博報堂DYメディアパートナーズは、「70代のメディア接触と生活意識・消費行動に関する調査報告」を発表、東京に暮らす70代男女が、メディアとどう接触しているか、また生活意識・消費行動に関する興味深い結果が報告された。
( http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/report/20130702_7411.html )

70代のマスメディアへの接触率の高さはもちろん、デジタルメディアにも積極的。携帯メールは約半数が、ネットショッピングを楽しむ方も2割弱出現、と日頃、高齢者向けのWEBサービスを運営している筆者としても非常に興味深いデータであった。


―― さて、自分の親を思ってみる。
母は70にはまだ少し遠いが、父にいたっては68、住居も都内。まもなくこの調査のターゲットゾーンである。

そこで、両親をこの調査結果と照らし合わせてみたら、ネットショッピングも普通にしているし、子や孫への出費も多く、旅行も楽しむ……と、ほぼデータのとおりになったわけだが、特徴的だった以下の2つを例に挙げてみることにする。

●デジタルメディア
父は専用のデスクトップPC、母は母でiMacを所有している。
夫婦とも各種ソーシャルのアカウントを持っており、とりわけ父のSNS接触率は高い。隙あらばiPhoneを手にして、ずーっと何か打っているが、入力速度が遅いのでほぼ一日中iPhoneを触っているような格好になる。正直母のほうがiPhoneでの入力は速い。

両親とソーシャルでつながっているのはめんどくさい側面もあるが、震災以降、安否確認の意味でも親のアカウントはあったほうがいいと思ったので、まあいいだろう。

Facebookでは非公開の家族内グループに私がアップする孫の写真を見ては、夫婦で「いいね!」をつけている。
最初の頃は父が勝手に孫(=筆者の子)の写真を全体公開してしまうこともあったので、その都度牽制をし、2年かけてリテラシー的なものを学んで今にいたる。

母に関しては知らない間に孫にiPhoneを渡してゲームをやらせており、2歳児のテトリスの腕が見る見る上がるという珍現象が起きている。

自分もゲームやったほうだし、夫はすごくゲーム好きだし、何とも言えないのだが、かつて小学生だった私が「ドラクエ2」にはまり過ぎたときに、「目が悪くなる」といってファミコンを隠した人、いったい誰でしたっけ……。


●「おじいさん、おばあさんと呼ばないで!」
さて、一番気になったデータがこれだ。
最近、孫に「じいじ、ばあば」と呼ばせているご家庭が多いように思う。かくいううちもそのとおりで、子どもが生まれてすぐは、自分がてんやわんやで覚えていないのだが、気づいたら「じいじ、ばあば」で両親の呼称が定着していた。

この「じいじ、ばあば」。
2009年の国立国語研究所による調査では、4人に1人がその呼称を使っているという調査結果が発表されている。
( http://www.ninjal.ac.jp/publication/catalogue/kokken_mado/40/05/ )
首都圏の女性が圧倒的にこの呼び方を使っており、首都圏の男性も、40代以降では25%が「じいじ」の呼称を使っていることがわかる。(同じ首都圏男性が「ばあば」に関しては使っていないというデータも興味深い)

また、「じいじ、ばあば」の使用率は、関東甲信越、北陸、東海地方で高く、ほかの地域ではあまり使われていないことが伺える。

気になったので、母親(東海地方出身)に直接きいてみた。
「ねえ、何で『ばあば』って呼ばそうと思ったの?」
少し考えて母が答える。
「うーん、『おばあちゃん』だけは絶対いやだったの」
「急にふけた気になるから?」
「そうねえ……。」
「別の候補なんかあったの?」
これに関しては「『○○ちゃん(←母の愛称)ばあば』かな」という言い方をしており、とにかく『おばあちゃん』じゃなければなんでもよかった感がよくわかったので、それ以上聞くのをやめた。そうか、これが“60代女子”の実態か。

ちなみに夫の母(東北在住)のことは「おばあちゃん」と息子に呼ばせているのだが、筆者の息子が生まれる前にすでに孫が二人いた義母からは、
「あら、『お』なんてつけちゃって、ご丁寧に。『ばあちゃん』でいいのに」。
まったく逆のリアクションが返ってきた。

……ふと自分の父方の祖母のことを思い出す。
東北出身ではあるものの、戦争中に北京に渡り結婚、その後子どもたちを抱えて疎開で各地を転々とし、東京に落ち着いた流浪の女であった。
その祖母が80歳のころに外出から帰ってくると、憤慨しながらこう言った。

「電車でシルバーシート譲られたのよ! 失礼しちゃう!」

まあとにかく、15年位前から都内ではこの風潮があったという認識でいいのかもしれない。

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わが息子が祖父母の呼称問題についてどういうリアクションをしているかといえば、当人たちを「じいじ、ばあば」と呼び、保育園の先生には「おじいちゃん、おばあちゃん」と言って、使い分けていることがわかった。

大手掲示板「発言小町」などでは、「じいじ、ばあばの呼び方に違和感」という投稿も見られたが、義母と実母を呼び分ける意味でも、「ばあば」でいいのではないか、と個人的には思っている。そのうち間違って、「ばばあ」と呼ばれて激怒しないといいなあ、とそこだけ心配している。

ちなみに筆者はといえば、息子に「みかちゃん」と名前で呼ばれており、筆者の一人称は「ママ」だったり「お母さん」なのだが、ほかの家族が名前で呼んでいるせいだろう。

息子はこれまた保育園では「ママ」と呼んでいるので、2歳児に気を遣わせて悪いなと思いつつ、訂正する必然性も強く感じなかったので、ここまで来てしまった。よそのママと区別もつくので混乱もしないし、迷子になったときも大声で呼ばれて恥ずかしいのを除けば意外に便利なのだ。

それに、物心ついたらどうせ「おふくろ」とかカッコつけて言い出すのだから。呼んでくれるうちが華なのであろう……。

そういえば、「じいじ、ばあば」で育った世代って、だいぶ大きくなってもそう呼んでくれているのだろうか。息子の10年後を見据えた時に、気になるところではあるのだ。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在は日本テレビグループ・LIFE VIDEO株式会社のデジタルコンテンツ全般を担当。


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