実は「リスク管理」ができていません。
すいません、いきなり出オチです。「リスク管理」なんてカッコイイこと、できていません。結論を書いておくと、結局、肉親頼みです。

仕事をドタキャンして泣いたこと約10回、そのまま仕事がなくなったこと数回、夫を恨んだこと数十回、我が身を呪ったこと数え切れず。ギリギリの綱渡りと、リスクを真正面から被ることで1年間やってきた、その軌跡が誰かのお役に立てたらいいな、と話を進めます。

さて昨年、3歳と0歳の子どもたちは、別々の園ではあるけれど、認可保育園に入ることができた。とりあえず、万々歳、「これで心置きなく仕事ができる!あはははは~♪」と高原を駆け回りたいところだったが、そうは問屋が卸さない。

下の子の発熱だ。彼女は0歳8ヵ月で入園したのだけれど、すでに熱性けいれんをやっている関係で、園からかーなり警戒されていた。登園直後に熱を測り、37.5度以上あったら預かってもらえない。また同様に1日を通して37.5度以上になったら電話がきて、1時間以内に駆けつけることになっていた。

――そうなると、どうなるか。
やっと慣らし保育が終わったと思ったら、週に1度は朝から37.5度を記録してはとんぼ返り、0歳の免疫のない身体は保育園の病原菌をあますとこなくもらってきて、3日連続発熱で休みます、なんて状態はザラ。4月に入園してから、月~金と週5日登園コンプリートできたのは、7月下旬だった。

私は在宅勤務のフリーランスで、産休・育休というものがない。しかし、おかげさまで自由度は高いので、月齢的によく寝る娘を(必死に)寝かしつけたりおぶったりして、その間に原稿を書くことは、できなくもなくもなかった(2歳間近な今はもう無理)。問題は、打ち合わせや取材、とくにインタビューのある時だ。

じつは一度、熱のある娘をおぶって行き、授乳しながらインタビューをしたことがある。取材相手が子育て支援系のNPO団体だったからできたことだが、左乳を出しながら、右手でメモ、大泣きする娘、聞こえない会話……まったく集中できなかったし、取材相手には心苦しく、娘にもかわいそうなことをした。

さて、私は困った。保育園に入園できたけれど、それがゴールではないと悟った。インタビューなどの予定がある日の朝、どうやって娘を手放すかが課題となった。
で、対策を練ろうと調べたのが以下である。

■子どもが発熱時のサポート体制いろいろ


・病児保育……病気が理由で登園できない子を預かってもらえるシステム。医師の診断書が必要なため、朝一で病院を受診し、診断書をもらって近隣の病児保育施設(ベッド4床・早い者勝ち)に駆け込む必要がある。ちなみに我が家に車はない。

・ファミリーサポート……事前登録が必要。私の自治体では、熱のある子を預かってもらえない。また保育園へのお迎えもNG。

・緊急サポート〇〇(地域名)……自治体が運営。熱がある/病気であっても、子どもの家もしくは会員(見てくれる人)宅で預かってくれる。熱・不調が原因での保育園へのお迎えもOK。だが、娘の場合は熱性けいれんをやっている関係で、発熱時の預かりは最大2時間。また、会員は登録している地域住民(少ない)のため、需要にすべて応えられるわけではない。

・NPO団体が行っているサービス……地域によっては、病児であっても預かってくれるサービスがあるが、わが家の近隣ではない。

・民間のベビーシッター……事前登録が必要で、1時間3,000円程度で病児看護も保育園へのお迎えもOK(利用していないので、熱性けいれん経験幼児でもいいかは不明)。

・実家の両親……他県に住んでおり、高速道路に乗って片道2時間の距離。二人とも仕事をしていて91歳になる祖母と3人暮らし。が、どうしようもない時は、どちらかに来てもらう。

・ママ友……出産したばかりのママ友、幼稚園児がいるママ友の2人。緊急時の保育園へのお迎えを依頼していたものの、相手の状況&娘がスーパー人見知りなので、現実的ではないと思っていた。

・夫……朝は「逃げ切り」。夫は通常、上の子を下の子とは別の保育園に送り、出勤する。なので、私が下の子を保育園に送ってトンボ返ってきたときは、すでに会社付近にいる。また「重要な会議がある」「予定がある」で断られることが多かった。

