先日、せたがやこどもプロジェクト2014「日野皓正 presents“Jazz for Kids” 10th Anniversary Concert」を観賞してきた。

日本を代表するジャズトランペット奏者・日野皓正氏を初めとするジャズミュージシャンたちによるライブ、そして世田谷区内の中学生たちにより結成され、日野氏がそのワークショップの校長を務める“DREAM JAZZ BAND”によるコンサートで構成されるプログラムだ。


2005年から始まったこの取り組みが今年10周年を迎え、その記念公演という名目でもある今回のコンサート、友人から「面白そうだから見に行ってみない?」と誘いを受けてホイホイと付いていった。

今年も夏フェスには行けそうもないし、とにかく音楽の生演奏が聴きたい!ライブが見たい!という気分だったので、子どもたちが出演するということはあまり意識しておらず、というかほとんど主旨を分かっていない状態だったのだが、予想をはるかに上回る本格的な演奏に驚いた。

中学生たちによる“DREAM JAZZ BAND”は、オーディションで集まったメンバーが練習を始めたのは4月末らしく、初めて楽器を触る子どももいるのだが、とても結成から数ヵ月とは思えない出来栄えで、こんなに吸収力があるなんて!と若さにひれ伏したくなった。

ビッグバンドらしくソロパートもふんだんに盛りこまれ、緊張した面持ちでソロに臨む姿にはこちらまでハラハラ。これは親御さんは気が気でないだろうな……と辺りを見回してみると、それぞれに頬を緩めるご両親の顔があり、何だかいいもの見たな、と温かい気持ちになった。

アンコールでは日野氏が観客として座っている子どもをステージに上げて、マラカスをアドリブで振らせる場面も。突然のことに戸惑いを隠せない子どもたちをアゲていく日野氏はまさにプロの技で、最後は照れながらも楽しそうに演奏している様子に、これまた胸アツになってしまう赤の他人こと私であった。


想像以上にいいものを見てしまったので、やはり自分の娘と重ね合わさずにはいられない。
「娘があのバンドにいたらどんな感じだろう……どのパートかな?!」

妄想が先走りすぎているかと思ったら、友人も、「自分に子どもがいたらどうかなって考えてた」と同意してくれた。


そもそも子どもの習い事にほとんど興味がなく、前向きに考えたこともなかった私。
私自身は小学生のときからほとんど毎日のように習い事に通っていて、それらはすべて親が決めたものであった。

「○○習ってみたい?」と聞かれたこともなかったし、当時は聞き分けのよい子どもだったので、親が決めたことに逆らうという頭もなく、ただただすすめられるままにピアノや水泳や公文に通っていた。

その反動というわけでもないのだけれど、30歳になった時に、自分のやりたかったことを始めてみようとクラシックバレエの教室に通い始めた。

学生時代にダンスをやっていたので、多少かじったことはあったのだが、改めて習いたいと思い、始めた大人バレエ。幼少期に半ば強制的に取り組んでいた習い事よりも自由度が高く、自分の稼いだお金でしたいことをする解放感も相まって、事あるごとに「大人バレエ最高、やっぱり習い事は自分のお金でするに限るわ!」と熱弁を奮っていた。


月謝を払うのは誰か、誰の意思でその習い事をするのか。子どもの習い事と大人の習い事の違いを感じるのはおもにその二点だ。
その違いを実感すると同時に、「結構な月謝を長い間払い続けてもらったのに、何者にもなれなかった」と自分を負い目に感じていたことに気づく。

親がそこまで私に期待していたのかは分からないし、正味の金額を計算したわけではないけれど、1ヵ月にどれくらいかかっていたかは何となく分かる。何せ当時は月謝を毎月手渡ししていたし。

とくにピアノは幼稚園から始めて小学校に上がると週に2回、それが中学を卒業するまで続いたので、計算すると……イヤ、やめておこう。

とにかく、子どもの頃の習い事は楽しさよりも複雑な思いが勝っていて、いい思い出があまり残っていないのだ。いつの間にか自分の中で、「子どもに習い事をさせる=親のエゴを押し付ける」という解釈になっていたようで、我が娘に対しても習い事はせめてこの子が何かしたいと言い始めるまでは考えなくていいやと思っていた。

今もその考えは大きくは変わっていないのだけれど。


しかし、子どもが自ら「私はこれがしたい!」と好きなものを見つけ出すのもなかなか難しいのではないか?

友人の子どもは浅田真央選手にあこがれてフィギュアスケートを習いたいと言い出したらしいのだが、そんな風に言える子は少数派なのではないだろうか。

であれば、まだまだ見えている世界が狭い子どもにこんな道があるよと示してあげるのは親の務めなんじゃないか?と、ごく当たり前のことだけどようやく気付いたのだった。


先日のコンサートに出演していた子どもたちはみんな一様にキラキラしていたけれど、動機はきっと一人ひとり違うのだろう。

自分からジャズバンドに入りたい!と思った子も、親にすすめられて何となくな子もいるだろうし、もしかしたら友だちに誘われてオーディションを受けたら自分が選ばれてしまったなんて子もいるかもしれない。

数十人いる大所帯で全員がこのままジャズのプレーヤーを志すということもないだろうし、これっきりになってしまう可能性だってある。

ただ、家庭と学校以外に自分の居場所を作るということが子どもの自立の足がかりになるということ、楽器やスポーツの習得だけではなく、経験値を上げるという副産物も含めての習い事だなと気付き、ちょっと考えを改めてみようかな、という境地に。

娘にはたくさんのものを見せてあげたいとずっと思ってきた。本も映画も音楽も、早く外国にも一緒に行きたい。習い事も同じように新しい世界に触れるきっかけなんだ、そう考えたらいいんだ。

お金をかけて習うからには、上達するにこしたことはないのだけれど、そればかりに固執しても辛くなるだけ。それは親も子もそうだろう。

母も私にそれくらいの気持ちでピアノを始めさせたのかもしれないな。いや、だとしたら週2回も通わなくていいはず……もうこの件を追及するのはやめておこうか。


娘は現在1歳8ヵ月。すぐに習い事を始めたいという月齢でもないので、あと1~2年はのんびりと考えてみよう。

でも来年もコンサートが開催されるなら、またぜひ子連れで行ってみたい! ちょっと気が早いけど来年の夏を楽しみにしている。

真貝 友香(しんがい ゆか)真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。


【関連アーカイブ】
今どきの習い事考 ――大切なのはなんだろう?
http://mamapicks.jp/archives/52151562.html
共働き家庭、幼児教育を考える
http://mamapicks.jp/archives/52149096.html