夫婦の意見が一致しないことのひとつが、夫の小遣い問題である。妻からしてみれば、日々、10円単位で家計を節約しているというのに、夫は仕事を理由に平然と飲み代をせびる。

夫は夫で、家計に余裕があるように感じられるのに、財布のひもをギュウギュウと締める妻の気持ちがわからない。


損保ジャパンDIY生命の「夫婦の財布の紐調査」によると、「夫婦間でお金のトラブルはある」との回答は56.2%。さらに「お金のトラブルで離婚を考えたか」との設問では、妻の29.2%が「考えた」と回答したのに対し、夫は11.9%。

家計に関して、楽観的な夫の姿が垣間見えた。
節約妻vs浪費夫の構図は解消できるのか? 4人の母で、節約に関する著書もある育児漫画家の高橋三千世さんに話をきいた。

■培われた金銭感覚は変わることはない


「わが家はお金の話でどれだけ夫婦ゲンカをしたことか。20年間、夫と一緒にやってきて言えることは、『性格と同じで金銭感覚は変わらない』です(笑)。

元々、私の実家は余裕のある家庭ではなかったんですよ。子どものころ、学校の保護者用アンケートで『家庭の状況は、上流か中流か下流か』というものがあった。

そしたら父親が迷うことなく【下流】に○をつけたので『うちって下流だったのかー!』と衝撃を受けましたね(笑)。

高校時代もアルバイトをして、自分の小遣いはもちろん、定期代も払っていました。だから私自身、節約はすっかり身についている。だけど夫の実家は裕福だったんですよね。育ちと環境のせいか、金銭感覚はまったくないに等しく、言えばいくらでも通帳からお金が出てくるように考えている節があります。魔法の通帳じゃないっつーの!」


三千世さんのご主人は約10年前、証券会社から金融系の営業職に転職。給料は出来高制となり、仕事の経費もすべて自己負担。転職まもないころは手取り8~10万円にまで収入が落ち込んだ。その頃、幼い子どもが3人おり、三千世さんの漫画の仕事も途絶えがちだったため、貯金を切り崩して生活せざるを得なかったという。

「おやつに、100円チョコレートを買いたいのをがまんして、バナナを買っていました。バナナの方が、腹がふくれるじゃないですか。そんな生活をしていたのに、夫は契約をとるために終電過ぎまで飲んできて、タクシー帰り。ふざんけんなー!ってケンカですよ」

家計簿を見せ、逼迫した家計の状況を訴えたこともあったそう。

「理解してくれるどころか、夫はムス~っと黙っちゃうんですよ(→まったく効果なし)。
それなら夫に家計を預けるから、やりくりの苦労を知ってくれと頼んだけれど、『仕事で神経を使っているのに家計まで見てられるか!』と言われ、またケンカ。

今は夫の収入も上がり、家計に余裕が生まれてきました。そうしたら今度は、『オレが家計を管理したい』なんて言い出すんです。お金がない時こそ、現実を知ってほしかったのに、勝手なもんですよね」

■無理なく節約できるようにお膳立てをする


威勢よくご主人の浪費癖を披露してくれる三千世さんだが、ご主人の気持ちを理解している部分もある。

「男の人は見栄っ張りなんだと思います。たとえば、女同士で夜に飲み会をしたら、タクシー代がもったいないから終電前にお開きにしようという話になりますよね。でも、夫の話だと、仕事の付き合いで楽しく飲んでいるときに、『終電なので帰ります』とはなかなか切り出せないみたい。年に何度も行かない接待ゴルフのためにいい車に乗りたいとか、妻にはわからない世界があるようです」

ご主人に、自分と同じような10円単位での節約に励んでもらうのは難しいと判断した三千世さんは、ご主人が無理をせずに節約できる工夫をした。

「これは転職前の話ですが、当時は毎月5万円の小遣いを渡していました。それを夫は1週間でぜんぶ使い切ってしまう! だから1週間に1万円ずつ渡すことにしたんです。そうすると、うまくやりくりしてときには小遣いを余らせることも。あればあるだけ使っちゃう感覚を逆手にとったのが正解でした。

また、夫は会社近くの『ファミリーマート』を利用すると話していたので、クレジットカードを『ファミマTカード』に切り替えました。ポイントも貯まるし商品が割引になるので、ランチ代の節約になるんですよ。

通勤に定期券を使っているご家庭なら、ポイント還元率のいいクレジットカードで定期券を購入してもらう方法も。節約が苦手・嫌いという夫には、ある程度お膳立てをしてから協力を仰いだほうがいいかもしれません」


■夫の本音。妻の価値観で「ムダ」と判断されるのはいかがなものか?


一方で夫の側は、妻から浪費やムダ遣いを指摘されることをどのように感じているのか?

金融業でファイナンシャルプランナーの資格を持つA氏(40代)は、「男女でムダ遣いの線引きが異なるのでは?」と話す。

「飲み代に関して言えば、ほとんどの男性はムダと思っていないでしょう。飲み会は職場の付き合いとストレス解消を兼ねています。お互いの価値観で“ムダ”を指摘し合っても、感情論に終始してしまう。一ヵ月でどのくらいの飲み代なら許せるのかなど、冷静に話し合って妥協点を見つけるべきでしょうね」

夫の小遣い金額も、各家庭によって考え方や概念は異なる。「○○さんの夫の小遣いは1万円だから、わが家も1万円に」と安直に下げるのはすすめられないそう。

「まず、小遣いといっても夫が自由に趣味や遊びに使える額は少ないんです。外回りをしたらお茶を飲みたくなるし、残業をすれば腹も減る。あくまでも、外で働くための“経費”と考えてもらうとわかりやすいかもしれません。

夫の小遣いが1万円という家庭でも、昼食代や飲み代、ゴルフ代は別資金というケースがあります。その場合、総額4万円の小遣いでやりくりしている人よりも支出が増えてしまう可能性も考えられます」

労働環境も人それぞれだ。内勤よりも外勤のほうが細かな出費はかさみがち。「のどが渇くなら水筒を持って外回りすればいい」という意見もあるが、かさばる水筒を目にするたびに夫の不満を募らせることにならないか。ストレートな小遣い減額は諸刃の剣である。

「夫の小遣いを抑えたい場合、毎月1万円は削るけれどボーナス時は年2回、5万円を上乗せするという提案をしては? 夫も納得しやすいでしょうし、実はこれで年間2万円の節約になっています」

家計の苦しさを切々と訴えても、夫は稼ぎを責められているようにしか感じられないのかもしれない。

ならばアメとムチを使い分けつつ、落としどころを探っていく。夫にストレスを感じさせないように、小遣いを減額させすることができれば上出来だ。


【取材協力】高橋三千世さん公式サイト
http://www.geocities.jp/takahashi_michiyo/


中澤 夕美恵中澤 夕美恵
出版社、編集プロダクション勤務を経て、出産を機にフリーランスに。育児雑誌を中心に、恋愛コラムからメンズ向けムックまで幅広く編集、ライティング活動を続けている。11歳息子、8歳娘の母。