恐ろしいドラマを見てしまった。
今クールのドラマ、TBS系『砂の塔~知りすぎた隣人』である。
http://www.tbs.co.jp/sunanotou/

タワーマンションを舞台に繰り広げられるママ同志の熾烈な争いと、近隣で発生した謎の幼児連続失踪事件という触れ込みに、「またこの手のドラマか~」という気持ち半分、「でも見てみないことには分からないしね」と期待半分で初回を鑑賞。

菅野美穂さん演じる高野亜紀が、一家で50階建ての超高級タワーマンションに引っ越してくるシーンから物語は始まる。


亜紀の夫は普通のサラリーマンで、いわゆる中流家庭にも関わらず、運よく“高層階”と区分される25階に住まうことになる。まるでホテルのような外観、行き届いた施設やサービスに思わず大はしゃぎする亜紀たち。

しかし、そこの住人たちは子どもの幼稚園の見送りでマンションの入口に降りるにも高級バッグ持参で出てくるような富裕層で……とここまで書くと、以前レビューした『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』とほぼ一緒では……?という印象だが、たしかにただの“ママ友バトル”に徹しているのだとしたら、過去のドラマの焼き直しでしかない。

一人浮いている庶民派の主人公、一見仲良くしているようで、住んでいる階数でお互いを値踏みし合うママたち。そして彼女たちの軋轢が子どもにも波紋を呼んで……というのもセオリー通りだ。

ただ、これだけ繰り返しドラマが作られるくらいだし、私が知らないだけで「ママ友カースト」なるものが実在していて、苦しめられている人がいるのだとしたら、それも怖いことだなと思い、マンション事情に詳しい友人にきいてみた。

友人いわく「教育熱心なエリアとかあるところにはあるみたいだけど、ものすごく限定的な話じゃないかな。私の身近では実際聞いたことはないよ」とのことで、その信ぴょう性については未知数だ。

しかし、本作品が今までのドラマとひと味違うのは、そのサスペンス性によるかもしれない。何しろめちゃくちゃこわい。

冒頭、松嶋菜々子さん演じる弓子が自宅の浴室で血まみれの子ども服を洗っている姿から、近くで行方不明になった幼稚園児の所持品が見つかったという捜査の画面に切り替わる。

真っ赤に染まった浴槽をシャワーで洗い流している様子で、もうハナからこの人が要注意人物だということが分かる。

普通は、「この人善人に見えるけど怪しいな……」とか、「あの人の今の行動ってちょっとアレ?」とか匂わす程度で、犯人捜しを楽しむのがサスペンスの醍醐味だが、ここまであからさまなのは珍しい。逆に万が一、彼女がまったくのシロなら、一体どんなドラマになるか想像がつかないほどだ。

ママ友の付き合いに早くも疲れを見せている亜紀に優しく接する弓子だが、この先何をトリガーに、どんな手を使って亜紀たちを脅かしていくのか、まだ物語は始まったところだが、テレビの前で戦々恐々だ。そして亜紀はその脅威にどのように立ち向かっていくか。

「女は時々嘘をつく。ささやかな見栄のため、愛する我が子を守るため、そして時には秘密の恋のため」と語るモノローグがドラマの様相を表している。

ささやかな見栄というのは、いわゆるママ同士のマウンティングというやつで、秘密の恋というのは、ママたちが家庭の外でこっそり楽しんでいる恋愛のことだろう。

そしてこっちがちょっともどかしくなるくらい亜紀が臆病になったり、本音を言えなかったりするのも、愛する子どもたちを守るためだ。自分ひとりなら堂々としていられても、子どものことが絡むと周りに同調せざるを得なかったり、足並みを揃えなくてはいけないときもある。そういう複雑な機微が描かれているといいなと、いつもこのテーマの作品には期待してしまう。

連ドラ主演は産後初となる菅野美穂さんは、劇中ではよその子どもに「地味」と言われているが、そんなことは毛頭ないくらい輝いていて綺麗だなあとうっとりしてしまった。一方の松嶋菜々子さんは、その無表情さが『家政婦のミタ』を彷彿とさせるが、黙っていても存在感があって、二大女優の競演というだけでもかなり目の保養になる。

THE YELLOW MONKEYが歌う同タイトルの主題歌もかなりドラマの内容に沿った歌詞で、重厚なサウンドとドラマティックな曲展開が、物語のおどろおどろしさに拍車をかけている。

金曜日の22時台というと1週間の疲れを癒したい、ちょっとひと息つきたい時間帯なので、「ちょっと濃すぎる……トゥーマッチかな?」という気もしなくはないが、せっかくなので、この重たい雰囲気を楽しんでみようと思う。

「TBSオンデマンド」では放送後7日間は見逃し配信で視聴可能だ。
https://tod.tbs.co.jp/program/12465

真貝 友香(しんがい ゆか)真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。