夏休みの半分が過ぎて、ここアメリカ・シアトルはようやく暑くなり、夏が本番に入った感がある。緯度が高くこの時期は日が長く、息子が近所の友だちとの遊びから帰ってくるのは、暗くなり始める午後8時30分過ぎだ。

「ただいまー」

それから1時間ぐらいの間、シャワーを浴び、ご飯を食べ、ちょっと遊びながら、今日のハイライトを話してくれる。でも、ベッドに入って「本を読んで」と言うとすぐ眠りに落ちてしまうので、サイドテーブルには夏休みの前から同じ本がずっと置かれたままだ。

正直、成長中の子どものエネルギーはものすごい。4月にスキーシーズンが終わった時は、「このままだと、3年後、いや2年後には完全に置いていかれるなあ」と思ったし、たまにヨガをやったりウォーキングしたりするだけでは、一緒に過ごす時間が多い夏休みについていけていない気がする。

そのタイミングで、年上の友人から筋トレの大切さを説かれたり、骨粗鬆症の予防を呼びかけるポスターを見かけたりして、やっぱりこれじゃいかんだろという思いが募る。それをどうにかするために、素直にジムでパーソナルトレーナーと予約を取り、ワークアウトを始めることにした。


私にあてがわれたパーソナルトレーナーは、長年アメリカに住んでいるというカナダ人の女性。ここではリサと呼ぶことにする。リサはまず1時間にわたり私と座って雑談のように話をしながら、「何があなたをワークアウトから遠ざけているのか」「あなたがワークアウトを始めることと継続することの鍵は何か」「目標は何か」といったことを聞き出してくれた。

正直に答えた結果、私は「ワークアウトは時間がかかりすぎる」「どうせやるなら効果的なやり方でやりたい」と思っていて、「ジムのマシンの正しい使い方がよくわからないために圧倒されて」おり、「活発な子どもと遊ぶ体力をできるだけ維持し」「冬のスキーシーズンに供えた体づくりを夏の間にする」必要があるということだった。

「なんだ、そんなことか」と思うかもしれない。でも、先入観のない第三者に改めて整理されたおかげで、等身大の自分を客観視して、ちゃんとスタート地点に立てるのはいいことである。"You have to start somewhere."(=とりあえず始めないと)とよく言うが、新しいことを始めるハードルが低いのが、アメリカの良いところのひとつだ。

リサは元気でポジティブだし(元気がなくてネガティブなパーソナルトレーナーなんているのかわからないが)、同じく子持ちでスキーが好きとあって、共通の話題もある。ワークアウトは私と一対一で話をしながら進めていくので、我慢しない、ウマが合う、ということはとても大切だ。

いざワークアウトが始まると、ケガしたら元も子もないので、普段はろくに説明を聞かずにとりあえず始めてしまう癖を抑えて、ちゃんと説明を聞いて、正しくやろうとがんばってみる。すると、「そうよね、そうそう、その調子。ここはちょっとこうして、もっとこうしてみよう。できてるー!」と、リサからポジティブな声かけが返ってくる。その呼吸は、子育てと同じかもしれない。

4回ぐらいのセッションで基本のプログラムができ、私も大きな問題がなくこなせるようになったので、それを自分で1ヵ月続けてみることが決まった。ひとつの節目である。

すると、「これからほぼ毎日ジムに来るから!」とやる気満々の私に、リサが「あなたの息子もパーソナルトレーナーと1時間のセッションを受けたら、ジムの同じ部屋でなら一緒にワークアウトできるからね」と言ってくれた。

8歳の子どもに筋トレはさせないが、トレッドミルやローイング、ボールを使ったエクササイズを教えてもらえるという。息子との時間を増やすためにがんばろうと思っていたら、思いもかけず息子と一緒にできることが増えるなんてラッキー。さっそく息子もセッションを受け、それからほぼ毎日、親子でジムに通っている。

「ママ、今日は何時にジムに行こうか」

私がちょっとサボりたくなっても、息子がこうして声をかけてくれると「じゃあ行くか」という気になる。「今のうちにうまくルーティンに組み込めば、私の性格なら9月に新学年が始まってからも自分でやる気を出していけるようになるはず」と自分に暗示をかけて、今日も親子でジムへ!

大野 拓未大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材や教育プログラム
のコーディネート、リサーチ、マーケティングなどを行っている。家族は夫と2010年生まれの息子。