子どもなんて、好きじゃなかった。
うるさいし、いうこときかないし、鼻水とかこすりつけてくるし……。

―― それでも、いろいろ背負って、私は親になった。

独身の時に思い描いていたような“しつけも情操教育もバッチリな余裕のある親”になんかちっともなれていないけど、それなりに、いま目の前にあるタスクを、もぐらたたきのようにやっつけながら、日々を過ごしている。

忙殺という言葉がお似合いだった乳児期を超え、手の中にいたはずのちいさな赤子は、なんだか図体のでかい生意気な子どもになっていた。

「……あれ、私、なんだか、赤ちゃん期をまったく堪能できなかったな」

友人たちに出産ラッシュが訪れ、生後1ヵ月やそこらの赤ちゃんを日々拝んだ。

「……ふわぁ!」
文字に起こすとこんな感じの声が漏れた。


額から香るミルク臭、ちょっと間違ったらすぐ折れてしまいそうな腕、開いてるんだか閉じているんだかわからない、焦点が合っているようで合っていない“おめめ”、何もかもが小さいそのパーツ。

赤ちゃんが欲しいなあ、と明確に思ったのはその頃だ。
そこから2年ほどして、我が家には待望の第二子が誕生した。

無知ななか、不安と闘いながら調べまくって迎える出産と、ある程度の基礎知識は備わっているうえで、生まれてくる子どもをあれこれ思いながら過ごす妊娠期は、気持ちの上で天と地ほど違うのだった。

■赤子 is 尊い


「一人目が緊急帝王切開で、術後も死ぬほど痛かったんでしょう? なんで二人目行こうと思ったんですか?」

ある日、職場で同僚からそのようにきかれて、一瞬悩むのだった。

ひとつには、年齢的に“やるなら今しかねえ”というムードになっていたこと、そして、お産が痛かったのをすっかり忘れて、行ける気になっていたこと。

しかし、「もう一度赤ちゃんを拝みたい! 今ならもっとうまくやれるのに!」という、“乳児育児を余裕を持って楽しめなかったこと”への後悔が一番大きかったのだ。

手の中にいるうちはその貴重さに気づけないまま、あっという間にその時期を過ぎ去ってから実感する“赤子の尊さ”。

赤子を欲するあまりエスカレートして、「赤子ならオールオッケー!」というところまで行った筆者は、街で見かける赤ちゃん、某産婦人科の新生児ライブカメラなど、赤ちゃんに関するものならなんでも貪欲に取り込んでいった。

自分の子が生まれてからそれは拍車がかかり、次男を愛でるとともに、「地球上、すべての赤ちゃんと、次男に似ているすべてのものを愛す!」のレベルまで到達しそうな勢いだった。

「次男に似ているから」という理由だけで、柴犬の画像ばかり流すbotアカウントをフォローしたのもその頃だ。

そんな時にTwitterで見かけたのが、イラストレーター・栗生ゑゐこさんの描いていた“赤子イラスト”である。

「うわ、次男に似てる……!」

次男と約1ヵ月差で産まれた“赤子”に、私は自分の子を投影していたのだろう。

「むんっ」という擬音語が似合いそうな、むっちむちフェイスの“赤子”。
イラストが投稿されるたびに、「これはうちもやってる」「これはまだだな」と、画面の中で、まるで「たまごっち」のようにバーチャル育児をしている気分になった。

やがて、うちの赤子も、イラストの赤子も、無事に1歳を迎えたのだった。

■“赤子萌え”堪能しまくりの1冊


そうして上梓されたのが、こちらの一冊『赤ちゃんのしぐさ』(文・森戸やすみ、絵・栗生ゑゐこ/洋泉社)である。


月齢ごとの発達過程について知ることができる育児書でもあり、マンガやイラストだけ読んでいっても、長男や次男の“その頃”を思い出して笑ってしまう。

……称するなら“育児書”というよりは、もっとライトに読める、“楽しく読んで赤ちゃんの成長を学べるイラスト集”だろうか。

赤子はなぜか「へう~」という声を出して泣いているなあとか(長男の時はあまり「へう~」と言っていた記憶がないので、個体差があるのだろう)、いわゆる“赤子あるある”で楽しめる。

