筆者が次男を出産し、なんとか母子同時退院となった今年の3月。

たった10日留守にしただけと思っていたのだが、あまりに小さくか弱い新生児と濃密な時間をともにしていた私は、帰宅した際にちょっとした違和感を覚えた。

「あれ、なんか長男がデカい……」


クラスではお世辞にも大きいほうとはいえない4歳長男。
ちょっと見ない間にものすごく背が伸びてしまったのだろうか。顔もなんだか大きくなっている気がする。体格もすらっとしてしまって、幼児らしいポチャポチャしたところが抜けてしまったような……?

子どもの成長って、早いな……。
そう思って数日過ごしていたのだが、それはある日突然訪れた。

<上の子をかわいく思えない。>

そんなバカな、と思った。
いつものようにイヤイヤをして、いつものように支度が遅く、いつものようにふざけている。前とおそらく変わらない長男の姿に、ものすごくイラついてしまった。

出産前だって、それなりに怒鳴り散らしてはいたものの、最終的には「ああ、しょうがないなあ、こいつは」と、どこかで受け止めていたつもりだった。
しかし今は、まったく受け止める気になれない。

そのことに気づいて、自分のことが恐ろしく思えてしまった。
いったいこれは、どうしたことだろう。

■「上の子かわいくない症候群」を分析してみた


そんなおり、ネットで「上の子かわいくない症候群」という言葉があることを知る。
そうか、一種の“二人目あるある”なのか、と思うとほっとする反面、そろそろ大人になっても記憶が残るだろう年齢の4歳児を考えると、今のうちになんとかしないとなあ……と思うのだった。

そういえば先日出た長男の保護者会で、クラスのお母さん方が“下の子出産ラッシュ”ということから、「きょうだい育児について気をつけたほうがいいこと」をテーマにディスカッションをしたのだった。

その中で「とにかく上の子を優先する」という対処法があったのだが、まだ産後の傷も痛く、抱っこもできないし、お腹を蹴られるのが怖くて添い寝もできず、一緒に遊ぶには体力がなくなりすぎていて、結局何ひとつできていなかったのだ。

こういうときはとにかく感情を排除して、論理的思考だ。
上の子をかわいくないと思う原因となりそうなものをとりあえず書き出してみた。

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・物理的にデカい
・赤ちゃんを守ろうとする防衛本能
・比較対象ができることによる心の変化
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やはり、小さいものをかわいいと思うように人間というのはなにかインプットされているのだろう。“すごく小さい人”と“どちらかといえば小さい人”を比べたときには、より小さいほうがかわいく見えてしまうのかもしれない。
これは本人がどうこうというレベルを超えている。

防衛本能については、次男が生まれてすぐにいろいろと体調に不具合があったため、まるで「ワレモノ注意」とシールが貼られているかのように過剰に守ってしまうフシは、元気になった今もまだあるのだ。

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・赤ちゃんは笑おうが泣こうが大人の都合のいいように感情を受け取れる
・4歳には自我がある
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みなさんは「赤ちゃんアテレコ」というのをやったことがおありだろうか。
まだしゃべることのできない赤子が、喃語で「あ~」とか「う~」とか言っているさまを見て、大人が勝手に「おなかちゅきまちた~」「ぼくのおもちゃ、とらないでくだちゃ~い」などとアテレコすることである。本人がそう思っているかどうかはさておき、大人が勝手にアテレコして遊ぶことができる。

自我がめばえ、自ら発言する年齢になるまでは、大人の都合のいい解釈で子育てはまあまあ楽しめるということでもあるのだ。もちろんアテレコでは、こちらが傷つくようなことを赤子は言ってこない。

それに比べて4歳長男である。

クラスの中でもかなりおしゃべりなほうで、たくさんの言葉を知っている。しかし、使い方が雑であったり、間違って覚えていたり、説明がまだ上手にできないので、伝えたい熱量に対して彼の持っている言葉が追いつかず、鼻づまりでなにをしゃべっているのかわからないときも多いので、お互いにいつもイライラしてしまう。

あきらかになんらかの意思を持って発言しているが、伝わらない、もしくはずうずうしい要求であったりする。

■「上の子かわいくない症候群」その対処法を考える


試行錯誤しながらも、なんとか「上の子かわいくない症候群」が解消できないか、いろいろ試してみることにした。


【1】とにかく別行動

兄弟を並べるからそこに軋轢が生じるのだ、ということで、とにかく土日に二人を離してみることにした。

「上の子優先」というアドバイスに従うなら、私が兄のほうを、夫が下の子を連れて出ればよかったのだが、母乳と体力的に夫×長男、私×次男という構図になる。しばらくそのフォーメーションに慣れてしまうと、たまに4人そろって出かけたときの精神的疲労がハンパない。

