9月に小学校に入学してから2ヵ月あまり。その間に、カリキュラム・ナイト、パジャマ・デー、ハーベスト・パーティーなるものが開催され、今月はさらに担任の先生との個別面談、先生感謝デー、ホリデー・クラフト・ショーがある。

アメリカのホリデー・シーズンは第4木曜の感謝祭から元日まであっという間に過ぎていくが、こういった学校行事も加って、ますます忙しくなるに違いない。

息子の学校のカリキュラム・ナイトは、学期が始まって1週間がたった平日午後6時半に子どものホームルームで始まった。4人が1グループになるよう4つの机と椅子が2つずつ並んで向かい合わせに置かれたものが5つ。

そして、ホワイトボード、プロジェクター、米国旗とワシントン州旗、たくさんの本がレベル別に並んだ本棚、揺り椅子がひとつ、荷物を入れる個別のロッカー、手を洗うシンク、先生の机がある。

壁のあちこちには先生が好きだというドクター・スースの「Cat in the Hat」が貼られ(子どもたちへのポジティブなメッセージが書いてある)、かなりきちんと整理整頓されている。1年生の机も椅子も、とても小さい。来年6月にこの教室を去る時は、どのぐらい背が伸びているのだろう。

担任が改めて自己紹介をして、教え方で大事にしていることなどを話してくれた。幼い頃はふたりの兄とよく遊んでいたこと。夫の仕事で米国中西部からシアトルに来たこと。初めての子どもを出産してまだ半年であること。担任と保護者がお互いを思いやって動くには、ある程度は担任の家庭状況も知っておいた方がいいだろう。

10月に入って、「今日は担任の先生がお休みで、代理の先生が来たよ。先生の赤ちゃんが熱を出したから、先生は来られないんだって」と、帰宅した息子が話してくれた時は、息子が赤ちゃんの時にあったいろいろなことを話すきっかけになった。

結局、担任は2~3日ほど休んで復帰。息子は「お母さんに赤ちゃんを見てもらえることになったんだって」と言いながら、先生が元気を出すようにと折り紙で折った花を学校に持って行った。「先生にあげたらね、"Cool!"って言ってくれたよ」。私からするとちょっと物足りない反応だが、息子はうれしかったらしい。

担任の話の後は、保護者が質問をするセッションだ。私たちのように夫婦で参加している家庭もあれば、ひとりで参加している家庭もある。人種はさまざまで、母国語が英語でない家庭が半数以上。ものすごくアクセントが強く、英語とは異なるイントネーションで話す人の話にも、担任はきちんと耳を傾けて回答している。

つねづね、シアトルは英語ネイティブでない人に対してかなり許容量が広い人が多いと思わせられているが、小学校の先生もそうでなくては、恒常的に新しい移民が入ってくる移民国家では務まらない。

その後、校長先生と副校長先生による学校全体の説明を聞くために体育館に移動したが、校長先生は各学年の先生方を簡単に紹介した後、「このカリキュラム・ナイトのためにいつも以上に多くの仕事をこなした先生方に拍手を」と呼びかけて、保護者に拍手させた後、「では、先生方にも家庭がありますので、もう帰宅していただきます。ありがとうございました」と、先生方を帰宅させたのが印象に残った。


次の催しは、クラスでのパジャマ・デーだった。もともとクラスで何かをがんばった結果のご褒美として「ミニ・パーティーができることになった」と担任から保護者に一斉メールでお知らせがあったのだが、「クラスの子どもたちで投票したところ、PG指定のアニメ『Boss Baby』が最多になった。クラスでこれを鑑賞するには保護者全員の同意を得る必要があるので、このメールに返信をください」とある。

PGというのは、親の判断が必要な内容が含まれるParental Guidance Suggestedの略。予告編を見てとくに問題なさそうと夫婦で判断し、「OK」と返信をしたのだが、後日、「全員の同意は得られなかったため、パジャマ・デーをすることになりました」と連絡があった。

もともとパジャマ・デーに投票していたという息子は大喜びで、パジャマの上にジャケットを着てスクールバスに乗り込み、夕方帰ってくるなり、「パジャマ・デーね、楽しかったあー。カーターはトランスフォーマーで、ヴィーホンはスパイダーマンだったよ」と興奮気味。「『Boss Baby』は赤ちゃんのすっぽんぽんのお尻が出てきたりするからだめっていうお父さんとお母さんがいたんだって」。なるほど、いろいろだ。


それからまもなく、担任から「保護者のボランティアが必要です」と、収穫を祝うハーベスト・パーティーについて一斉メールが来た。平日のランチ時間だったので、クラフトのステーションのボランティアを買って出たが、教室は色とりどりのテーブルクロスでパーティーらしい雰囲気になっている。子どもたちはチョコレートプリンを土に見立ててパンプキンの形をしたキャンディを飾ったり、クッキーにアイシングとスプリンクルでデコレーションしたりといった5つのステーションを5~8分ごとに交代でまわっていく。

担任は、「今は甘いものばかりだが、この後に外遊びを終えたらフルーツを使ったヘルシーなスナックを食べる予定だ」と説明し、また、「ご家庭で食べないものがあれば教えてください」と、個別対応もしてくれる。ちなみに、ピーナッツが入ったものの教室への持ち込みは普段から厳禁だ。

私が担当したクラフトは、プラスチックの手袋の指先にキャンディを詰めてからポップコーンを詰め、口を輪ゴムで縛って不気味な手を作るというもの。意外に難しいのだが、子どもたちは、「こうすればいいんだ!」と自分でやりとげて嬉しそうだったり、「ちょっと手伝ってほしい」と頼んできたり、「どう?僕は上手にやってる?」ときいてきたり。6歳はかわいらしい。


すべてやり遂げた子どもたちは、作ったものを食べ始め、息子も自分の席に座って、クッキーをむしゃむしゃ食べている。様子を見に行くと、「I made everything all by myself. This is yummy!」。

そうこうするうちに、外遊びの時間になった。子どもたちは片づけをしてジャケットを着て、先生の前に列を作った。ボールで遊びたければ教室にあるボールを持っていき、そうでない子は手ぶらで出て行く。

「Bye, mommy!」

私に向かって手を振り、仲良しの子と何やら話しながら外に出て行くようすに、息子がすっかり少年になっているのを実感させられた。

私とはまったく違う小学校時代。こういった環境で育つ子は、どんな人になるのだろうか。

【関連アーカイブ】
アメリカの小学校入学風景 ――バーベキューにポップシクル、入学前のイベントで気分もアップ
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大野 拓未大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。