我が家の娘も年長クラスに上がり、「保育園に通うのもあと1年足らずかー」「ランドセルどうしよう?」「就学前検診はいつだっけ?」「卒対もあるよなー」……と、あれこれタスクを思い出しては忘れ、を繰り返している。そして、ここ最近送迎のたびに、今までになかった空気を感じるようになった。

「あれ、送迎担当してるパパさん、ものすごく増えたんじゃない……?」

ある日登園すると、玄関ホールに置かれていた靴が、私以外すべて男性物の革靴だった。
また別の日は、土砂降りの雨の中、自転車の前と後ろに子どもを乗せたパパさんが、スーツの上に着ていたレインスーツを脱ぎながらバタバタと園内に駆け込む姿を見かけた。

毎朝我が家とほぼ同タイミングでお見送りをしているパパさんは、お迎えも担当しているようで、17時ごろ自転車で爆走しながら保育園に向かっている。

会話をしたことはないので、何組とか、名前までは知らないけれど、みんな乳児クラスに子どもを預けているようだ。


もともと地元出身の親御さんや自営業の家庭が多いらしく、送迎に来やすいパパさんの割合が多い保育園ではある。パパにお迎えしてもらうお友だちを娘が羨ましがっていること、夫が以前ほどの激務じゃなくなったことも重なって、我が家もちょくちょくパパのお迎えの日を設けるようになり、今まで10:0くらいだった比重が9:1くらいにはなった。

不定期だし、月数回程度だけど、我が家としては進歩だし、家族みんなに満足感もある。
しかし、毎日スーツ姿で自転車を飛ばし、日々、送迎をメインで担当しているパパさんがぐっと増えているのを確認すると、「少しずつ時代が変わっていってるんだな」と思うのだ。

「パパが送り迎えどっちもするなんて偉いなー」なんて思いも一瞬よぎった。
しかし、母親が送り迎えどちらも担当したところで「偉い」なんて褒められるわけでもないし、雨が降ろうが嵐になろうが、びしょ濡れになりながら、ヒーヒー言いながら送り迎えしてきたわけで、それらを自然な形で父親とも分担して、共有できるようになったということだろう。

ことさらに「偉いねー」なんて言うのは父親を外野扱いしてるみたいで、もしかしてすごく失礼な発想だったのかも、と恥ずかしくもなった。

褒められたくてやっているわけじゃないだろうし、私自身が、夫が家事育児に携わることを「子育ては夫婦の問題なんだから当たり前」と思ってやってきた張本人だ。関わり方の濃さは各家庭によって差があるけれど、どこも「これが我が家の標準仕様」と思ってやっていることなのだろうから「偉い」というのはきっとおかしな話だ。

先だって厚生労働省から発表された「2017年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業の取得率は前年度比1.98ポイント上昇の5.14%とのことだ。まだ決して高い数値とは言い難いし、無邪気に「過去最高なんだって」と喜ぶつもりもないけど、筆者の観測範囲だけでも育休を取得する男性は増えているし、育休取得の如何に関わらず、子育てと向き合う男友だちの姿はすごく自然体だし、数字やデータにはまだ顕れていない変化は確実にある。

働き方改革とか、女性の活躍推進とか、プレミアムフライデーとか、言葉の響きはいいけれど、いまひとつ実体が見えないものを字面だけ追っているともどかしくなったり、別に今のところ私に何の恩恵もないしな~とやさぐれたくなってしまうこともあるのだけれど、外へ出てみたり、人と会って喋ることで得られる実感も多くて、そういうものをもう少し大事にしてもいいんじゃないの、と意識している最中だ。

つい先日も、妊娠中の友人とスターバックスでコーヒーを飲もうとしたときに、友人が
「私はいつもこれなんだ」と言ってデカフェのカフェラテを注文していた。

妊娠中からカフェイン摂取について調べまくり、授乳期にはデカフェに関するコラムまで書いたというのに、いつの間にかカフェラテがデカフェで飲めるようになったことは知らなかった。

「私が授乳してた頃はデカフェにできるのはドリップコーヒーしかなかったんだよー」と、まるで戦時中の話をする老人みたいな口調になってしまったが、ちょっと目を離していた隙にこんな変化が起きていたとは……!

でもそういえば、スーパーでもコーヒーの棚にデカフェの種類がものすごく増えていたし、コンビニのレジカウンターで販売しているカップ入りコーヒーにもカフェインレスをうたったものがあった気がする。

市民権を得たとまではいかなくても、5年でここまで市場が拡大するなんてニーズあっての普及に違いない。当事者ではなくなったけど、妊産婦さんに優しい世の中になっていくのは単純に嬉しい。

パパさんの送迎と、デカフェのコーヒーは全く次元の違うレベルでの進化かもしれないけれど、こうやって見ると子育て周りのあれこれって5年単位でガラっと変わってる気がする。

たまたま自分の子育てが5年経過したから比較しやすい、比較するのにちょうどいい長さというのもあるけど、喜ばしい驚きや発見が実際多い。

逆を返せば、自分が常識だと思っていたことが、もう時代遅れだったり古くなっている可能性も多分にあって、新陳代謝していかなくてはいけないなと感じたのも事実。

本やニュースだけじゃなく、周りを見回して「今」を把握しなくちゃ、と考えつつ、「今月は何回くらいお迎えに行ってもらえるかな?」とカレンダーを確認している。

真貝 友香(しんがい ゆか)真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。