【読了時間3分!忙しいと言うパパへ】


忙しいビジネスマンのための3分間育児』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
忙しいパパだからこそ心がけてほしい育児のツボ、忙しいことをメリットに変えるコツが満載。
ワーキングマザーにもおすすめ!


「仕事を効率化すれば家族時間が増える」は危険な妄想


もっと育児にも家事にも関わりたいのだけど、仕事がどうにも忙しくて手も足も出ないというパパは多いですよね。
そこでよくあるのが、「だからもっと仕事を効率化して家に早く帰れるようにしましょう」という理屈です。

でも、ちょっと待ってください!
なんだかそれって、あたかも今までダラダラと仕事をしていたみたいな言い方じゃないですか!?

失礼しちゃいますよね。
それに、そもそも、「仕事の時間を効率化して、家族時間を増やしましょう」っていうロジックなんかおかしくないですか。

なんでまたそこで意識を仕事に向けちゃうんでしょう。
それこそが仕事優先の潜在意識の表れだと思います。

そもそも仕事を効率化すれば家族時間が捻出できるというのは危険な幻想なのです。
長引く不況のおかげで人員は減らされて一人当たりの業務負担はかさんでいる上に、どこの会社でも、コストカットのために仕事はすでに極限まで効率化させられているはずです。

しかも人より効率よく業務をこなしてしまう優秀な人ほど頼りにされて、さらに仕事が集中するという皮肉な構造すらあるかと思います。
個人レベルでいくら仕事を効率化したところで、早く帰れるわけではないのが現状ですよ。

そのような状況にある人に、さらに仕事の効率化や時短を迫ることは、絞りきった雑巾を万力にかけて最後の一滴を絞りだそうとするようなものじゃないですか。
そんなことをしたら雑巾が引きちぎれて使えなくなってしまいます。

時間の絶対量を追いかけてしまうと常に限界への挑戦みたいなことになってしまって、長続きなんてしません。

目指すべきは「サバイバル育児」ではなく「サステナブル育児」なんですね。

家族時間は量より質


そこで今回提案したいのが「3分間育児」です。
「3分でもいいから育児してみよう。3分でもできることはある。3分でも濃密な時間を過ごせばそこから何かが変わる」というような意味です。
では、3分間でどんなことができるのか。

たとえば朝起きたとき「今日も会えてうれしいよ」と言いながらギューッとハグをする。
それを毎日続ければ、子どもの自己肯定感、すなわち自分のことを大切な存在だと思う気持ちが育ちます。

手元に新聞紙があったらどんな遊びを思いつきますか?
たとえばチャンバラをしたり、ボールとバットを作ったり、お面を作ったり、文字探しをしたり、手元にある物とほんのわずかな時間を利用して、遊びをクリエイトしてやれば、子どもの創造力が伸ばせます。

まったく家にいられなくたって、リビングに図鑑や地球儀、虫眼鏡などをおいておくだけで、子どもの知的好奇心が刺激されます。

大切なのは、限られた時間の中でどうやったら自分の存在感を子どもの心に深く刻むことができるかと考えることです。

要するに、一緒に過ごす時間の長さより、子どもの心の中にあるパパの存在感の大きさが大事。家族時間は量より質なのです。

魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える育児


家族との時間が多いに越したことはないのですが、時間がないことにも実はいい面があります。

中国の故事で、「飢えた者には魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなさい」という話がありますよね。魚を与えてしまってもまたすぐに飢えてしまうけれど、魚の釣り方を教えれば一生食うに困らないという話です。

それと同じで、忙しいパパは、限られた時間では一から十まで関わることができないために、子どもにヒントや環境だけを与えて、「あとはじぶんでがんばって!」となります。

一見無責任に見えますが、それでちょうどいいんです。

「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える育児」をしていることになるんです。
いつもべったりしていられるわけではないので、ちょっと離れた距離感から客観的にわが子を観察して、ママとは違った側面から、より立体的に子どものことが理解できるメリットもあります。

3分間育児から社会が変わる!


「女性の社会参画を促進するために男性も育児を!」とか「少子化を食い止めるために男性も育児を!」とか、いくら大上段ことを言われても目の前の仕事の山の圧力にはかないませんよね。

その気持ちはぼくもよくわかります。

男性の無意識の中に、「家族時間」や「育児」の領域を増やしていくためには、他人から高尚な理念を説かれるよりも、少しでもいいから実際にやってみることです。

実際にやってみると手応えを感じて、もう少しやってみたいと思うようになります。
そうやって一人ひとりの無意識が少しずつ変化することで、いつの間にか社会全体が変わっていくのだと思います。

まずは3分間、あせらずに、じわりじわりと、です。

育児・教育ジャーナリスト:おおたとしまさ
株式会社リクルートを経て独立。男性の育児・教育、子育て夫婦のパートナーシップ、無駄に叱らないしつけ方、中学受験をいい経験にする方法などについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、ラジオ出演も多数。All About公式「子育て」ガイドであり、心理カウンセラーの資格、中高の教員免許、小学校教員の経験もある。著書は『パパのトリセツ』、『ガミガミ母さん、ダメダメ父さんから抜け出す68の方法』、『中学受験という選択』など。