どうしたら夫のやる気が出る?


夫が自ら動けば妻のイライラは軽減するはずだ。何が夫を動かすのだろう。

「お掃除へのやる気や達成感につながること」を見ると、一番が「きれいを実感できた時(目立つ汚れがある時など)」28.2%。次いで「便利、新しい、高機能なお掃除道具(手段)など」18.6%とある。

日常のやむをえない家事というより、どこかイベント的な感覚が見える。

「一旦お風呂掃除を始めるとずーっとやってる。その時間があったら他のこともやって欲しいって思うのに」「洗剤を何種類も買ってきて、いらないのに柄付きのスポンジとかも。絶対形から入ってる!」

つまり、イベントやプロジェクトのような要素がある方が、やる気になる、ということか。

ひとつの解決策〜「丸投げ」して「不可侵領域」化


夫が掃除で力を発揮するには、「妻は口出ししない」で「掃除にプロジェクト感」があることが重要そうだ。彼らが慣れた仕事と同じく、自ら考え、検討する・・・夫が自分の仕事として掃除を捉え自発的に動けば、妻のイライラはもちろん治まる。

ならば……「丸ごと任せる」のはどうだろう。いい意味での「丸投げ」。

風呂場、ベランダ、ガス台、窓、換気扇等、イベント性が高めの場所を中心に、夫担当の箇所を決める。そしてそこは、完全に夫の裁量に任せる。掃除の手法も頻度も口を出さない。長いスパンで見てきれいさが保たれていれば、文句は無しだ。

「私はここは掃除しない。いっさい口も出さない、邪魔もしない。全部あなたに任せる!」

狭くても自分の書斎を求める男性が多いのは、きっと邪魔されない不可侵な自分の城が欲しいから。掃除においてもその「不可侵領域」を作り出すことで、夫側の掃除に対する快適さがきっと上がる。

自分で方法を考え、予算とスケジュールを立て、目標設定してベストな状態をキープする。そういうプロジェクトを進めるのは仕事と同じでむしろ得意なはずだ。その感覚で自分の掃除担当箇所を徹底的にマネジメントしてもらえばいい。

洗剤や専用の道具を買い込み、汚れの種類と個別の対策についてネットで専門知識を調べ尽くし、スケジュールアプリに掃除の予定を登録して、アラームが鳴った日に黙々と担当個所の掃除をする……。

そんなやり方でも口出し無用。それが夫流のやり方なのだから。自分は自分の担当箇所を好きなやり方でやればいい。

ちょこちょこ「手伝い」を頼んで双方でストレスをためるのはもうやめて、こんな「丸投げ」でお互いの快適度を上げるのはどうだろうか。

「好きなお掃除」が男女で違う、うれしい事実!


もうひとつ快適さのヒントになりそうな結果がある。夫と妻それぞれの「好きなお掃除」と「やりたくない(手伝って欲しい)お掃除」上位5件の比較だ。


※株式会社ダスキン「夫のお掃除実態調査」 表5参照

このずれを利用して夫婦でお互い相手の苦手な場所を担当し合うと、自然と感謝の気持ちが生まれるかもしれない。

もうすぐ「母の日」。感謝の気持ちをプレゼントで貰うのももちろん嬉しいけれど、夫から「お風呂掃除は僕が担当するから、もうやらなくていいよ」なんて言われたらどんなに嬉しいだろう。

さぁ、いくつかのヒントをもとに、ピンクのハートな気分に近づけそうだろうか?

座談会を終え、気持ちを吐き出して一同「あーすっきりした!」。そうそう、それも重要。
さて、我が家もまずは、好きな掃除と嫌いな掃除を夫と申告し合うことから始めるとするか。

株式会社ダスキン「夫のお掃除実態調査」

狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。