何年か子育てをしてきて、「母親+子ども」の時と「父親+子ども」の時とでは、どうやら子どもの態度が違うようだ……と感じている親御さんはいるだろうか。

私は、夫から話を聞く限り、「父親+子ども」セットの方が、生活をすんなり回しているように感じており、このたびママ友から、「私の時のほうが、明らかに大変」だという証言が取れたので、私事だが公開する。

「やっぱりそうだった!」というスッキリ感と、「しかしなぜ?!」というモヤモヤ感。子どもに振り回される心身ともに、げっそり感を味わっている。今回はそこを考えてみたい。


■我が家の父親と母親との違い


我が家の保育園のお迎え担当は、基本的に私だ。だがこの1年間事情があり、夫に週一回だけ、お迎えから寝かしつけまでワンオペでやってもらっていた。

私がお迎えの場合も、降園後から寝かしつけまで、ほぼワンオペである。よって≪母親1人:子ども2人(2歳&5歳)=母親劣勢』という構図が出来上がっており、私がイライラを爆発させないで一日終われるか否か、の勝負をしているようなものだった。

だから、お迎えを頼んだ当初は「夫は一人でさぞ大変であろう(上から目線)」、「このすり減る感じを夫も味わうがいい(しめしめ)」、などと思っていた。

しかし、数ヵ月たっても夫から弱音が聞こえてこず、満を持してきいても、「え、別に大変じゃない」との回答。詳細をインタビューしてみたら、私が世話している時の「衝突」や「徒労」がないのだった。以下、第三者から承認されている詳細を比べてみよう。

▼保育園のお迎え時
・母親の場合:
長男は母親が迎えに来たと知っているのに、こちらを見ようとせず、遊び続ける。声をかけても返事なし。保育士の先生から、「ママがお迎えきてるよ~」と再三言われてようやくこちらを見る。が、さっと来るわけではなく、先生への濃厚なハグ、お友だちとの惜しまれるやりとり、持ち物を忘れて帰ろうとし、あげく帰ることを忘れて、また遊び始める……で10分以上ダラダラ経過。

ようやく教室から出たと思ったら、階段をエクソシスト風に降りる、イグアナ風に降りるなどを試み、玄関では掲示板に釘付け。ドアから出たら、「友だちと一緒に帰る!」ともう10分粘る。長女は壁に張り出されている自分の写真をみつけたり、写っているお友だちのお名前を呼んだり。私が保育園に入って出るまで、およそ30分以上はかかる。

・父親の場合:
長男はすみやかに荷物をまとめて退室、降園(夫は娘を保育園に忘れていきそうなことが1回)。

▼降園後の公園にて
・母親の場合:
「ママ見てみて~!」&「遊具のサポートして!」&「トイレ行きたい~(なぜか公園のトイレが好き)」&「追いかけて~」の要請が矢継ぎ早に繰り出され、私はあっちへいったり、こっちへいったり。2歳の娘は、上りたくてもうまくいかない遊具の前で泣き、「ママ~おしりをおさえて~!(怒)できない!」と不機嫌なので張り付いている(下記、遊具画像)。

・父親の場合:
遠巻きに子どもたちを見ている父親。2歳の娘は、私の前だと上れない遊具を、「ひとりで」「何度も」「アスリートのように」「ガシガシ上り」を繰り返しており、一人でのぼりきると「やった!」といった表情で父親を見ていたという。

▼公園から家へ
・母親の場合:
遊びの終了時刻を告げると怒りだす。前もって「あと3分だよ」などと言おうもんなら「終わってないのに、言うな!」とキレ、暗闇のなかへ駆けていく。ほかの親子は帰るが、我が家はいつも最後。いつもだ。しぶしぶ帰宅するまで10~20分かかる。

