子どもが生まれてから私が参加した飲み会の数って、かなり少ない。

そもそも育児の最初の頃なんて、夜に限らず絶えず自分の時間なんてものはなくて、昼の予定だって赤ちゃん関連ばかり。出産後に夜の飲み会に初めて参加したのはいつだっただろう……。もう産後10年以上経ってずいぶん変化したとはいえ、それでも、なんだかんだといって、ずーっと私の「夜の時間」は子どものためのもののままだ。

■夜の用事が全然入れられない!


今だって、夜飲むような席にでかけるとしたら、自分の楽しむ領域よりも、仕事に関連するイベントやセミナー+懇親会とか、「用事」に近い状況の方が圧倒的に多い。

それでも、行くときはなるべく早いうちに夫の予定を確保して、夫が劇的に忙しい時なら参加を諦めることもある。頼んだ日近くにやたら「いそがしい!」を連発されれば、「ずっと前から言っといたのに!」と言いたくもなる。あぁ私の夜の予定をたったひとついれるだけでなんでこんなに面倒くさいのか……。


幼い時ほど息子の説得にも手間取った。完全にアウトな時期から徐々に変化して、「お父さんとだけの夜! やったぁ!いいよ!」になったのは意外と最近だ。

そんな風に、母親になって以来、私の夜が私の自由にならないのはほぼ常態化しているのだけれど、先日、夫と共通の友人との再会チャンスがあって、あぁそうだった、夫とふたりで夜飲み会に参加することもできないんだった、と改めて思った。

■昔はふたりで飲み会参加できたのに……


子どもを生む前のふたり暮らしも長かったし、共通の友人も仕事も多いから、一緒に飲みの席に行くことも珍しくなかった。今は、ふたりで夜遅くなる飲みの席には一緒に参加できない。どちらかが家で子ども担当だ。

ふたりで子連れで参加すれば?と思う人もいるかもしれないけれど、連れて行ける条件はかなり限られているし、行っても私だけ子連れで早退するパターンになる。そもそもあきっぽい子どもの機嫌をコントロールしながら、大人の輪でぱーっと飲む気になるかというと、難しい。

かといって、「楽しい飲み会」のためだけに、わざわざ子どもを夜どこかに預けるパワーとコストをかける気にもならない。それ自体面倒だなぁ、まぁいいや私は行かなくて、がいつものパターン。

預け慣れた身内が近所にいるわけでもないし、過去の記憶をたどると、夜子どもを託してまで参加したのは、ふたりで行くのが必須の夜の時間帯の仕事とか、お通夜とか、オフィシャルな用ばかりだ。

■ママの夜時間は家優先なのにパパの夜時間は家優先にならない


これだけ生活パターンが変わったはずなのに、女性の夜時間が子ども優先になることは「仕方ない」と思われやすいけれど、なぜか、男性の夜時間が子ども優先になることは全然「仕方ない」と思われないところがある。

パパ自身も、自分の夜時間が相変わらず自分優先であることは、ママの夜時間がずっとママのものではないことの裏返しだと、意外と気づきにくい。それで、自分の夜時間を家庭優先に切り替えそびれてしまいがちだ。

■育児には、ふたり分の手と時間がフルパワーて必要な時がある


育児っていうのは、ハードな時期は確実に、ふたり分の「手」と「時間」が必要だ。新生児育児期とか育児1年目はかなりきつい。ママひとりの手ではどうにもならなくて、パパの仕事以外の時間を全力で家の中のことに使ってようやくどうにかなるくらい。だから、この時期に当たり前に飲んで帰ってくる夫に怒りをため込むママは多い。

年度替わりも要注意。特に、この4月から保育園に通い始めて職場復帰したママにとっては、親子ともにペースが作れない今が一番大変かもしれない。不安だらけだし、どうやって両立すればいいのか早速途方に暮れている時に、パパが飲み会で酒臭く使い物にならない状態で帰ってくるとか、本気であり得ないはずなのだ。

■男性だって、子どもを理由に飲み会を断っていい


なのに、よりによって4月は歓送迎会も多い。職場で、「ママ」と認識されている人は、最初から諦めていたり不参加の表明もしやすいだろう。「パパ」の方は、本気の対策が必要だ。

男性が育休を取る敷居が高いと感じてしまうのはわかる。でも、せめて、飲み会を1本断ることから始めてみたらどうだろう。お祝いや送別の席だからと失礼に感じるなら、1時間だけ顔を出す。大丈夫、あなたひとりがいなくたって職場の飲み会はちゃんと盛り上がる、そんなに重要人物ではないはずだ。あなたの時間と手は家の中でもっと切実に必要とされている。助けを求めている人が家にいる。

■小さい子がいるパパの夜時間を周りが奪わない工夫


パパ自身が断る勇気を出すだけでなく、周りができることもある。

小さい子のいるパパにはぜひ、「無理して参加しなくて大丈夫だよ」のひと声をかけてあげて欲しい。女性には、小さい子がいると夜の飲み会の心配をしてあげるのに、男性だと心配してあげる習慣がないのはちょっと変だ。夜は30分でも早く帰らせて家の中の戦力にしてあげて欲しい。

ちょうど最近、区切りのついた仕事で軽く打ち上げすることを考えていた。ふたりの仕事だけれど、夜だと夫ひとりだなぁ……と思いかけて、そういえば仕事先の人にも小さい子がいたよなぁとふと気づいた。乳幼児のパパの夜時間は奪いたくない。なんだちょうどいい、こういうの、夜にやらなければいいだけだよな。短時間のランチだって「おつかれさま会」はできる。

もしかしたら、パパが「業務の効率化」に苦労するより、飲み会の回数制限と厳選をした方が、家庭のための時間が簡単に捻出できちゃったりするかもしれない。仕事時間を減らすより罪悪感だって薄いはず。ぜひ、1本断る。1時間で帰る、1次会だけで帰る、などのすぐできる工夫を、新米パパたちには積極的に実行してほしい。


とはいえ、夜のだらだらした飲み会っていうのも、まぁ、時にはたまらなく楽しいもの。それがいいストレス発散になるなら、全部やめなくたっていい。限られた時間の中で、飲み会1本1本を厳選して、制限すればいいだけ。そして、参加したらその分、ママにも子どもから離れられる自由時間を作ってあげて欲しい。

家庭を理由に飲みの席を断る男がかっこ悪いっていうイメージはもう古い。そんなあなたを揶揄する頭の固い誰かのためではなく、あなたを頼りにしている人のために大切な時間を使って欲しいなぁと思う。

狩野さやか狩野さやか
Studio947でデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる。自身の子育てがきっかけで、子育てやそれに伴う親の問題について興味を持ち、現在「patomato」を主宰しワークショップを行うほか、「ict-toolbox」ではICT教育系の情報発信も。2006年生まれの息子と夫の3人で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者資格有り。