新入園、新入学シーズン。何かと学校関連のグッズをそろえる時期がやってきた。春休みの短期決戦で、これからまさに準備と言う方も多いだろう。私も入園と入学を1回ずつ経験した。そして、その後、それらの用意したものが子どもにどう扱われるかも……。


■「布もの」は自分で作るのを前提にしない


園や学校の準備で多いのが、「布もの」グッズ。手提げ(複数個)、お弁当や給食関連(複数セット)、上履き入れ、体操着入れ、あとは地域性があるらしいが防災頭巾入れなど。このあたりがメジャーで、あとは様々に追加バリエーションがあるだろう。

今どき、「手作り」を求めるところは、私立の園以外にはおそらく少ないだろうが、結局のところ手作りでないと対応しきれないサイズ感や仕様のものが多いのも事実。「作れとは言われていないけどこんなの売ってないし!」という声も聞こえてきそうだ。

まず、自分で作ることにこだわる必要はない。身内・民間サービス問わず「外注」する。出来合いのものでサイズが合えばためらわず買う。もはやミシンって家電の範囲ではなくて、買うにはけっこう高くて専門性の高すぎる機械なんじゃないだろうか。

手作りが求められる場合、それが自分で選んで入った園の教育方針でそれに賛成なら快く従えばいいし、賛同できなければ自分で作ったふりをして外注したらいいだろう。

ただ、お金で依頼するサービスではなく身内にお願いする場合は、心からのお礼を言葉で伝えるのを最低限の礼儀にしたい。かつて、布売り場で「孫のをね……」とため息をついているおばあちゃんに遭遇したことがあるので、得意だからって作るのは「ラクじゃない」し、時間を使ってくれているということは知っておいた方がいい。

■「自分で作りたい!!」気持ちとの折り合いの付け方


面倒といいつつも、実は「自分で作りたい!」という気持ちがある人の場合は、思う存分作った方が満足できるだろう。ただ、気持ちに反して、時間がまったくないという人も多いはずで、作りたい気持ちだけが先行して暇がなく焦ってイライラしてしまうのがよくあるパターン。

この場合は、その「自分で作りたい!」気持ちとの戦い方が重要だ。かく言う私も、自分で好きな布を買って作りたくて、でもやたら忙しい時で、結局入園とか入学とかの直前に徹夜する勢いでミシンを動かしていたような記憶がある。でも、これは子どものため云々というより、自分のこだわりとか作りたい欲求でしかないからもう仕方がない。

こういう「自分で作りたい!」タイプで余裕がない人におすすめな方法がふたつある。

ひとつ目は「何か1点だけこだわって手作りすること」だ。手作りをゼロにしないで何かひとつだけ自分で好きなように作って気持ちの折り合いをつける。それで、あとは割り切って購入してしまえばいい。

ふたつ目は、「買ったものにひと手間加える」。ベースの袋部分を裁縫するのはあきらめて、無地の袋や手提げを買って、飾りを縫い付けたりアップリケや刺繍やアイロンプリントや布書き絵の具などを利用してオリジナリティを出す。手作りしたいタイプの人にとっては、こういう作業は楽しいことだろうから、ベースの縫い物の手間は省いた上で、手作りを楽しめばいいだろう。

■布ものグッズのリアルな運用実態


仮にがんばってトータルコーディネート的に心ゆくまでそろえたとしても、小学校のように管理が子ども自身になると、運用があっという間に滞る。給食袋をいくつも学校に置き忘れて3つまとめて持って帰ってくるとか、そういうことが平気で起きるので、足りなくなってその辺の適当な袋に適当な布を入れて持たせるようになる。

手さげだって学校に置き忘れて戻って来ない日々が続き、いざって時に家になくて、どこかでもらったエコバッグだとか紙袋だとかを持たせることもよく起きる。

こうやって、日々追いつかず適当な運用になっていくので、あんまり最初に気合をいれる必要もないよなぁ、とこれまで何度も思った。

■名前付けを「素敵にしたい」と最初は思いやすい


布ものグッズと共にやってくるもうひとつの試練が、名前付けだろう。やたら持ち物に記名しなければならない。しかも、最初のうちって、直接マジックで書くとかじゃなくて、なるべく「いい感じ」に名前付けをしたいとか思いがちだから危険だ。

「お名前シール」とか「お名前ハンコ」とか、今はオーダーできるおしゃれなものがいろいろあるようだから、それらを利用してどんどんラクに素敵に名前付けをすすめるのもいいだろう。

手作り熱が高まりやすいタイプの人にとっては、プリンタで出力できる様々なタイプのシール用紙や、アイロンプリント用紙、直接プリントできる布など、妄想ばかりば膨らむアイテムが多いので要注意。

かつて私も、手描きしてスキャンしてパソコンで加工して名前シールやアイロンプリントを作ったり、布書き絵の具で直接、絵と名前を描いたりなど、数々の「やりたいトラップ」にうっかりはまった。

■やっぱり「黒マジック」がすばらしかった……


ただ、いろいろ凝ったこともやった結果、私が身にしみていることがある。どんなに凝ったところで劣化する。劣化した時に同じ作業をやる気力や時間がない限り、結局黒マジックで直書きするのが最強だという運用に落ち着いてしまうのだ。

さらに、シールは劣化の前に大きな壁があった。子どもが自分ではがしてしまうのだ。

特に小学生になりたてなんて、授業中フルに座っている集中力がない子どもが何をするかといえば、手近な文房具に貼られたシールをカリカリぺりぺり端からはがしていくこと。シールは手の届く限り、貼った分だけはがされる運命にある、ということを体感した。

だからとくに、鉛筆にシールで名前付けするのは一番勧められない。おしりのほうをちょっと一部薄く削り取って露出した木の面に黒マジックで書くという昭和的なやり方が一番劣化に強い。入学祝いの定番の名入り鉛筆の刻印は最強なので、かなりありがたいのだが、ものを無くすタイプの子の場合、すごい勢いで1ダースの鉛筆がなくなっていくから到底追いつかない。

最初がどんなに「いい感じ」だったとしても、油性黒マジックを常備して、ためらいなく何にでも直書きするようになるのが、リアルな運用の現場。薄くなったらまたマジックで上から重ね書く。あぁ、どうせこうなるなら、最初から全部黒マジックでよかったじゃないか、と、つくづく思う。

作業の負荷も、シールが楽かっていうと微妙なところ。教材付属のシールなら別だけれど、自分でシールを用意して一つひとつ丁寧に貼るのと、マジックでザクザクと書くのでは、たいして手間はかわらないような気がする。

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新入園とか入学となると、親は気合が入ってしまやすい。「自分で作りたい」とか「いい感じに名前付けをしたい」とか、そういう気持ちを持ちやすい人は、もう、思うこと自体は仕方ないから、その気持ちの落とし所を見つけられるといいだろう。

「運用はかなりいい加減になるらしい」ということを前向きに信じて、少量だけ思い切り手間をかけたら、あとは、割り切って最初から手を抜いてみてはどうだろうか。

狩野さやか狩野さやか
Studio947でデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる。自身の子育てがきっかけで、子育てやそれに伴う親の問題について興味を持ち、現在「patomato」を主宰しワークショップを行うほか、「ict-toolbox」ではICT教育系の情報発信も。2006年生まれの息子と夫の3人で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者資格有り。