・夫の両親……新幹線にのって片道4時間の距離在住。仕事もしている。


サービスの数だけをみると多いようだが、よく見ると「熱性けいれんを経験した子」のハードルは高い。最大2時間の預かりだと、時間が足りない。

可能そうな対応といえば、

【1】インタビューの前日に、わざわざ私の両親に来てもらう(仕事は休んでもらう)。
【2】インタビューの予定はあらかじめ午後にしてもらい、午前をフリーに。子どもに熱があったら耳鼻科(激戦)か小児科(超激戦・予約開始1分で午前の予約が満員)を受診して病児保育のベッドに滑り込む。
【3】時給500円(!)になるときもある私でも、お金をドーンと使ってシッターさんに来てもらう。

……親を振り回してスネをかじりまくるか、運に任せるか、お金を盛大に使うか。いくつか手立てがあるだけマシなはずなのだが、気分的には詰む。

■なぜ、仕事をするのか?


と、ここで思う。そもそも、なんでそこまでして仕事をする必要があるのかと。
熱のある子をどこかに預けて、そんなに仕事が大切なのかと。家計の助け?(になるか怪しい稼ぎ)、自己実現?(重めのツワリ時からキャリア停止気味)、アイデンティティの保持?(そもそもアイデンティティって何だろ)、仕事を続けるために仕事をすることが必要?(止まってはいけないのか?)……少なくとも、育児から離れる時間は持てるけれど。

本当は、下の子も上の子同様、預けるなら1歳クラスからにしたかった。一緒にもう少しだけかわいい時期を過ごしたかった。けれど育休がないので、働いていないと上の子も認可保育園に入る資格が奪われる。それ、すごく困る……。

じゃあいっそ、心を入れ替えて専業主婦になれるかといったら、そう簡単なものではない。経済的な問題以外に、四六時中子どもと一緒にいることに耐えられそうもない。

……あらま大変、アレも嫌でコレも嫌、私が胸を張って言えるのは、子育ても仕事も中途半端だ、ということだ。

■お母さんが太陽でいるために


以上のように悶々として3日くらい経過すると、忘れていた説を振りかざし、開き直って毎度の自分いじめは完了する。

巷では「家庭におけるお母さんの最も重要な役割は、太陽でいること。お母さんの精神が安定して楽しく暮らしていることが、子どもの成長に大きくプラスになる」という説があり、私は大いにのっかっている。

まず「あたしも太陽になるぞー!だったら、母ちゃんのメンタルとフィジカル、もっと大事にしろ~!うおお!」と見えない敵にデモったあと、こう結論づける。私が太陽でいるためには、適度な、仕事・自由・友人づきあい・日本酒・服飾・うまいものが必要だ、と。もう一度いう、適度にぜ・ん・ぶ必要だ。

そして、その勢いが死なぬうちに夫にかけあう。
「アナタの仕事、大事、デモ、私の仕事モ、スゴク大事ッ!!」(魂の叫び)

両親にも頼みこむ。
「スネかじりという名の親孝行をさせてください!!!」(土下座)

去年の後半、ようやく気づいたのだけど、私は夫の「仕事の予定がある」の一言で引き下がってはいけなかったのだ(そして予定があるのは当たり前!)。

たとえ夫の稼ぎが10倍良いとしても、カネの問題ではない。私のメンタルがすさむのが大問題だということですよ?

そして、いちいち両親を召喚するダメ娘という自覚があってもしょうがない。現代日本は、使えるヒト・モノは使ってナンボの子育て砂漠だ。社会を恨んでもdisってもいいから、とりあえず、なるべく母さんがラクに生きていく。これはきっと、私とあなたと日本の明るい未来に不可欠だ。

-----

こうして1年がたち、現在の「娘が登園できない時」のリスク管理は、【1】夫に自宅待機(午前休)、【2】前日、両親に来てもらう、あたりでしのいでいます。結局何かのサービスではなく、肉親頼み。

たまに上の子の流血など、突発的なドタキャン要因もあるけれど、幸いなことに娘の発熱は減ってきたので、これからもう少し外出を増やせそう。しかし、2年後には上の子の「小1の壁」などというものがひかえていて、また振り回される予感が……いやあ、子育てって本当にアクティブですね。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。