「子連れ出勤」という働き方を、テレビやネットメディアで目にすることが多くなった。
そもそも子連れ出勤とはどういうものなのか。

かくいう筆者は子連れ出勤を始めて1年が経ち、この新しい働き方に可能性を感じることも多い。ネットでは賛否両論、どちらかと言えばまだまだ否の方が多い子連れ出勤について、ひとりの当事者として考えてみたい。


子連れ出勤と一言で言ってもさまざまな視点があると思うが、会社、同僚、親、子ども、それぞれの立場では、子連れ出勤とはどんなものだろうか。


まず“会社”は、子連れ出勤を導入するとき、初めにそれを検討、決定する立場にある。
子連れ出勤を検討するということは、この取り組みが少なからず会社にとって利益につながることだと判断するのだろう。

私がこれまで聞いた導入事例で最も多いものは、中小企業が人材不足によってチャレンジに踏み切るというケースだ。さらに、子連れ出勤ができることを前提に人材募集をすると、ほぼコストをかけることなく、短期間で応募があるのだという。

ただし前提として、子連れ出勤はまだまだ馴染みのない取り組みだし、従業員の中にはどうしても子どもが苦手だという人もいるかもしれない。さらに、導入後は現場から環境改善の意見が出てくることもあるだろう。

会社が子連れ出勤を導入する際には、メリットだけを見ず、従業員に意見を聞くこと、そして導入後も放置せず、適宜社内にヒアリングや改善を続けていくことが重要になってくるように思う。


次に“同僚”である。同僚は、子連れ出勤が導入されることで最も影響を受けることになる。
子連れ出勤に対しては、その同僚自身に子どもがいるかどうかという点で捉え方がおそらく分かれる。子どもが初めて会社に来たときから、それまでと同じスタイルで仕事をすることが難しくなる人、意外と変わらないという人もいる。それは会社の環境や子どもとの物理的距離によって生じると思う。

また、子どもの親が元々同僚だった人か、新たに採用された人か、という点はとても重要だ。子どもの相手をする際も、その親との関係性がないと、聞きたいことが聞けない、言いたいことが言えないなど、現場でコミュニケーションの難しさを感じることが起こりうるからだ。

子連れ出勤スタイルの最前線にいる以上、さまざまな工夫を凝らしていかざるをえないが、それが主体的なものであってこそ、子連れ出勤を成功させるカギになる。


そして“親”は、会社においては会社の従業員であり、子どもの保護者となる。
働くことはもちろんだが、子どもの安全をはじめとするさまざまな出来事に気を配ることが求められる。

親と言っても、雇用形態や、産前からその会社で働いていたのか、新たに雇用されたのか、といった点によって状況は大きく異なる。

子連れ出勤のメリットとして、仕事のブランクが開かないことや、保育コストがかからないこと、乳幼児期に親子が離れず過ごせること、社会との繋がりができる、ということがメリットとして挙げられることが多い。

けれども、おそらく確実に落ちるであろう会社業務での生産性をどのように折り合わせるか、制度面だけでなく、現場でどのように受け入れられるのか、といったソフト面でのフォローが、継続的な取り組みになるかどうかのポイントになる。

子連れ出勤を始める際には、“会社がどのような働き方を求めているのかに合わせるのではなく、子どもの状態に合わせた出勤スタイルを会社とともに作り上げていく”というスタンスで取り組めるかどうかが肝になると感じている。


最後に“子ども”だが、たとえば乳児から10歳前後の小学生ではまったく事情が異なる。
しかしながら、親のそばに居て仕事をする姿を見られることや、親や教師以外の大人との交流は、子どもにとって良い影響が多くあると実感している。いつか私の子どもが何かに悩んだとき、相談相手として職場の同僚を選ぶ日が来ることも不思議ではないと思っている。


共働きの親にとって、育児は幼児期の待機児童、小1の壁、夏休み、学童の待機から、急な怪我や病気による日々のことまで、多くの場面で託児問題に直面する。

女性が生涯仕事を続けていくうえで、妊娠・出産は決して珍しいものではないのに、現状では育児か仕事か選択せざるを得ないか、またはその狭間で毎日を何とか切り抜けている人が多い。

私は子連れ出勤に可能性を感じている一方、すべての人が行なうと良いとは思っていない。あくまで働き方のひとつの選択肢として定着するようになることが理想だと感じている。

望月 町子
リクルートや大手飲食チェーンでマーケティング職を経験。切迫流産の診断を受けたことで妊娠初期に会社を辞めるも、産後は子どもが1歳半になったころから“子連れ出勤”を開始、日々をブログ「1歳からの子連れ出勤」に綴る。夫と3歳になる娘の3人暮らし。