筆者は1歳の娘と日々戯れる、元システムエンジニア。現在は専業主婦です。
最近よくある話ですが、「子どもが産まれるまでは“仕事バリバリ人間”」だった私。

なぜ今、専業主婦なのか?

退職交渉を進めていた最中に、急遽妊娠。出産日間近に退職。無職で出産に突入しました。とはいえ、「出産したらすぐ働くよ!」と、家族にも周囲にもウキウキ話していました。

ところが、産まれてみると……

「子どもと離れたくないです」

なんだこの感情は……これが、母性……? これまでの自分、「仕事人間」の価値観、大きく揺さぶられました。

大きく激しく揺さぶられながらも、

「個としても社会に関わりたいよ!」

長年染み込んだ価値観は、そう簡単にゼロにはなりません。何より、女性の地位向上に奮闘した先人たちあっての「女性の自己実現」ですから、そんな簡単には諦められません。

とはいっても……

入社を受け入れてくれる企業はいくつかありましたが、「預ける保育園を決めてくださいね」。たとえば保育士になっても、我が子は自分の働く園と別の園に預けなければいけない。

そうだよね、親が働くには、子どもは保育所に預けないとね……。
子どもは、大人の邪魔にならないところで遊ばせないとね……。

うん、うん、そうだよね……。

■いいえ、子育て・仕事、両取りしたいんです。


「子連れ出勤」
そんなキーワードで、街とインターネットをさまよう日々が始まりました。現在は、「モーハウス」や「サイボウズ」といった先行する子連れ出勤制度運用の記事などが上位ヒットします。

また、東京・荻窪の「babyCo」など、“子連れコワーキングスペース”という新しい場づくりがされていることも知りました。東京・調布の「Polaris」が、企業の案件を母親の空き時間でまわす仕組みを作っていることも知りました。

そして何より、

「子育てもしたいけど仕事もしたい」

この心境を知り合ったママさんたちに話してみると、復職するママでも色々悩んでいることを知りました。

「本当は離れたくない」「週3日勤務にしてもらう予定、これなら子どもと自分の気持ち、仕事との折り合いがつくかな……」

がんばって仕事をしてきた女性。
子育てと仕事の間で、多くのママが揺れている。

■みんなでやったら家事楽チン 「みんなでやったら」……?


ある日、知り合ったママたちと我が家でランチ会をしました。
一緒に遊んで子どもたちも楽しそう、自分も含めママたちも楽しくデザートまで満喫、食事の準備も洗い物も、お互いに子どもを見ながら充実した時間を過ごせました。

一方、子育て支援センターに行くと時々、自分の子どもだけをじっとボンヤリと見つめている、または子どものそばでスマートフォンをずっといじっている、そんな親御さんもいます。

「みんなでやったら、もっと色々なことができるのでは?」
「お互いに子どもを見ながら、ママたちで仕事もできるのでは?」
「そうしたら、子育てはもっと楽しく、ママたちの笑顔も増えるのでは?」

安易な発想ですが、そんなこと――「みんなで色々やってみよう」をトライできる場所が欲しい、と強く思いました。

親が子どもと一緒にいろいろできる場所、そして仕事もできる場所。
できることなら、親子以外の人も一緒に利用できる場所、社会と親子がつながる場所。

■子連れでカフェ運営、チャレンジの場が見つかった!


「子連れで、そんな場所づくりにチャレンジしたい!」

周囲に声を上げながら場所を探していたところ、東京・四ツ谷のとあるカフェスペースを月曜日だけ貸していただけることが決まります。

こうして毎週月曜日、合計5日間の「子連れでカフェ運営」トライアルが始まりました。それが私たち「オヤタマゴカフェ」の始まりでした。


「どんなことにぶつかった?」
「どんなことがあったら嬉しい?」
「それは皆で解決できるかな?」

オヤタマゴカフェが
そんなことを話し合っていける場、
そんなことにチャレンジしていける場
になったらいいなぁと思っています。

私はこのカフェでまず
子育てと仕事の両立「子連れカフェ」にチャレンジします。

あなたの「ぶつかり」を教えてください。
あなたの「チャレンジしたいこと」を一緒にやりましょう。


最初は「とりあえずの場所」が見つかったことに舞い上がってしまい、あれもしたい、これもしたい、周囲のママにも相談しながら、どんどんアイデアが浮かんでワクワクしていました。