結果として、私が長男にイライラして怒鳴り、超不機嫌になってお出かけ終了、という悪循環を生んだ。このあたりから長男の口癖が「あ~、おとなに、おこられないで、いきていきたいなあ~」になる。


【2】上の子を抱っこしてみる

次男が大きくなってくるにつれ、重たいものを抱っこできるだけの腕力が戻ってきていた。体調がいいときに長男を抱き上げてみたが、16キロはまだいけると確信。なにかにつけてとりあえず抱っこ、というソリューションを思いついたのだ。

最初こそ「やめてよ~」「いいよ、おもいから~」と逃げ回っていた長男も、だんだん遠慮なく抱っこされるようになり、顔を見ると満足そうに微笑んでいる。

ああそうか、4歳って、保育園にいるともう5年目でベテランの域だけど、幼稚園で考えればまだ1年目か2年目の新人さん。それ以前に、この子だってまだ小さい子どもではないか。

「早く大人になればいいのに」と願われ続けて子どもらしさをどこかに置いてきた結果、成人してから揺り戻しが来るパターンを一番知っているのは、自分自身ではなかったか……。


【3】「めんどくさい」をあきらめよう

育児の大半は、大人がめんどくさがったことがブーメランで自分に帰ってくる気がしてきたここ数ヵ月。そのちょっとの手間を惜しんだことで余計にてこずるくらいなら、最初から余分に手をかけていたほうがいいのかもしれない。

・めんどくさくて子どもへの説明を端折った
・めんどくさくて返事をなあなあにした
・めんどくさくて支度を手伝っちゃった
・めんどくさくて「うるさい!」って言っちゃった

何パターンもバッドケースをシミュレーションして、想定されることを注意してもその穴をついてなにかやらかすのが幼児である。

事前にいろいろ注意すると「うるさいなあ、きいてるよ」と生意気な口をききはじめた長男。それでもめんどくさがらずに繰り返し繰り返し、大事なことは都度落ち着いて伝えていくことで、数年後なんらかのリターンがある……といいなあ(期待はせずに)。

ハイリスク・ローリターンでもいいではないか、そこに健康で元気な命があるのなら。

■かわいいと思えない、その正体は


先日、兄弟を連れて小児科に行った。
地元のかかりつけ医は、まるで近所のおっさんのような立ち位置で接してくれる。

次男を診察しながら医師は言う。
「お兄ちゃんもかわいいけど、こいつもかわいいよな」
次男のほっぺを雑にプニプニし「ほら、笑え!笑え!」とかまいながらこう続けた。
「こっちはまだ、お人形みたいなかわいさだもんなー」

……そうか、「かわいい」のジャンルが違うのか、と気づいた。

ただいるだけで小さくてかわいい0歳児と、いろいろ世の中のこともわかってきて、しつけも必要なフェーズになった4歳児。

同列に並べてどっちがかわいい、かわいくないという話ではなく、前提が違うのだ。


フォーマットなどいっさい通用しないのが育児ではあるが、筆者が個人的に感じた「上の子かわいくない症候群」の対処法を以下にまとめてみた。

・上の子をたくさん抱っこしてみる
・大人が「めんどくさい」をあきらめる
・上の子だって思っているより大人じゃないことを忘れない
・鍛えよう

とりあえず体力さえあればいろんなことは乗り切れる気がしたので、「鍛える」という項目を追加した。


ゴールも見えてきたところで、筆者はさっそく長男を抱っこし「弟もかわいいけどお兄ちゃんもかわいいね。どっちもかわいいよね」と言うと、「『かわいい』じゃないでしょ、『かっこいい』でしょ」と訂正させられた。

いるだけでかわいい、笑ったらキャー!寝返り打ったらワー!と騒がれる新世代アイドルがやってきた今、長男は今までの“売り方”では勝てなくなっている。

もう見た目の「小さくてかわいい」ポジションを弟に明け渡してしまったし、カワイイを卒業してカッコイイを目指さねばなるまい。そのことを本人が一番理解していたのだろう。

「上の子かわいくない症候群」というのは、もしかしたら「上の子かっこいい症候群」の前段階でもあるのかもしれない。

【続編】2年後の後日談
きょうだいを“平等にかわいがる”の難しさ ――「上の子可愛くない症候群」その後
http://mamapicks.jp/archives/52225758.html


ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。