女性の活躍促進が叫ばれて早や数年、子育て中の女性の就業意欲は高まっている一方、依然として保育園の不足や待機児童の問題は解消されておらず、大きな課題となっている。

また、パートタイム、フリーランス、起業など、働き方の選択肢が増えるに伴い、保育の多様性も求められている今、注目を集めているのが子連れOKのシェアオフィスやコワーキングオフィスだ。

十分な産休・育休が取得できないために、早々に仕事を再開する必要があるフリーランスワーカーや、育休中に資格取得に向けた勉強をしたり、職場復帰後も週に何度かはリモートワークで勤務、という会社員など、ニーズに応じた利用が可能な施設は、これからより一層需要が高まるだろう。


「ママをたすけるシェアオフィス Maffice(マフィス)」は、シェアオフィスで仕事をしながら同じ施設内の別室にて、子どもを託児をお願いできる施設。2014年にオープンした馬事公苑オフィスに続いて、今年の5月1日、2つ目の施設となる「マフィス横濱元町」をオープンした。

本施設は待機児童問題の解消と、仕事と子育て両立支援を目的に、2016年度より内閣府が進めている「企業主導型保育事業」として認められた施設でもあり、柔軟な働き方を後押ししてくれる存在として大きく期待されている。


仕事をしながらも、できるだけ子どものそばで成長を見届けたい、というのはごく自然な気持ち。とくに授乳期や低月齢の間は、子どもと長時間離れることに不安もあるかもしれない。

とはいえ、子どもを見ながら自宅で仕事というのは至難の業で、泣き声で呼ばれたり抱っこをせがまれたりと、思うように集中して臨めないことは筆者も経験済み。

子どものすぐ近くにいながらにして、仕事に集中できる時間と場所を確保できる、これがマフィスの何よりも魅力だろう。

また、多くのシェアオフィスが、子どもは併設のキッズスペースなどで自由に遊ばせつつ、自分で見守る、というスタイルを採用している中、マフィスは仕事場と保育スペースは完全に分けていて、子どものお世話は保育士さんにお願いできるのが大きな特徴だ。

部屋は分かれているものの、デスクからは保育スペースが見えるようになっていて(逆からは見えないという仕掛けになっているのがポイント!)、子どもの様子は随時うかがうことができる。

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デスクのようす


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別室の保育スペース


また、このたびオープンした横浜オフィスは、自園調理による給食を提供していて、保護者も実費でいただくことができるので、子どもと過ごす時間も満喫できそうだ。

料金体系についても、一ヵ月の制限時間があるもの、ないもの、利用時間帯に制約のあるものなど、複数のプランが用意されており、月極契約のほか、ビジター利用もあり。人それぞれのワークスタイル、ライフスタイルにあわせた使い方が可能だ。


マフィスを運営するオクシイ株式会社の代表、高田麻衣子さんは自身も2人のお子さんを
育てながら働くママ。会社員として働きながら子育てをする中で、東日本大震災を契機として起業した。

現在の待機児童対策は、フルタイムで働く人の受け皿がメインであって、それ以外の働き方を求めている人たちになかなかフィットしないことを疑問に感じているという高田さんは、マフィスは保育施設として行政から求められているルールは遵守しながらも、「親子がつながる保育」を大切にしたいと語っている。

男性中心の社会システムや就業規則が残されたまま、女性の社会進出を促すよりも、多様な働き方をサポートすることで、保育が必要な期間を経たあとも、子育てと仕事を両立しやすい親子関係を築けるのではないかというのが高田さんの見解だ。

今回、マフィスの新オフィスが誕生した横浜市は年代別女性の労働力率を見ると、30代以降は全国平均よりも低く、結婚・出産・育児を機に離職する女性の割合が多い上に、再就職率も低い傾向にあり、いわゆる「M字カーブ」の底が全国平均に比べ深い状態が続いている。

よって、今は子育てに専念するために仕事を一旦お休みしているけど、少しずつキャリアを再開したいという女性たちの潜在需要も見込んでいるが、一度ブランクができてしまうと、そこから動き出すのに二の足を踏んでしまうという声も聞く。

そんな不安を抱いている女性たちに何かメッセージはありますか、と問いかけたところ、「最初はキャリアの駆け出しだったけれど、マフィスに通い続けてるうちに仕事が軌道に乗って、今は各所から引っ張りだこ、というワーキングマザーもいます。利用の仕方についての提案もできますし、相談にも乗ります。だから『私でもできるかな』と思う方はぜひ一度いらしてください」と高田さんから心強いメッセージが。

オープン前から問い合わせが殺到して、すでにだいぶデスクも埋まりつつあるが、現在1・2歳児枠は若干の空きがあるとのこと。

マフィスのコンセプトでもある、「子どもの近くで、わたしの時間」はこれからの働き方、そして保育のあり方の指針にもなりそうだ。

ママをたすけるシェアオフィス Maffice(マフィス)

真貝 友香(しんがい ゆか)真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。