保護者会の時期がやってきた。学童にも保護者会がある。学校と違って平日の夜にスタートするから、長引けば夜の8時を過ぎることもある。その遅い時刻に、子どもが見守りで遊んで待っていたり、小さな弟や妹たちが、大人と一緒にいたりもする。そんな光景にもだいぶ慣れてきた。

でも、実はこれ、私は初めて参加したとき軽くカルチャーショックだったのだ。

■幼稚園→学童で感じた「違い」


学童を利用する人は、圧倒的にもともと保育園だった人が多い。

私は幼稚園に通わせながら仕事を再開してしまい、小学校+学童で初めて長時間保育を経験したので、保育園カルチャーを知らない。だから最初、軽いアウェー感とともに、ささやかな緊張もしていた。

保護者会のようなオフィシャルな会合が平日の夜に開催されることも、自主的な親の集まりが子連れOKで夜に設定されることが多いのも、初めてのことだったのだ。そもそも乳児や幼児、ついこの前まで幼児だった小さな小学生が、「大人の会合に付き合って夜遅くまで外にいる」状態を、まったく見慣れていなかった。

なんだか、手馴れていて、かっこいい。でもそうか、こういうことなのか……。


■幼稚園的時間と学童的生活のギャップ


幼稚園の頃は、5時台に夕食の準備、6時~6時半に夕食、7時ってもう完全に「夜」、8時すぎて外にいるのはかなり特別な日……というくらいの時間感覚。このペースでようやく8時台、9時までに寝かす、という理想が実現する。ひとつひとつ促し、のんびり進むからこれでも相当ギリギリ。

小学生になり、学童で子どもが夕方まで過ごせるようになって、仕事時間的にはものすごく助かった。短い在園時間と夜中で仕事をこなすのはかなりきつかったから、もう「小1のパラダイス」と呼びたいありがたさ。

でも、6時近くに学童に迎えにいってから夜の家事をスタートすると、もう、どうにも夜が遅くなるのに困惑した。宿題チェックなどやることは増える、夜のスタートは遅れる、寝るのが遅くなる……。

ちょっと待て、これって一般的には、預かり時間が足りない「小1の壁」と呼ばれる状態なんだよなぁ。つまりこれ、保育園生活だともしや、乳幼児の頃から子どもがものすごい夜型生活をしないと生活が成り立たないんじゃないだろうか……。

■保育園と幼稚園の感覚的スタンダード夜時間


どんなに家事を省略しようが、手のかかる年齢の子どもに、夜必要な生活項目をやらせるだけで、結構時間がかかる。親の「夜家事スタート時刻」が遅くなれば、当然子どもは夜型になるだろう。

仕事のない幼稚園の親の方が時間的に早くスタートを切れるし、保育園だと遅めスタートになる。それぞれ、なんとなく「○時には寝かせたい」というスタンダードがあるとしたら、幼稚園的時間感覚が「9時」、保育園的時間感覚は「(タテマエ9時でも)10時」っていうくらい、まず、ベースの開きがある。

それに加え、精神的な感覚で大きく違いがありそうだ。

■幼稚園的な敏感さには理由がある


幼稚園の親の方が、夜子どもが出歩くことへの抵抗感も強い傾向がある。この敏感さや厳格さは、「子どものため」と評価されそうだけれど、むしろ「やっとできたリズムを崩したくない」という意識の強さが根っこにあると思うのだ。

乳幼児期に睡眠リズムが出来て、夜が「まともな夜」になるまでっていうのは、かなりの道のりだった。本当に、子どもって自動的に夜寝るようになったりしないのだ。

昼夜なきエンドレスの授乳生活から始まり、夜11時12時の授乳後にかろうじて、「少しだけ長め」の夜間の睡眠が出現しはじめ、それが8時9時に安定したのを越えて、ようやく、「寝かしつけ」レベルに昇格。

それでも夜中、繰り返し起きるなんて当たり前、かつ、早朝に起きて元気に動き回る……。ようやく夜まともに眠るようになり細切れ睡眠から解放されたのは、もう、いつのことだったやら……。

就園前の乳幼児期を子どもとべったり生活していると、朝や昼からもう夜の睡眠のことを想定して計算して、遊びと昼寝と外出との配分を調節して……という、「子どもの生活時間調整で頭の中がいっぱい」の日々をたいてい過ごしている。子どもの生活リズムを「自分が作り上げた」という感覚が強い。

やっと出来上がったものを「崩したくない」のだ。苦労して完成させたトランプのタワーを「ノリ付け」したくなるような感じ。

だって本当に夜のまともな睡眠に至るまで、長い道のりだったんだ……。もう、せっかくできあがったから壊すのが「もったいない」し、また作り直すなんてもう、「面倒」!

■保育園的な寛容さ


保育園的時間感覚には、そういう神経質さがなくて寛容な気がするのだ。考えてみれば、リズムがまだ出来上がらない頃に保育園生活が始まると、そういう睡眠リズムの形成を、ため息つきながら目撃しなくてすむ可能性が高い。だから「崩すのがもったいない」感覚は、弱くてすむだろう。

日中の子どもの時間管理がない分、「いつの間にか」夜ちゃんと寝るようになった、という「自動的な変化」に思えて、神経質にならず寛容になれるという可能性もある。

ただ、夜間睡眠が安定しない頃の「赤ちゃんってなんだか夜遅くまで元気」なイメージのまま、保育園スタートで幼児期に入ると「夜元気そうだからまだ寝なくて平気?」と「寛容」が「ルーズ」に変化する危険性もゼロではないから、それだけは要注意かもしれない。

■時間感覚の違いを互いに参考にできたら!


まともな時間にたっぷり睡眠をとることは、幼い子どもの心身の発達にはうんと重要なことで、これはシンプルに、発達のために大切なことだろう。そして、それは保育園の親でも幼稚園の親でも誰だって大切に思っていて、プレッシャーにも感じる。

でも、親の時間感覚の「心の壁の高さ」のようなものは、こんな風に、意外と、幼/保で差が出やすいと思うのだ。どっちが正しいのでもどっちが優れているのでもなく、単なる「違い」。


私は子どもの年齢が上がったことや学童ありの仕事の仕方に切り替えたことで、今でこそいろいろなパターンが当たり前になってきた。今から思えば、諸条件はあるにせよ、まじめすぎ、イレギュラーなことをやらなさすぎの乳幼児期だったと思う。

厳格すぎて許容範囲が狭すぎるのもきゅうくつで機会損失だし、寛容すぎてルーズになりすぎるのは子どもの健康に悪い。適度にきちっとかつ適度に寛容、なところにいられたら理想的だなぁ……そのバランス感覚が一番難しいのだけれど。

皆さんは今どの辺りにいるだろうか? こんな幼/保の傾向をちょっと意識しておくと、自分の「行き過ぎ」予防や、幼/保の親間の「常識のすり合わせ」に役立つかもしれない。

狩野さやか狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。