宮藤官九郎×星野源という、今をときめくコンビによって作られた曲を毎朝聴ける番組が存在する。NHK Eテレで放送中の「みいつけた!」である。(毎週月~金・朝7:45~8:00)

このコンビでの楽曲は番組開始当初から数曲存在するのだが、満を持しての新曲が3月から放送されている。それが『グローイング アップップ』だ。

歌っているのは“みやけマン”としてや、「いすのまちのコッシー」のコーナーで声優としても出演している三宅弘城さんと、おなじく「いすのまちのコッシー」でデデコさんの声などを演じている内田慈(うちだ ちか)さん。

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“イス”の主人公が出てくる番組だけに、イスと子ども、それぞれの目線からの成長とお別れについて描かれている。

3月に放送されていた「1ばん」では、お姉ちゃんのお下がりだった、子どもが座る食事用のイス“ごはんのいす”が成長に伴い窮屈になり、“いとこのマーくん”にあげることになった……という、主人公の男の子とイスとのお別れについて歌われた。

卒園シーズンと重なり、Twitterのタイムライン上では「これまではコミカルな曲が多かったのに、このコンビで泣ける曲を出してくるとは!」と朝から号泣のお母さんお父さん方が続出していた。

そして4月からは「2ばん」が放送されている。
卒園シーズンも過ぎ、視聴者それぞれがあらたな春を迎えた今、“クドカン”がどんな内容を持ってくるのか、興味を持って放送初日を見守った──。

■三輪車から自転車へ。5歳児のからだとこころの成長


筆者の長男は去年の秋、5歳の誕生日を迎えた。
この4月からは保育園の年長さんに進級した。

今年の1月くらいから、クラスでは自転車を買ってもらう子が増えてきた。
上にきょうだいがいる子はなおさら、そのスタートは早かった。

「あのねー、じてんしゃ、かってもらったんだよ!」

朝、長男を保育園に送っていくと、クラスメイトが私を捕まえてそのようにいう日が増えていった。

≪自転車、欲しいっていうかな?≫

長男と仲のよかった2つ上の女の子がいた。彼女が年長さんの年、夏にレンタサイクルのある公園に集まって、補助輪をとる練習をしていた話を聞いたことがあった。
やるなら今年なんだろうなあ、ぼんやりそう思っていた。

三輪車は実家に買って置いていた。
家の近所では乗るところがないが、実家の前は広い都立公園になっていて、三輪車でもストライダーでも乗り放題だからだ。

2歳になってすぐ買ったストライダーはしばらく放置されていたが、ここに来て急に本人にブームが到来、実家に頻繁に行くようになり、あっというまに両足を離して乗れるようになっていた。

そこで、本人に聞いてみることにした。

「ねえ、自転車欲しい?」
「うん!」

これ以上ない早さでの即答であった。

■子ども用自転車探しに奔走する


自転車にそれほど関心のある夫婦でもないため、いったい何を買ったらいいのかと悩み始めた。

しかし、よく見かける子ども用自転車のデザイン。
一応デザインを仕事にしている身としては、どうにもこいつを家に入れる気がおきない……。しかし、デザインクオリティの高いものは軒並み高い。

近隣の自転車屋を数軒まわってカタログを集めた。

「……安くは、ないね」
「安いのは安全面で不安じゃない?」
「……下の子も、できれば乗らせたいよね」

5年で“減価償却”と考えることにした。
子ども用自転車は、平均していいとこ2万円前後ということがわかってきたので、バッファをもって3万円まではがんばることに決めた。兄弟2人分と考えたとき、1人当たり15000円の計算だ。(もちろんそんな単純な話ではないものの)

友人知人にヒアリングし、以下の条件が見えてきた。

・アルミフレームで軽いもの
・身長の関係から18インチの展開があるもの
・取り寄せではなく、できれば試乗できるもの

そして、いくつか候補を絞ったのだが、ある日、買おうとしていた自転車を、隣に住む同級生が手に入れていたことを知った。

「どうする? かぶるよね」
「かぶり、本人が一番気にしそうじゃない?」
「家もすぐそこだしねえ」

そこで、長男にその旨聞いてみることにした。

「○○くんと、自転車おそろいになってもいい?」
「やだ!」

これまた食い気味の即答なのであった。

「あとね、あおがいい! あ・お・い・ろ。ね!」

色を指定されてしまったことで、今もっているストライダーと同じ、緑色を買おうとしていた私の計画は振り出しに戻ってしまった。

「これならいいかも」と思う自転車の色展開をたずね歩くも、

「去年までは青あったんですけどね」
「青は出してないですね」

と、デザインを気にするならば、青は意外と買えないという事実にぶち当たるのだった。

そこで、おそるおそる長男に打診する。

「ねえ、水色でもいい? これ、かっこいいよ?」
「うーん」

しばらく考えてこう答えた。

「いいよー」

しばらく試乗したら愛着がわいたようで、GOサインが出た。
自転車は譲歩してもらったので、せめてヘルメットは本人に選んでもらおうと頼んだが、どう考えてもデザインの釣り合いが取れない、仮面ライダーのような色合いのものを選ぶのだった。

だんだん好みも、“幼児”から“男子”になってきたのだなあ……。

■さよなら、さんりんしゃくん・ようこそ、じてんしゃさん


ストライダーは乗りこなせるので、補助輪をつけない状態での納車を頼んだのだが、本人曰く「友だちのを借りたら乗れなかった」ということで、しばらくは補助輪つきのガラガラ音の鳴る“愛車”を乗り回すのだろう。

同級生には補助輪なしを乗りこなす子も増えているので、劣等感を持たないうちに、早く補助輪を外せるようにアシストしていきたい。

こうして我が家の三輪車とストライダーは、次男が乗れるようになるまでの1年ほど、実家で待機してもらうことになる。

長男はあんまり頻繁に乗っていなかったけど、次男は兄を見て育つから、意外と乗るかもな……。

そんなおり、ちょうどテレビからは「グローイング アップップ」の“2ばん”が流れるのだった。


──お兄ちゃんのお下がりだった三輪車に乗っていた女の子も大きくなって、お父さんに自転車をねだる。シールをたくさん貼られた三輪車くんは、自転車に乗ってお兄ちゃんとお出かけするようになる女の子を見送る……。

“座るもの”というくくりで三輪車や自転車を持ってきたのか、と感心するとともに、「ああ、ボクを卒業していくんだね」と、新しい季節になり、主を見送る側の三輪車くんの気持ちになって、せつなくなる。

“自分より小さい子になにかを譲ること”
“ひとつ上のカテゴリに移動して、なにかを卒業していくこと”

偶然にも「1ばん」と「2ばん」の歌詞両方とリンクした我が家。

≪子どもってあっという間に大きくなっちゃうよなあ、長男は来年もう小学生だし、この間生まれたばっかりな気がしていた次男も、もう「ギョーザにライス」のような、普通のご飯を食べているしなあ……≫

と感傷に浸っているとき、我々夫婦はあることに気がついた。

「1ばん」では窮屈になったイスをいとこに譲るが、「2ばん」では三輪車くんの行き先が語られていないことに。

「廃棄かなあ……」
「やめてよ、かわいそうじゃん」
「ネットオークション……」
「だから!(笑)」

宮藤さん、実際のところはどういう設定だったのでしょうか……。

(※なお「グローイング アップップ(2ばん)」は4/28まで週4日ペースの放送予定となっている)

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。