本稿では≪after育休≫をテーマに、育休の先にある「働く」×「育児」の両立の多様な実現方法を模索すべく、他社に先駆けて先進的な取り組みをされている企業の制度と、実際にその制度を利用して育児と仕事の「自分らしい両立」を実現している社員の方の声をご紹介していきたい。

連載の第1回目は、昨年(2016年4月)より男性の育児休暇取得を必須化した株式会社リクルートコミュニケーションズを取り上げたい。

同社はそれまで2日だった男性社員の子の出生時の特別休暇を最大20日に拡充し、うち5日の取得を必須化した。取得可能期限は子が満1才になる月の末日まで。無理なく取得できることを目的に、1日単位でも連続でも取得可能としている。

【制度名】妻出産休暇
【制度内容】妻出産当日、または、出産予定日以降、子が満1才の誕生月の末日までの期間に、育児・家事のための休暇として20日を付与する。
付与された日数のうち5日については、必ず取得するものとする。


もともと「価値の源泉は人」という人材マネジメントポリシーを掲げている同社は、2014年より「多様な人材の活躍支援」「多様な働き方の実現」の二軸で様々な取り組みを続けているが、この「男性社員の育児休暇必須化」は、ある男性社員からの切なる願いから生まれたという。


その社員の方は、自分の子どもが生まれたときに、「自分が育児に主体的に参加するなんて無理だ」と思い込み、積極的に休みを取得するアクションをとらなかったことを、子どもが2~3才になった頃にひどく後悔することになったそうだ。

その後、彼は周りの社員にヒアリングし、他の社員も「育児や家事に関わりたい」という思いを持ちながらも、「とはいえ、仕事を休むイメージが持てない」という本音を抱えていることを知り、それなら会社の制度として育児休暇の取得を必須化してもらおうと考えた。

それまで同社は、ワーキングマザーのネットワーク作りや女性キャリア支援研修の実施など、ワーキングマザーに対する活躍支援を中心に行ってきたが、実際には育児・家事は女性だけの問題ではない。男性が育児・家事に参加することが女性の社会復帰や活躍推進に繋がり、その先にダイバーシティの実現があると考え、切なる願いの声を挙げた男性社員の提案をきっかけに、わずか3ヵ月という短期間で制度改定に至っている。

同社の清水淳社長がこの制度に込めた願いは、「この制度によって、男性社員が育児・家事に関わるきっかけを得ること」だったという。

この制度を利用して実際に育児休暇を取得した男性社員からはこんな声が寄せられている。

「息子の未来に、どんな社会を残していけるだろう。育休を取得して、本気で子どもや奥さんと向き合ったことで自分のひとつひとつの仕事に対するモチベーションが変わった。」
「多様性の中で“取得しない”ということもまた選択肢の一つ。でも怪我をしたり病気をしたら当たり前に休むよね。子どもが生まれたら誰もが育休をとる。そんな社会になっていっても良いのかもしれない。」
「娘が初めて歩いた日、僕は大泣きしてしまったんです。娘は寝付きがわるい方で、夜中に抱っこして近所を徘徊したことも。育児の喜びも大変さも知っている。だからこそ、感動も倍なんです。」
「以前は帰宅時間をそこまで意識していなかった僕も、今は子どもが寝付く前に帰宅するのが当たり前に。育児休暇は、“仕事人としての成長機会”だと思いました。限られた時間の中でいかにハイレベルな仕事をするか。そんな貴重なチャンスが、この制度のひとつの側面だと思います。」


特定の社員に向けた有給制度というのは、対象外となる社員からネガティブな反応が起こることも予想されるし、実際に育休を取得した社員の上司や同僚など周囲はどのような反応を示したのかが気になるところであるが、現在まで、懸念していたようなネガティブ反応は出ていないという。

逆に、「思い切って休みを取ってみたら、周囲がしっかりとサポートしてくれて結束が強まった!」という声が寄せられている。


“子どもの誕生”ということが、同社のこの制度によって「会社員としての人生」においても大きな成長機会につながっていることが伺える内容だ。とくに労働生産性という日本人にとっては耳の痛い話が解決される方向に機能していることは、とても素晴らしいことだと感じる。

必須化された5日間の休暇を連続して取得したとして、丸1週間の休みになる。「たった1週間」と思う人もいるかもしれない。「たった1週間」で軽減されるママの育児・家事の負担は、きっとたいしたものではないだろう。

しかし、その「たった1週間」であっても、妻 ・子どもとしっかり向き合うことが、後に続く長いようであっという間の子育て期間における「夫婦間の理解」や「子育てに関わるモチベーション」につながるのかもしれない。

筆者もかつてリクルートで働いていたが、その当時私は「自分の時間はすべて仕事につぎ込めるもの」としての働き方しかしてこなかったため、育児と家事の両立に全く自信が持てず、自分自身のライフスタイルをリセットするために第一子出産のタイミングで同社を退社した。

今までは、子どもがいる・いないに関わらずプライベートと仕事の両立は、基本的に「自分の力」で解決するものという認識が一般的だったと感じる。しかし、私がリクルートを退社して4年。現在はワーキングマザー・ワーキングファーザーをサポートする制度がたくさん整備されており、4年前とは全く違う会社のように感じている。

じつはリクルートコミュニケーションズがこの「育児休暇取得必須化」の制度を導入するに当たっては、社労士から「こんな制度、前例がない。」と言われたそうだ。しかし、前例がないものにチャレンジし、今、世の中に存在していない新しい価値を創るということは、リクルートのDNAそのもののように思う。

リクルートグループではその他にも様々な先進的な取り組みを実施しており、それはまた別の回でも取り上げていきたい。

≪after育休≫の第1回目で、男性社員に向けた先進的な取り組みを取り上げられたのは、子育てが女性のものだけではないという認識においても意義深い。本連載では、単なる制度紹介に留まらず、読者の皆さん自身が、自分らしい「働く」×「育児」の両立方法を考えるきっかけにしていけたらと考えている。

森田 亜矢子
コンサルティング会社、リクルートを経て、第一子出産を機にフリーランスに。現在は、Baby&Kids食育講師・マザーズコーチング講師・ライターとして活動中。長女と長男の二児のママ。