『母がしんどい』(新人物往来社)、『ママだって、人間』(河出書房新社)などの著作で同性からの支持も厚い漫画家の田房永子氏。同氏が通販サイト「Love Piece Club」で連載中のコラム「女印良品」で、今月9日に更新された「一人暮らしは不便」というコラムが話題になっている。

女印良品「一人暮らしは不便」
http://www.lovepiececlub.com/lovecafe/mejirushi/2014/06/09/entry_005173.html

電車の中で、二人連れの年配女性から聞こえてきた会話に田房さんは釘づけになる。片方の女性の息子が一人暮らしを始めたらしいのだが、その息子は家事をするのが大変だから「一人暮らしは不便だ」と主張しているという。それに対してもう片方の女性は「家政婦雇うしかないんじゃない」とアドバイスする。


そのやりとりに田房さんは愕然とする。まず、家事を一人でしなきゃいけないことを「不便」という言葉で表現することに驚く。「不便」という言葉からは、家事は本来俺がやるべきことじゃない、というニュアンスが感じられる。自ら家事をやる、という発想を持たずにいてもそれを責められることのない人の言葉だ。

この息子が結婚したら、と想像を膨らませる田房さんが真っ先に思い浮かんだのは「嫁に息子の栄養管理を頼む姑」の図だ。田房さん自身も、結婚する際に姑さんから夫の健康管理を託された経験があり、家事スキルのレベルにかかわらず、妻は夫の健康管理をするのが当然という風潮に疑問を呈している。

もしこれが息子ではなく娘だったら、「家政婦雇えば」ではなく「家事教えとかなきゃダメじゃない」になっただろう、とも指摘する。

コラムの最後には、「『目玉焼は半熟な』と妻に言いながらご機嫌で朝食をとる夫と、泣く赤ちゃんを背負ってやつれた様子で夫の要望に応える妻」というイラストが載せられており、「妻がいる生活は便利だな♪」の文字がなんとも言えない恐ろしさを醸し出している。

このコラムに対してツイッター上では
「確かに娘だったら対応が違っただろうね。妻って家政婦なのかな」
「結婚相談所の広告で“コンビニ飯を食べながら『嫁さん欲しいなあ』とつぶやく男性”を思い出した」
「産後クライシスを的確に表現したイラストだね」
「男女関係なく、自分の世話は自分で出来るようにならないといけない。育てる方もそういう意識が必要」
「私の家でも家事をやらされるのは女の子どもだけだった」
「こういう男がけっこう多数派のように思うんだが。家事を女に丸投げする男」
「自分のことは自分でやって当然、ってどうして思えないのか不思議だ」


家事を母親にやってもらう男性、妻に丸投げする男性の目撃談や、あるある~と共感する声が多く見られたが、男性とみられるアカウントから「妄想がすぎる」というコメントも寄せられており、この認識の差は越えられない壁のように感じた。

女は男の世話をしなきゃいけない、という幼い頃からの刷り込みから抜け出すのは、男性はもちろん、女性でも難しい。負担が大きい女性の方がおかしさに早く気付くということなのだから、できれば積極的に、「これはおかしいことなんだ」と主張していくのが望ましいと思う。
そしてこのおかしい風潮を次世代に引き継がせないことが、私たち子育て世代の使命なのではないだろうか。

山本 佑美山本 佑美
フリーライター。在宅テレビ評論家。インターネットを軸として結婚、出産、子育てにまつわるあらゆる情報を収集、分析、発信している。自宅を中心に精力的に活動中。家族は夫と2歳の娘。江東区在住の愛鳥家。うずらとインコの飼育経験有り。