父親の場合:
「時間だ」→手をつないであっさり帰宅。

一部始終をしっかり見てくれていたママ友は、「ママは毎日あんなに苦労しているのに……!」と、驚いたようだが、私も大変驚きました。

■緊張と甘えの関係


なぜこんなに子どもの態度が豹変するのだろうか? 以下、思い当たるフシを考えてみた。

1.子どもの人生において、70%ほどが母親と一緒にいる。病時は100%わたしが看病。つまり、病める時も健やかなる時も一緒にいるため、距離感ゼロで、遠慮がない。

社会人にとって社長にあたるのが父親、1歳上の先輩にあたるのが母親。バラエティ番組でいうスペシャルゲストが父親、司会が母親、といったところか。

2.パパの子どもに対する反応は、基本ドライ。「子ども扱いしない=甘えを許さない=厳しい」。(≒些細なことであれば、自分のスマホ優先)。私が当初、子どもたちに気を付けるよう言っていた、こぼさないで食べる、ものを片付けてから寝る、すみやかに風呂に入り、着替える等を、未だブレずに静かに強く真顔で要請し続けており、緊張感満載である。

3.母親からの愛情に飢えており、怒られることでコミュニケーションを取ろうとしている。……そうであれば、反省。

しかし、愛情に飢えて怒っているならば、父親には食ってかからない理由が以下の2択になりはしないか。
・父親からの愛情に満足している
・父親からの愛情に期待していない
主観だが、どちらもピンと来ず、3の反証にならないので違う……と思いたい。

4.単に私が、夫より甘い。

さて、大まかに4つ出したが、1+4が濃厚で、それぞれ全部当てはまりそうだ。
簡単に言って、私はナメられているのである。私が怒ろうが叱ろうが、「また、ちっこい犬が吠えてるぜ」くらいにしか効いてないのだろう。

そのくせ寝る直前に布団に入ると、2人とも「ママ、ぎゅーして。ちゅーして。世界で一番大好き」とのピロートーク(?)をささやき、「こっちだけ向いて!」と母親を自分専用にしようと喧嘩をおっぱじめるのである(頼む、寝て)。

父親の場合は、「ぎゅーして」と言われるが、その後は続かないことを考えると、「世界で一番、ママが好き」は、あながちウソではないらしい。

ふむ、私は子どもたちに振り回されるが、愛されているので「チャラにする」べきなのか。そういうもんだよね、と流すべきなのか……むかし、「お母さんの方が愛されているんですよ、いいじゃないですか」と保育士の方に言われたのだが、同意したいのに、腑に落ちなかった。残念ながら私は、そこに幸せを見いだせるタイプの母親ではないらしい。

■不満が溜まる方へ温かい対応を


我が家とは逆に「お母さんの言うことは聞くけど、お父さんだとまるでダメ」とか、「お父さんがとても甘いので、お願いごとはぜんぶ父にしてかなえてもらい、母親の言うことを聞かない」いうパターンもあるようだ。

そうなると、子どもに無視される方はイライラが募る。ましてワンオペで長く接していると、非常に疲れるのである。

そこを「マネジメントが下手なのだ」なんて思われると、とってもつらい。だって、たまたまナメられ役を引き受けているだけなのである。ましてやワンオペだと精神的に危なくなってくる。

身体的地獄が付きまとう乳幼児期が非常事態モードなら、子どもが2歳くらいになると徐々に通常モードへ移行していく。身体はマシになっていくが、気持ちのストレスは相変わらず響くことがある。


さて、自分がワンオペ&ナメられ役だなと感じたら、夜の休息を申し出てほしい。「私がいない方がうまく回るので」などとプレゼンし、週一回くらい逃避行か非ワンオペの日を作ってもらう、というもの。子どもの前から数時間でも姿を消して、自尊心を取り戻すのだ。夫婦が家庭を回す共同経営者である以上、ナメられ親には温かいまなざしを注いでほしい。

そして、子どもが寝静まった頃に帰るのはどうだろう。そこから家事をするにしても、自分のペースでできれば、精神的に落ち着くものだ。

私は、新年度から週5でワンオペ&ナメられ役を担当することになり、見た目もややげっそりした。が、実家に行って子どもを見てもらっていたら、自分のエネルギーが徐々に満ちてくるのを感じたのである。

私の場合、「適度な距離感があるほうが愛せるな」と身に染みたのだった。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。