毎年発表されて恒例となっている、生まれ年別の子どもの名前ランキング。
この調査の老舗である明治安田生命が発表した2015年の結果によると、日本では男子は「大翔」くんが4年ぶり7回目、女子は「葵」ちゃんが8年ぶり3回目のトップに返り咲いたそうだ。

この「大翔」くん、筆者は読み方がわからず検索してみたところ、「ひろと」「やまと」「まさと」など、調べただけでも8通りほど読み方があるそうだ。

表意文字である漢字を使って名前に意味を持たせることができるのは便利だと思うのだが、アメリカではどのように名前を選ぶのだろうか。

米国の育児情報サイト、『BabyCenter.com』が発表したユーザによるランキングでは、2015年は男子は"Liam"、女子は"Emma"が、それぞれ1位となった。
Popular Baby Names for 2015|BabyCenter
http://www.babycenter.com/popularBabyNames.htm?year=2015


Liamはアイルランド系の名前で、名付けのお役立ちサイトである nameberry.com によると、北アイルランド出身の人気俳優、リーアム・ニーソンの人気が関係しているとか。ちなみに、アメリカでアイルランド系を称する人の人口は、本国アイルランドの人口の実に7倍となっているそうだ。
The Irish-American population is seven times larger than Ireland|The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2013/03/17/the-irish-american-population-is-seven-times-larger-than-ireland/

さらに調べてみたところ、米国の社会保障局にある過去100年間の名前のデータベースでは、2014年は男子は"Noah"、女子は"Emma"が、それぞれ1位だった。
Top 10 Baby Names for 2014
https://www.ssa.gov/oact/babynames/

ちなみにノアは、有名な旧約聖書に登場するノアの方舟のノア。ヘブライ語で"rest"や"comfort"という意味だ。エマは英語だが、古代ドイツ語では"Whole"あるいは"Universal"という意味らしく、19世紀から人気がある名前だという。

アメリカはさまざまな移民が作ってきた国だけあって、宗教や出身国、歴史などが複雑に絡んでくるようだ。

10年で流行は激しく変わるが、州別になるとまた違ってくる。
Popular Names By State
https://www.socialsecurity.gov/oact/babynames/state/index.html

同じく米・社会保障局によると、筆者が住むシアトルのあるワシントン州では、2014年の1位は男子が全米と同じく"Liam"。女子は"Olivia"であった。リーアムは前述のとおりアイルランド系の名前だが、2000年の国勢調査によると、ワシントン州は全米で3番目にアイルランド系アメリカ人の多い州となっているので、結果にも合点がいく。

また、現代らしい新たなトレンドも生まれている。
前述『BabyCenter.com』の非公式の調査結果だが、インスタグラムのフィルタの名称である Lux、Ludwig、Amaro、Reyes、Hudson、Kelvin、Juno、Valencia、Willow がランキングで急上昇している。

『nameberry.com』によると、Luxは映画や小説の主人公、Ludwigはドイツの王様など(……どうもベートーヴェンが浮かぶが)、Junoはラテン語で「若い」という意味だとか。ちなみに最近、こういう名前の赤ちゃんは「インスタグラム・ベビー」と呼ばれている。

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私自身、自分の名前を気に入っているものの、アメリカではなかなかちゃんと発音してもらえず、アメリカ人の友人たちに私に合う英語の名前を考えてもらったこともあった。結局、「君にはやはり今の名前が合っている」と言われて今に至るが、日本語の名前で通して良かったと今は思う。

幼児の頃に別の国から米国に移住してきた夫の兄姉たちは、「外国の名前のおかげで最初の就職に苦労した」と言い、米国で生まれた自分の子どもたちには英語の名前をつけることに躊躇しなかったそうだ。

一方、外国人の多いIT業界にいる夫はそうした心配をしなかったらしく、「日本人の血をひいていることを大切にしないと」と言ってくれた。そのため我が家の息子の命名にあたっては、日本語の名前をエクセルにリストアップし、英語でおかしくないものを夫と確認した上で、漢字は両親と確認してようやく決めた。

今年5歳になった息子には、これ以外の名前は考えられないと自負しているのだが、名前をきかれて嬉しそうに答える息子が、将来も自分に合っていると思ってくれて、自分の名前が好きでいてくれたら最高だ。もし、最初はイマイチと思っていても、何かがきっかけで好きになることだってあると思いたい。

いずれにしても、親の思いや愛情をこめて、子どもは自分のアイデンティティとして大切にしてくれる名前を見つけるのは、国を問わずひと苦労である。

大野 拓未大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。