なにがいいって、描かれている赤子たちの「ほっぺ」。
下を向いた時のこぼれ落ちそうな赤子のほっぺほど、幸福感をもたらすものはなかろう。

人の親になって6年目であるが、本書で解説文を書かれている小児科医の森戸やすみ先生のコラムを読んで、まだまだ知らないことがあると思い知らされた。

私に育児経験があるといえども、所詮はサンプル数は1や2。自分をスタンダードで考えているとどんどん知識が古くなる気がしてしまう。

森戸先生のような、医師として、そして親として、エビデンスに基づいた育児情報を提供してくださる小児科医の存在は大変にありがたいと思っている。


最大限の賛辞を呈して、この一冊に、私は \読んだら母乳が出そう!/ というキャッチコピーを送りたい。

産後、乳児を見たり抱っこをすると「うわあ!母乳出そう!」と叫びたくなる瞬間が時々ある。条件反射で胸がツーッと張ってくるような。

次男は早々に母乳を卒業してしまったので、もう食料としての用はなくなったものの、おっぱいのほうが赤ちゃんを欲しているこの様子、お分かりいただけるだろうか。

この本で取り上げられている0ヵ月から18ヵ月、すべての時期の赤ちゃんを育てて知っている今、イラストがトリガーとなり、鮮明に当時のようすを思い出す。あの、どうにもかわいくてキュンキュンする感じ。

読み終わる頃には、あなたも赤ちゃんが欲しくなっているかもしれない……?


▼著者のお二方からコメントをいただきました。
・小児科医・森戸やすみさんより
 森戸やすみ
 https://twitter.com/jasminjoy
この本の右側ページは、ごく一般的な赤ちゃんの成長発達について書いてあります。
“何ヶ月になったらこういうことをしだすけれど、こういう理由です”、“これとこれができるまでにはこういう過程があったから”など、初めて赤ちゃんを育てる人には不思議がいっぱいのことがらを、小児科医的に解説しました。

左側ページは栗生さんのかわいくて面白いイラストとマンガ。クスッと笑いながら、「うちの子もやってた」、「こういうことがあるのね」と楽しんで読み進めます。

赤ちゃんがいる生活をより楽しむでもいいし、赤ちゃんだった頃を振り返って懐かしむ、でもいいですね。赤ちゃんの1年はとても忙しく、過ぎてしまえば成長発達はあっという間。ぜひ、かわいさと大変さを楽しんでください。


・イラストレーター・栗生ゑゐこさんより
 赤子イラスト(栗生ゑゐこ)
 https://twitter.com/quriwoo2
私も赤子萌えが高じてイラストを描き始めてしまった一人です。
初めてのお子さんを描く人は多いですが、私の場合は最初の子を描いている余裕はほとんどなく、いつの間にか赤子時代が過ぎ去ってしまいました。

第二子を産んで「うむ……これは記録に残しておかねばならないかわいさよ……」と確信。赤ちゃんイラスト用のアカウントを作ってTwitterにあげていたら、本書の編集さんが声をかけてくださり、同じくTwitterで発信されていた森戸先生と一緒に執筆することになりました。

本書は「しぐさ」とタイトルについていますが、基本的には乳児の発達と成長についての本です。その部分は森戸先生にお任せし、私はひたすらかわいい生き物を描かせていただいたという、非常にありがたい仕事でした。

育児書なのに赤子萌えをみなぎらせてしまい大丈夫かなと思いましたが、面白がってくれる方が多いようでうれしいです。

本書で描いたマンガ・イラストのエピソードは、小さいお子さんをお持ちの親御さんから寄せていただいたほぼ実話です。一人二人産んだからといって赤子のことがわかるわけではありません。たくさんのお話を伺っていろんな子がいるんだなあ~と再認識しつつ、中でも印象深かったエピソードを採用させていただきました。

そんな家族と赤ちゃんのエピソードを挟みつつ、「新生児~1歳半頃の赤ちゃんてこんな感じ」ということがさらっと読めるようになっていますので、妊産婦さんはもちろんそのご家族にも楽しくお読みいただけるかと思います。


ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。