が……

■やってみて分かった「良くなかったこと」


一番良くなかったことは、「周囲への事前確認を怠ったこと」。
今回「使ってみたら」との嬉しい申し出、隣の方とも面識があったことに甘え、その他の周囲への事前確認がしっかりできていませんでした。

そのため盛況だった営業3日目にして、「赤ちゃんの声が気になる」のお声をきっかけに、場所の継続を断念することになりました。

子育て中だから気づきにくくなっていた、赤ちゃんの声。
「赤ちゃんの声は騒音ではない」ではなく、ちゃんと事前に周囲に確認し、了承をいただくべきだったと反省。

ちなみに場所の継続断念には、「もっと広さが欲しい」「月曜日以外も使いたい」の2点も大きな理由となりました。

「もっと広さが欲しい」……サラリーマンの方々も店内でランチ利用してくれて、とても嬉しかったのですが、逆にサラリーマンが店内を占め始めると、子連れたちの居心地が悪くなる。広い場所だったら、子どもたちの遊ぶスペースももっと広く取れるでしょう。

「月曜日以外も使いたい」……子連れママを仕事として拘束する場合(キッズスペースがあっても)子どものために「1日の稼動は2~4時間」がベストだと感じました。

「週に1回6時間」ではなく、例えば「週に3回2~4時間」という形のほうが、いいかもしれない。

■やってみて分かった「良かったこと」


なんといっても、ママたちの反応。
オヤタマゴカフェに来てくださった方々の声と笑顔。
オヤタマゴカフェ宛にいただいた応援メッセージの数々。

「こういう場所が欲しかった」
「みんなでやってみようという言葉、染みる」

改めて生身のママたちに触れられたことが何よりの「良かったこと」。
(そして、続けて形にしていきたい、と思えました)
周囲に赤ちゃんの声が気になってしまったのも、盛況の裏返しでもあり……。

それから、子連れカフェにも関わらず、近隣のオフィスワーカーの方々が看板を見てお店に寄ってくださったこと。

「社会とつながる(親子だけで孤立しない)」方法は工夫しつつも、このポイントも実現できたらと思っていたので、利用してくださったお客様の勇気にも、感謝です。

お試し企画「みんなで夕食を作って持って帰ろう」も好評、初イベントで運営はドタバタしていましたが、「みんなでやってみよう」。色々な企画を改善しつつ続けていきたいな、とここでも思えました。


■「オヤタマゴカフェ」は続くのか?


気持ちは一択、「オヤタマゴカフェ」を続けたいのです。
もちろん課題はありますが、その試行錯誤も含めて続けていきたい。

ただ、残念ながら「適した場所探し」のフェーズに戻ってしまったのが現状です。

新宿区/千代田区/文京区、このあたりでもし「この場所はどう?」「ここに空き家がある!」など、心ある方のご一報を心待ちにしています。

ちなみに世田谷区では、「空き家」を地域貢献に活用するための取り組み「世田谷トラストまちづくり」が行われているそうです。この素敵な取り組みが、あちこちに横展開されてほしいと願っています。

これまでも多くの先人が奮闘し、「女性の労働」「産休育休」「親子ひろば」等々ができていきました。社会に不足しているもの、もちろん子育てだけに限らず、不足している状況に適応するのではなく、みんなでチャレンジしていくことが大事だと思うのです。

少子化なのに、
保育所が足りず、保育士も足りず、
乳幼児虐待のニュースや産後離婚は減らず、
女性は輝く前に疲弊してしまい、
何かが足りていない?

社会の継続にとって一番大事な「子ども」。
その子どもを育む親が生き生きとしていられる社会。
親が笑顔でいられたら、子どももきっと笑顔でいられる。

「私は子育てに専念する」
その選択も良いと思います。

「私は保育所を利用して仕事する」
その選択も良いと思います。

第三の選択として、
「私は子どもと一緒にできる範囲で仕事をする」
これが、スペシャリストなママでなくても選べるような選択肢になってほしい。
「オヤタマゴカフェ」第一の目標です。

オヤタマゴカフェ
http://oyatamago.blogspot.jp/

はしもと かな
1978年生まれ。保育士資格勉強中の元システム屋。愛知から東京へ。2013年に長女を出産後、「子どもと一緒に働ける場所がほしい」と思い立ち、子連れでのカフェ運営「オヤタマゴカフェ」にチャレンジ(現在は適した場所探しのため一時休止)。