毎年3月上旬に発表されるワコールの「10歳キラキラ白書」。体の変化だけでなく心理面でも大きな変化を迎えるお年頃の女の子たちに実施したアンケート調査だ。目白大学人間学部心理カウンセリング学科の小野寺敦子教授の監修・分析のもと、これまでは、“母と娘”のコミュニケーションに焦点を当てていたが、今回の調査では、初めて“父と娘”の関係に着目。その発表会が3月1日、タレントの山口もえさんをスペシャルゲストに迎えて開催されたので、当日のようすをレポートする。



■10歳の女の子は「親がウザい」時期


山口もえさんは、11歳(長女)、7歳(長男)、1歳(次女)のママ。本白書を監修した小野寺先生とのトークセッションでは、普通のママと変わりない悩みを抱えていることを話してくれた。もえさんの長女は「ちいママ」と呼ばれたくさんお手伝いしてくれるそう。また「家族は協力」を合い言葉にしているそうだ。

まず先生から説明されたのは、「10歳の女の子の心理状況」。自分が10歳だったのははるか昔ではあるものの、先生の解説どおり、「大人を意識をして少し背伸びをしたい」「親がウザい年齢で反抗したくなる」という状態だったことを思い出す。

今14歳になったわが家の長女が10歳だったころ、相当なバトルを繰り広げていたことも思い出した。もえさんも、「親がウザいという気持ちはあってもいいのでしょうか?」と心配そうに先生に質問。先生によると、それはあっていいとのこと。この頃は「好きだけど嫌い」という「アンビバレント」な感情があり、「ウザいけど実は親を頼りにしている」時期なのだそうだ。

■「理想の結婚年齢は25歳」


続いて調査結果が順番に解説された。
【10歳キラキラ白書 2019年版】
https://www.wacoal.jp/girlsbody/oyanavi/10yearold_whitepaper/

まずは10歳の女の子の将来の職業。近年は男性に限られていた職業が女性もできるようになったりその逆もあったりして、職業は多様化しているが、10歳女子の「なりたい職業」は、昔からの定番ともいえる「保育士・幼稚園の先生」がトップ。そして、「理想の結婚年齢は25歳」だそうだ。これは私の少女時代とあまり変わりない気がする。世の中は変化してきているといえど、少女の憧れは今のところ不変なようである。

■好きな色は黒がトップ


驚いたのは、10歳にして「ときどきお化粧をする」子が3割、「恋をしている」子が7割ほどいたこと。さらに「好きな色」の1位が黒なのにもビックリした。最近の10歳はモノトーンを好むらしく、もえさんの長女もかつては赤とかピンクなどを着ていたが、10歳くらいから黒、水色、白、グレーなど落ち着いた色を選ぶようになったそう。

たしかにわが家の長女も、ピンクのランドセルを嬉々として使っていたが、学年が上がるにつれ、「ピンクにしなきゃよかった」と繰り返し嘆き、次女には「茶色」を勧めていた。

■「結婚しても働き続けるもの」との意識は浸透している?


将来のイメージについて、「仕事は一生続けたい」という10歳女子は4割近く。これは、10歳女子の母親の7割以上が働いていることが影響しているようだ。たしかに女の子にとって、将来をイメージできる一番のモデルは母親だ。私の場合は「母のようにはなりたくない」と思って、自活できる道を探ったという逆パターンではあるが、たしかに影響は受けている。

小野寺先生の分析によると、働く姿を子どもに見せることが、「結婚しても働き続けるもの」という子どもの「非伝統的性役割観」の形成につながっているそうだ。「伝統的性役割」というのは、「女性は結婚したら仕事をやめるもの」「家事は女性がするもの」といった考え方で、「非伝統的性役割」は、その逆。「結婚しても働き続けるもの」「家事は分担しよう」という考え方だ。共働きが増え、育児休暇からの復帰率が100%という企業も増えてきた現状を見てみると、たしかに「伝統的性役割」は影を潜めつつある。


……と思っていたら、先日、友人が深刻な顔をして、こう言うのにはショックを受けた。
「大学生の娘が大学院に進みたいって。そんなことしたら年もとるし嫁にいけなくなる」
いまだにそんな考えを、しかも私と同級の母親が持っているなんて……彼女はある地方都市に住んでいる。都市部以外には「伝統的性役割」はまだ根強く残っているのかもしれないなぁと感じた出来事であった。

■娘といい関係でいたい父親は積極的に家事をしよう!


