“トイトレ”。
この単語を見るだけでため息が出てしまう方もいるのではないだろうか。

2歳あたりから子どもたちがチャレンジする“トイレトレーニング”。
2歳8ヵ月になった筆者の次男も、ちょうどそのお年頃である。


「なんとかなるときはなるし、ならないときはならない」を最近のモットーに掲げている筆者であるが、気づいたら次男のクラスのお友だちが、みんなオムツを卒業していることがわかった。うちは早生まれとはいえ、「さすがにそろそろ検討せねばいかんかな」と思った次第である。

保育園の先生に園でのようすをきいてみたが、

「うーん、座る気持ちはあるんですけど、成功したことないですね!」

確かに家でも、「といれ、いく!」と意気込んで出かけるものの、座ると遊んでしまって何も起こらない。

5分ほどは様子を見るのだが、本人が飽きた頃合いで引き上げ、オムツをはかせると、その直後にオムツのラインが青く染まるのだ。

……今かよ!

そのようなやり取りを、日々お約束のようにくりかえしている。

■はじめてのトイトレ


さて、長男のときはどうしていただろう。
もう記憶に残っていない……。そこで各所に書き散らした記録を読むに、3歳児健診時にはまだオムツをしていることから、「まだまだ平気!」と謎の余裕を生み出してしまった。

しかし、これは“保育園児だから大丈夫”というところはあるだろう。
幼稚園に3歳から入園した方に聞くと「入園までにオムツが外れていること」という通達があったりするとのこと。

……いわれてみれば、幼稚園にオムツの子がいるイメージがあまりない。
筆者自身も、母親によれば、1歳の時にオムツが外れていたのだそうだ。

そういえば、長男には「3歳のお誕生日になったら、お兄さんパンツで保育園行こうね」と約束したことを思い出した。

長男は記念日をトリガーにしたイベントは比較的クリアするタイプだった。

「1歳のお誕生日になったら、おっぱいバイバイだよ」と言い聞かせていたら、誕生日当日から「ボクの飲み物は牛乳ですが何か?」という顔をして卒乳したし、3歳の誕生日からは約束どおり、お兄さんパンツで保育園に行くことができていた。

4歳の誕生日からは一日中お兄さんパンツで過ごし(夜はオムツパッドやおねしょケットを使用)、年長さんに進級した4月1日から今日にいたるまで、一回もおねしょをしていない。

しかし、3歳になる少し前から保育園では布パンツを使用していた、という記録があり、次男もそろそろ……と思った私は、少しでも「お兄さんパンツ」に憧れを持っていただこうと、次男の好きなアンパンマンのブリーフと、かっこいいボクサーブリーフの2種類を用意、本人に見せることにした。

■2歳とパンク


「おにいちゃんぱんつ、いなない(=いらない)! かみぱんつ!」

次男のためにと思って買ってきた「お兄さんパンツ」を本人に見せたときのリアクションである。

そんなに怒るほどのことか?と思い笑ってしまったが、2歳児は怒り、泣きわめき、パンツをつかんではぶん投げていた。

このとき私の脳内では、パンクバンドが1曲演奏したあとに激昂し、手当たり次第に楽器を破壊する映像が流れていたのだ……。

長男のときにも同じように、かっこいいパンツを買ってきて見せ、イメトレをした上ではいてもらったのだが、兄弟とはいえ、同じようにはいかないということなのだ。

≪こりゃ、先が長いぞ……≫

わりと手こずった(はじめてなのでそう思っていた)ほうの長男でさえ、完全にオムツが外れるには2年半の月日を要している。

「友だちはお兄さんパンツだが、俺はまったく気にしない」というゴーイング・マイ・ウェイな次男には、“オムツとはいつか卒業するものである”という認識を持っていただくところからのスタートなのだ。

……紙オムツが心地よすぎるのも原因なのだろうか?

長男のときにもそこに行き当たったことから、今回はすでに保育園用の紙オムツを安いものにして、「濡れて気持ち悪いからトイトレがんばろう」という気持ちにもっていきたかったのだが。

その安いオムツが最近改良されてしまったからだろうか? もっと、なんというか、言葉を選んでいうならば“ごわごわ”なオムツに変えるべきなのだろうか。

「オムツなし育児って一時期流行ったじゃない?」

ある晩、夫と次男のトイトレについて会話をしていた。
筆者の友人が、思い切ってパンツをはかせないトイレトレーニングをしたら、リビングに茶色い個体が点々と、「ヘンゼルとグレーテル」に出てくる小石のように落ちていた、という話をした。

「うわー、掃除めんどくさいし、目を離した隙にされてたら、うっかり踏んだりして大惨事」

実際我が家では、お風呂に入れようとしていたときに、脱衣場でおしっこをされてしまったことが数回ある。

先日は湯船の中で“大きいほう”が生まれてしまい、お風呂から夫の悲鳴が聞こえた。
「茶柱みたいに縦に浮いてきた!」と笑いながらも半べその状態で夫が始末していたのだが「運がいいってことじゃない」という私の言葉は火に油だったようである……。

「もうねえ、人前でうんこしていいのは、ライブのときの田口トモロヲだけ!」

やはり、トイトレ時期の2歳児というのは、パンクなのかもしれない。

■育児は根気とはよくいったもので


筆者の子どもは保育園に通っているという都合上、就学までに完全にオムツが取れればいいし、なんなら5歳で夜のオムツも取れた長男はよくがんばったほうなんじゃないかと思っているのだが、お泊り保育の行事がある幼稚園や保育園に通う子では少々事情が異なるのだろう。

そして筆者の観測の範囲、という話だが、女児のほうがその辺はデリケートに捉えている気がする。3歳児健診なども、女児は「お姉さんパンツ」率が圧倒的に多かった気がした。そこに多少の個人差はあれど、男女差があるのかもしれない。

我々夫婦は基本的にめんどくさがりなので、つい紙パンツに頼った育児をしているのだが、トイトレをきちんとやろうとしたらメンタルを病みそうだな、と思ったからなのだ。

それでも長男のおねしょ期は1年弱のあいだ、毎朝洗濯することを繰り返し、お気に入りのカレンダーにうまくいったら丸をつけるなどし、本人のモチベーションと自尊心を大事にしながら進める、なんてこともやってきた。

“がっかりするのを露骨に見せてはいけない”というのが、忙しい朝においては地味にストレスになる。

「ほうっておいてもそのうちオムツなんて外れるよ」という意見もあるが、それについては8歳をすぎてもまだ夜のオムツが取れなかったのも近くで2例ほど見ているので、なんともいいがたい。

長男が年長に進級したのが5歳半。次男が進級するときには5歳1ヵ月なので、半年の差は考慮し、年長さんの夏休みくらいには夜のオムツが取れればいいだろう、と緩やかなスパンで考えることにしている。

オムツはずしには「怒らない」「焦らない」「ほめる」「比べない」が大事なのだそうだ。まわりより半年~1年近く遅れるかもしれないが、まあ、早生まれの子とは得てしてそういうものだろう。

ワシノ ミカワシノ ミカ
1976年東京生まれ、都立北園高校出身。19歳の時にインディーズブランドを立ち上げ、以降フリーのデザイナーに。並行してWEBデザイナーとしてテレビ局等に勤務、2010年に長男を出産後は電子書籍サイトのデザイン業務を経て現在はWEBディレクター職。