筆者宅に子が生まれた約4年前。数時間おきの授乳のお供はいつだってテレビでした。家族が寝静まった暗い室内、深夜のバラエティに助けられたことも多々ありました。

その後、日本には大変な震災が起こり、テレビの内容もだいぶ変わってしまいました。そんなとき私をほっとさせてくれたのは、いち早く通常放送に戻った子ども番組でした。それ以降、子どもが起きてようと寝てようと関係なしに、大人が楽しんで見ている次第なのです。

そこで今回は、親になる予定のみなさま、そして子ども番組になじみのない大人のみなさま向けに、「はじめての乳幼児向け番組ガイド」と題してお届けしようと思います。

ハマると結構、楽しいものですよ。

■基礎編:主要3番組をおさえる


毎朝お子さんと一緒にテレビをご覧の方には「何をいまさら!」という話題で恐縮ですが、今回扱う「主要3番組」とは、

『いないいないばあっ!』(0~2歳児対象)
『おかあさんといっしょ』(2~4歳児対象)
『みいつけた!』(4~5歳児対象)
(いずれもNHK Eテレ)

前年度までこの3番組がひとつのゾーンを成していたのですが、『パッコロリン』という1分アニメの3人きょうだい(5歳のパックン、3歳のリン、1歳のコロン)のキャラクターがそれぞれ年齢に応じた番組内に出ており、統一感を持たせています。


■まずは基本の“き”『おかあさんといっしょ』


みなさんが子どもの頃にも、きっと見たことがおありでしょう。
近年インターネット上では「おかいつ」などの略称で語られることがあります。

現在は歌のお兄さん・横山だいすけ(だいすけお兄さん)、歌のお姉さん・三谷たくみ(たくみお姉さん)、体操のお兄さん・小林よしひさ(よしお兄さん)、体操のお姉さん・上原りさ(りさお姉さん)の4人がレギュラーメンバーです。(カッコ内・番組内での愛称)

土曜日に関しては『おかあさんといっしょ あつまれ!土曜日』のタイトルで、親子体操を中心とした放送内容になっています。

【みどころ】
●月歌(つきうた)
毎回童謡などを含めた3~4曲が番組内で歌われますが、ミュージックチャンネルでいう「マンスリープッシュ」にあたる「今月の歌」(「月歌」などと略される)というのがあり、意外な人からの曲提供があるので、クレジットを見る習慣をつけておくと楽しめます。

※ちなみに2014年6月の月歌は中西圭三によるもの。同氏は歌唱のみの参加(昨年度までの体操曲『ぱわわぷたいそう』)も含めて、すでに数曲同番組に提供。
※そのほかにはホフディラン、たま、くもゆき(チャットモンチー・福岡晃子とおおはた雄一のユニット)、パラダイス山元などが過去に曲提供をしている。

●「ポコポッテイト」
久々に実在の動物がモチーフ、親世代でいうところの「にこにこぷん」(出演:1982年~1992年)の系譜ともいえる人形劇です。
主人公の「ムテ吉」と友だちの「ミーニャ」「メーコブ」の3人(匹?)による、じゃがいもに似た「ぽていじま」という小さな島でのお話です。

~あらすじ~
「世界一怖い物知らずの動物」とギネスブックに認定された生き物、イタチ科・ラーテルの男の子、ムテ吉(3歳)は、「ぽていじま」にある「ぽていゆ」というお風呂屋さんに住んでいる。赤ちゃんのころから赤いデッキブラシを常に持っているが、お風呂掃除はサボり気味。
両親はトレジャーハンターのため長いこと留守にしており、祖母(登場シーンはまだない)、妖精のララパ(ムテ吉はペットだと思っているが本人は激しく否定)との3人暮らし。
わんぱくでやんちゃ、工作が得意で、友だち思いのやさしい一面ものぞかせる。おばあちゃんっ子のためなのか、好物は「ざらめせんべい」。

街に住むマンチカンネコの女の子・ミーニャ(3歳)と、ジャコブヒツジの男の子・メーコブ(5歳)は、ある日ムテ吉の住む「ぽていじま」に偶然たどり着いて仲良くなり、それからは島に通って一緒に遊ぶ毎日。

ミーニャの両親は床屋を経営しており妹が一人いる。おしゃれには大変うるさい。モデルになるのが夢で、愛読書はファッション誌と思われる『にゃんかわいい』。大好きなテレビ番組は『魔法少女ニャンコリーナ』で、魔女の格好をしてステッキを振り回すシーンも多数出てくる。気が強く、特技は空手。怒らせると大変なことになる。

メーコブはひつじ界の名門ジャコブ家の御曹司で、宮殿のような家に住んでいるお坊ちゃま。おなかにぶち模様があるため、牛と間違えられやすいことを本人は気にしている。
歌が上手でオペラ歌手になるのが夢。虫や動物が苦手で怖がり。「おかあさ~ん」といいながら逃げ出してしまうことも多いが、パニックになり「もうむり~!」と叫ぶと、とんでもない力が出ることがある。(ドラマ『噂の刑事トミーとマツ』のトミーのイメージに近い)

