唐突ながら、結婚後、離婚を考えたことのある人はいるだろうか。

「独り身になったら/母子のみになったらどう生活していくか?」というソロバンをはじき、自治体の制度を調べ、生活プランまで思案した人は、どれくらいいるだろうか。

しかしながら、母親ひとりの稼ぎで子どもを食べさせていく厳しさが見えたり、今までのように子どもに習い事や外食などをさせてあげる余裕はないよなあ……という結論が出て、不満はあるものの現状維持に甘んじているという人、あるいは本気で離婚するほどでもないとくすぶっている人も、私のママ友にいる。

ここに、妻の経済力が夫より弱いパターンが多いことを実感する。
でもって、たま~に「オレの方が稼ぎがいいから!」というママ友の夫方の声が聞こえてきて、そこには「だから妻から離婚は切り出さないだろう(安堵)」という本音が透けて見える。

結論からいえば、その通りなのだ。
ただ、その過程には「いろいろある」ので、妻たちがときどき超絶キレたり、なんとなくイライラしているのだ。今回はそこをひも解いてみたい。


■男女別にみる平均年収


以下は、『平成29年分 民間給与実態統計調査 調査結果報告』(国税庁 長官官房 企画課)からのデータである。
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2017/pdf/001.pdf

主要なところを抜き出すと、「総労働者の1人当たりの平均給与は432万円(対前年比2.5%増)であり、これを男女別にみると、男性532万円(同2.0%増)、女性287万円(同2.6%増)」であり、「平均年齢は46.0歳(男性45.9歳、女性46.2歳)」とある。

ざっくり言えば、平均して男性は女性の1.85倍稼いでいるということになる。
この理由はさまざまあって、主なところで女性は非正規雇用が多いから、高給の管理職が少ないから(望む/望まないにかかわらず)、子育て中は時短になるから、などが挙げられるだろう。

また今年物議をかもしまくった医大の入学試験で、「女子は減点、男子は加点」などの恐ろしいウラ慣例が表沙汰になり、企業の就職には「男子に加点」が常識だという噂すらある。どうやら女性が安定した高給取りになるには大きな壁があるようだ。「自己責任」という言葉では済まされない、不利な条件がそろっているようである。なんだかなー……。

さて、それを前提に、夫の年収600万、妻の年収400万の稼ぎのいい夫婦がいるとしよう。数値の上では夫が200万円多く稼いでいるが、男女別の「稼ぐ力」にフォーカスすれば、夫は上記データの平均年収の約1.13倍であるのに対し、妻は約1.39倍である。評価の仕方が難しいところだが、女性の中でこの妻はけっこうがんばっている、といえよう。

加えてこのパターンが「残業代込み」の年収である場合、夫が残業できる理由に思いをめぐらせた方がいい。妻が時短を取って保育園の迎えをしているとしたら、自然とこうなる。

でも、もし夫と妻とで労働条件を同じにしたらどうなるだろう?

■カネに換算できない価値


例に挙げた妻ほど稼いでいないにしても、妻たちのインサイト(深層心理)には、「不利な条件でけっこうがんばって働いているのに、稼ぎが少ないからと甘くみられるのがイヤだ」があるように思う。

だから夫方は「妻の方が稼げないんだから」などと、「カネ」というものさしで相手を評価してしまうと……何かが壊れて元に戻らないか、家族関係がぐっと冷え込むのではなかろうか。これは双方に言えることではあるが。

私は母親となり、家族の心身を安定させる「あったかい家庭」を築くことは、めちゃくちゃクリエイティブで、ものすごくコストがかかる超・難関仕事だと身に沁みた。そのわりにはカネに正しく換算できない。

そして我が家の場合、私が疲れすぎたり気を抜くと、あっという間に子どもは不安定になるので、「あったかい家庭」の運営責任は、私の肩にのしかかっている。多くの家庭でも、仕事のあるなしに関わらず、母親にそれが偏重しているだろう。

その偏重を夫婦の課題として共有できるか、夫婦のチーム単位で稼いだカネだと捉えることができるかで、夫婦がこの先一緒にいられるかが決まるんじゃないかと考えている。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。