「人の身体の細胞は3年でまるっと入れ替わる」という話は聞いたことがあるだろうか。

あれは12年くらい前……京都に一人旅した定食屋で、隣席の夫婦と会話が始まったときのこと。脳外科医だという旦那さま(新婚&イケメン)がおっしゃっていた。

「人の身体は、脳も骨も3年で細胞が入れ替わる。今の身体を作っているのは3年前に食べたものだ」と。そして「うんうん」と相槌をうつ、きれいな奥様。

脳、すなわち心を形成する組織も入れ替わるから、「恋愛感情も3年たてば落ち着く」と聞いたときは、驚愕しながら納得したのだった(そしてこのご夫婦の3年後を想像したりした)。

さて、この話を聞いた旦那さんがイケメンという事実のほかに、本当に脳外科医なのか、新婚なのかの確証はなく、この手の医学ぽっい情報の責任は取れないので、ここではその真偽に触れない。

……でも、なんとなくつじつまが合っているように思えてしまう。

■3年サイクルで未来は見えそう?


近頃、毎日が気ぜわしく忙しいはずなのに、心はヒマ、というモヤモヤした気分になっている。若年性更年期?うつ症状?燃え尽き症候群?など、疑ったらキリがないのだが、ひとつの結論に行きついた。

「今の生活に飽きている」のではないか……。子どもを保育園に送り迎えし、仕事をして、なんとなく団らんしてを繰り返す生活に。ワンオペ家庭生活に慣れてコツをつかんできたのは私にとって喜ばしいことで、子どもは日々成長するから「飽きる」とは言いすぎかもしれない。もっと丁寧に表せば、「この生活にお腹いっぱい」なのではないか。

この膨満感は、ここ10年を振り返ってみると、だいたい3年ごとに顔を出し、私を新しいフェーズへ連れていく。

付き合って3年で結婚。

結婚して3年後に長男誕生。

長男誕生の3年後に長女誕生。

その長女は満3歳。←イマココ

おそるべし3年膨満感サイクル……。記憶にある限り、結婚したかった理由は、「付き合っている状態にお腹いっぱいになり、結婚というものをしてみたかった(好奇心)」だし、子どもを持つタイミングは、「2人だけの生活にお腹いっぱいになったから」。妊娠しやすい体質だったことに感謝している。

この膨満感現象に、「子どもの手がかからなくなる」が加わると、母親には自分と向き合う余裕が生まれる。ある人はドラマや観劇などの娯楽にハマり、ある人は資格を取ったり学び直したりし、ある人は新しい趣味に没頭する。恋に走る人もいるだろう。

自分と向き合うことで、新しい何かを求めるようになったり、赤子の奴隷的生活により、やりたいことが純化したのだろう。

よし、私もこの時期を利用して、仕事のビジョンをかかげ、徐々にそちら側に行こう……と思ったのだが、なぜかエネルギーが足りない。気持ちは日常にお腹いっぱいなのに、身体は日々を乗り越えるのに精いっぱいという感じ……ここ10年くらいの疲れが取れない。

なんともいえない気持ちで、今さら春のドラマ『おっさんずラブ』を観たら、スコンとハマってキュンキュンしている。主役が男性になるだけで、こうも新しく思えるとは! ああ、このくらいの活力を足しながら、飽きてはいるが余裕のない日々の舵を取っていくのだろうか。

過去は簡単にまとめられてしまうけれど、未来の3年を思い描くのはけっこう難しい。振り返れば、私はどのフェーズにいてもモヤモヤを抱えて、目の前だけしか見えずに歩いてきたなあと思い出した。私にとって人生設計をしてその通りに生きるというのは、なかなかハードである。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。