まだ私が親になる前、ある友人が「 "time out"(タイムアウト)という方法は、すごく効果がある」と言ってきた。

彼女はその頃、かなり話題になっていたイギリス出身のプロフェショナル・ナニー(乳母、しつけ役)が活躍するテレビ番組『Super Nanny』でこの方法を知ったそうで、言いつけを守らなかったり、何か悪いことをした場合に、壁の横や部屋の隅に子どもを立たせ、反省させるという。その話を聞いた時、立たされた子どもはなぜかそこから動かないという彼女の話が不思議で、記憶に残った。



そして実際に子育てを始めてみると、まわりで "time out" をやっているというお母さん方が意外に多い。「タイムアウトをしたらね……」「うちは最近タイムアウトばかり」という話題が普段の会話に出るし、「親も子どもも落ち着くには良い方法」と、かなり一般化している。少し前の日本で言うなら、「お母さんの言うことを聞かないなら、そこに立ってなさい!」といったところか。そんなやり方を今でもやっている人がいるかどうかは知らないが。

タイムアウトの基本的なやり方は次のとおり。

  • 1:言いつけを守らなかったり、親の適切な指示に従わなかったりした場合、あらかじめ決めておいた場所に子どもを連れて行き、なぜタイムアウトをしなくてはならないか、それによってどういう結果を導きたいか、落ち着いた表情と声で伝える。

  • 2:立たせる時間は「子どもの年齢×1分」。つまり、3歳なら3分、4歳なら4分。

  • 3:時間が立ったら子どものところに行き、なぜタイムアウトをしなくてはならなかったかわかるかを確認する。「わからない」と子どもが言う場合は、わかるように説明する。

  • 4:納得した時点で、タイムアウトを終了する。


ここでポイントになるのは、タイムアウトを使うことについての家庭内での取り決めかもしれない。

親が意味もなく一方的にキレて "time out!" と叫んで子どもを隔離するタイムアウトは、親の権力の乱用だろう。育児の専門家ではない私が言っても何をかいわんやで、我が家の子どもはまだ3歳になったばかりだからそう言えるのかもしれない。

でも、大人の勝手な理由や気分で怒られた記憶が、30年ぐらいたった今でもまだ自分の心に残っていることを考えると、それと同じことを自分の子どもにしたくない、それには今この時が肝心なのではないか、という思いがあるのは確かだ。

落ち着いて話すのは難しい時もあるが、子どもがそこまですべてを理解できなくても、ある程度コミュニケーションがとれるようになったら、子どもと顔を同じ位置までしゃがんで、両手を握り、冷静な表情と落ち着いた声で対面する。

「これこれこういう理由で、今からタイムアウトするよ。ここがその場所で、お母さんがまた来るまでここに立って、どうしてこうなったか考えようね」と、ゆっくり話すのが我が家の場合は効果的だ。

初めてのタイムアウトでは何が起こるのかわからず不安がっているようだったが、不思議なことに、「ここ」と指定された壁の横から動かない。そのうち泣き出してしくしくいってるのが聞こえ、こちらも胸を締め付けられたり……。

チラッと見たその姿は不憫で、このやり方は間違っているのかと考えさせられるが、時間が経ったら、再び子どもと顔を同じ位置までしゃがんで、冷静な表情と落ち着いた声で、「どうしてここで立って考えることになったかわかった?」「うん、わかった。もう××しないで、○○する」と会話ができればベスト。

しっかりとハグし、そのまま抱っこしていて欲しければ抱っこをして、急がせない。そして、子どもが自分で立ち上がって遊びだすまで、楽しいお話をしたりする。ここで急いでしまうと、我が家の場合は元の木阿弥になりかねなかった。私自身、親子でじーっと抱っこしていると、息子の体の温もりを感じて幸せになるから一石二鳥だったのだが。

ちなみに、息子が9月から通い始めた日英バイリンガルのモンテッソーリ教育の園では、"time out" という言葉は使わず、"thinking time"(=考える時間)と呼んでいる。やり方が同じなら呼び名の違いはたいしたことはないかもしれないが、私にはこの "thinking time" のほうがしっくりくる。

結局、親が子どもに与えられる最大の贈り物は、そういった質の高い、一緒に考える時間なのではないだろうか。

大野 拓未大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。