メーコブはなよなよした性格と女装をさせられた回などから、中性的な印象を勝手に持っていたのですが“ひつじ幼稚園のラムちゃん”という女の子が好きであることがのちに発覚。振り向いてほしい一心であれこれ悩む姿も見られます。

そのほか、
・メーコブは金持ちなのでゲームや音楽プレイヤー、色数の多い色鉛筆など何でも持っている
・ゾウガメの長老の三択クイズの答えはだいたい3が正解
・アオアシさん夫妻の仲のよさは異常
・その生態に謎が多いララパのポテンシャルは未知数
事前にこの設定を把握しておくとお話に入りやすいのではないかと思います。

●体操「ブンバ・ボーン!」
2014年度からの新しい体操。アルパカやオカピなど、珍しい動物の名前が後半畳み掛けるように出てくるのもポイント。
なお、「ブンバ・ボーン!」については既出コラムで解説させていただいております。
Eテレ 2014春の新番組レビュー&既存番組の注目点
http://mamapicks.jp/archives/52147527.html


■もうすぐ20年!『いないいないばあっ!』


1996年より放送されている乳幼児向け番組で、番組名から「いなばあ」「ばあっ!」などと略されることが多いです。

主人公は、犬の「ワンワン」。
(なんて直球なネーミング!とお思いでしょう。しかしそれが子どもには有効だったりするのだと思います)
そして、人間の女の子・ゆうなちゃんと、音楽の妖精・うーたん、この3人がメインで展開します。

【みどころ】
とにかくワンワンがすごいのです。
歌う、踊る、絵を描く、工作する、司会進行をする、屋外ロケも精力的に行う、「パクパクさんとパク子さん」というサブキャラも担当する。
そして、声を担当しているチョーさんが、スーツアクターも兼ねているということ。(チョーさんはかつて『たんけんぼくのまち』に出演していた)

ワンワンは5歳の犬の男の子という設定ですが、番組が始まった当初、チョーさん自身が犬の年齢でいうところの5歳(=36歳前後といわれている)だったこと、そして『たんけんぼくのまち』でチョーさんは犬が苦手だったことを考えると、不思議な縁を感じざるを得ません。

ちなみにこちらの番組、作曲陣につんく、小宮山雄飛、ワタナベイビー(ホフディランの二人はそれぞれソロ名義での曲提供)などがおり、歌の振り付けにはラッキィ池田の名前がクレジットされています。


■大人のファンも多い『みいつけた!』


「なぜ、主人公がイスなのか」。
それを考え始めるとまったく先に進まなくなるので、いったん置いておきましょう。

2011年には、教育コンテンツの国際コンクール「日本賞」の幼児部門最優秀賞を受賞しているこの番組。
青いイスの男の子・コッシー(声:サバンナ・高橋茂雄)と、人間の女の子・スイちゃんの二人は、仲良く遊んだりケンカしたり、いたずらしたりの毎日。
そしてそんな二人を叱ったり励ましたり、一緒に遊んだりとやさしく見守るのが、サボテン界のスター・大人のサボさん(声・操演:佐藤貴史)。

同居しているこの3人に血縁関係はなく、サボさんは独身。何かの拍子に頭のお花が咲いてしまうとオネエ言葉になってしまうという癖があり、料理の際には白いフリルのついた“新妻エプロン”を着用していますが、その辺はとくに誰も気にしないまま物語は進行します。

サボさんは大人だけど親ではない。たまには一緒にふざけたり、大人げないことをしたり、ないがしろにされたりしつつも、子どもたちが出くわす困ったことを解決に導くために全力のコスプレ(?)でその筋の専門家に扮し諭していくさまは、親として「こうありたいな」と思わせてくれます。

そのほかにも、浴槽から現れて工作や遊びを教えてくれるオフロスキー(コンドルズ・小林顕作)、三宅弘城扮する「みやけマン」の体操コーナー(作詞・宮藤官九郎/作曲・星野源/振付・八反田リコ)、サボさんの曲の作曲陣にはクレイジーケンバンド横山剣や宇崎竜童が参加。

コマ撮りアニメ「いすのまちのコッシー」に声優として篠原ともえ、三宅弘城(彼はいったい何役演じているのだ?)。ゲストキャラクターとしてトータス松本、スキマスイッチや山崎まさよしなど、つい気になってしまうキャスティング。

「コッシーって、どうやって動いてるんだろうね」と、我が家では繰り返し話題にのぼりますが、メカニックをあれこれ想像しながら見る、というのもまた一興ではないでしょうか。

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今回紹介したEテレ主要3番組以外にも、子ども向けのアニメや特撮など、視点を変えるとぐっと興味が増す要素がたくさんありますよね。
(個人的には、「急場しのぎでジャムおじさんが中華まんの材料で作った顔をつけたアンパンマンが『あんまんマン』となり語尾が中華風になる回」がとても好きです!)

そこで、次回ではもうちょっとマニアックなところを掘っていく後編をお届けしたいと思います。どうぞお楽しみに。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。