今回のメインテーマ、「父親との関わり」については、父親と仲良くしているピークは10歳で、以降はどんどん下がってしまう結果となった。

「それをどうやったらキープできるかを考えるといいですね」と小野寺先生。
ちょっかいを出すというより、「関心を持っているよ」ということを伝えることが大事だそうだが、不器用なわが夫の場合、具体的にどうすればいいのだろう?

……と考えていたら、小野寺先生がご自身が監修した『パパのための娘のトリセツ』という書籍を紹介してくれた。発表会終了後、めくってみると、参考になりそうな一文を発見!「誕生日プレゼントカードに『困ったときは必ず相談してね』など書き添えておく」とか。なるほど!これなら夫にもできそうだ。

さて、発表会の続きに戻ろう。興味深かったのは、コミュニケーション量の多い父親は、家庭内で家事参加が多いということ。逆にいえば、父親が家事参加をすることで娘とのコミュニケーションも増えるということ。

つまり、「父親が娘といい関係を築きたかったら、積極的に家事をしよう!」ということなのだ。同時に、父親が家事をしている姿を子どもが見ていれば、自然と「男性も家事をするもの」という非伝統的性役割観を持つようになるのである。

■田中さんの家事参加度は3割!


では、もえさんの旦那さん、爆笑問題・田中裕二さんの家事参加度はどのくらいかというと、なんと30%と厳しい数字。


「野球選手も3割打ったらすごい。だから3割でいいかな」と、もえさんは会場の笑いを誘ったが、その内容は、必ずやってくれるのはゴミ捨てで、あとはもえさんが夜疲れて寝てしまっていたら洗濯機を回して干してくれる、田中さんが早く食べ終わったら食器を洗ってくれる、というくらいだとか。家事分担のルールはとくに決めていなかったそうだが、もえさんは「育児は積極的」とフォロー。育児協力度は60%で、かつ何かあると夫婦でよく話し合っているとのこと。そこは見習いたいところ。

■「ママのためにやってくれるパパ」がポイント!


さらに、もえさんの長女は、もえさんには話さないことを田中さんにだけ話したりと、父親の存在は貴重なようだ。そのようすを小野寺先生は「いいコミュニケーションができているご家庭」と賞賛。とくに疲れているときに、「ママのためにやってくれるパパ」は娘にとっては高ポイントになるという。ひいては「父親みたいな人と結婚したい」となるんだろうな。

やはり「家庭(夫婦)の姿」の影響は大きく、性役割分業意識に関する分析でも、「母親が働いている」「父親の家事参加が高い」と、娘も「仕事していきたい」となるという結果が出ている。

ジェンダー意識についても、小さいころからおままごとなど「女の子の遊び」をしていると、「女らしさ度」が高得点になり、周囲から「女の子は丁寧な言葉使いをしたほうがいい」と言われて育つと、「女の子らしく」を意識し、生き方やキャリア形成にも影響してくるそうだ。

やはり日常的な環境の中で知らぬうちに「男だから」「女だから」というワクをつくり、その中でしつけをしてしまっていることを再認識させられた。

■親自身が「自分らしさ」を大切にイキイキした姿を見せることが大事


しかし、小野寺先生は「モノトーン好きな女子世代には、男だから・女だからという考え方はもはや通用しない」と指摘。そしてこれからの10歳の娘の成長に大切なことは、親自身が男だから・女だからという意識で子育てするのではなく、「自分らしさ」を大切にしている姿を子どもに示すこと、そしてその中にも細やかな心づかいという「女らしさ」も忘れないように、と締めくくってくれた。ふむ、バランスが大事なのだな。

もえさんも、「この年頃はこういう気持ちでこうなっている、ということがわかると子どもへの接し方が変わる。背伸びをしている娘を温かく応援してあげたい。キラキラ白書で学んだことを、主人に教えてあげようと思います」と笑顔で話した。


ところで、先に述べた小野寺先生監修の『パパのための娘のトリセツ』。夫に読ませようとテーブルに置いておいたら、それを見た14歳の長女がひと言。
「娘のためのパパのトリセツ、はないの?」
娘は娘で親との関係性を模索しているのかもしれないな。
長女のそんな発言を聞くと、成長を実感し、「やっぱり子育てっておもしろい」と思うのであった。

【10歳キラキラ白書 2019年版】
https://www.wacoal.jp/girlsbody/oyanavi/10yearold_whitepaper/

取材・制作協力:株式会社ワコール
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