太くて短かった2020年の夏休み、東京のベッドタウンである我がまちは、STAYとGo Toのはざまで、「都民じゃないから旅行してもよさそうだけど、新型コロナウイルスを拡散してたらどうしよう?」という問題に揺れている人が多かった。

会社では5人以上の会合を禁止されているが、満員電車に揺られて都内へ通勤する毎日。飛沫感染は防げても、接触感染はどうよ……? 答えのない問いに、親たちが、教育界で流行りの「自ら考えて動く力」を試されていた。


それは今夏のSNSに顕著に表れた。例年なら、海! 山! 花火! ビアガーデン、うぇ~い夏! と輝いているはずの画面が暗い。まず投稿数が著しく少ない。あったとしても、「家でパフェを作りました」、「パンを焼きました」、「この漫画にハマっています」など。批判リスクのない、安心安全なおうちコンテンツが目立った。

たまにいる「キャンプに来ました」報告でも、「貸し切りです!」とか「隣のテントとは離れています」などの文言を入れて「ちゃんと3密回避してますよおおお」とアピールしている。広告で炎上を起こす企業より、リスク管理にぬかりがない。みなさま、「どう見られるか」が分かっている。

■本当のところをきいてみた


数人のママにきいたところ、「じつは、旅行に行っちゃった。観光業界はいま大変っていうし……」、「じつは、保養所に滞在してたんだ……」、「帰省はしたよ~」という隠れGo To派と、「公園くらい。どこも行けなかったから、子どもはゲームばっかり」のほぼSTAY派、「プールに行ったけど、入場制限が厳しくて2時間待った」という、近場にGO派がいた。

我が家といえば、田舎に帰省する予定だったが高齢の祖母と「仮にムラで第一号になったら、石を投げられそう」という理由のため今回は断念。外出といえば、貸し切り状態の公園で水遊び、映画館で『ドラえもん のび太の新恐竜』を観て、室内遊園地で遊び、友人の家にお邪魔するといった、近場にGO派だった。

休校巣ごもりで「さんざんな目にあった」母親たちは、子どもが家に籠ったまま夏休みを終えられるとは思っていない。かといって、表立って遊びまわったり、楽観してマスクを拒否したりすれば、社会的に叩かれることも知っている。

万一、PCR検査で陽性になろうものなら、地域一帯に身元がバレ、子どもがいじめられるのでは?という危惧もある。感染者数(陽性者数)の少ない地域では、ウイルスより村八分にされることが怖いという親もいた。

このように、各家庭における大多数の「withコロナ夏休み」は、外の目を気にしながら、「家族の『無理のない範囲で』感染拡大防止をしながら遊ぶ」に落ち着いていたようだ。

■長丁場に耐えられるルールとは?


これからも、しばらくwithコロナ生活が続くにあたり、私たちは現実的に何ができるだろうか。こまめな手洗い、うがい、マスク着用は、無理なくできそう。3密回避は、保育園や幼稚園、小学校ではどうにもならないので、それに準じるかどうかは、家庭で意見が分かれるところ。理想とされる「宅配便は3日玄関外で放置してウイルス半減期を待つ」、「家についたら即シャワー」などの徹底は、正直難しいだろう。

しかし、家族だけでルールを設定できない場合もある。夫が医療関係者であるママ友によると、夫は職場でのクラスター発生を阻止するために、プライベートでも他人との接触をなるべく控えるよう言われているそうだ。家族もしかり。

夫は緊張感から家でピリピリするようになり、その影響で子どもがストレスを抱えてしまったらしい。医療関係者の方へは、日々頭の下がる思いだが、子どもに無理がたたるというのは何ともやるせない。「ウチに遊びにおいでよ!」といえない状況がなんとも歯がゆく、一緒にはしゃぎまわれる日が早く来ることを願うばかりだ。

なるべく他者との接触を避ける新しい暮らしは、大人社会のように何でもオンラインで代替可能とはいかない。隣りで友だちの熱を感じながら遊んで、ようやく満足する子どもたちの本質は、そう簡単には変われないと思うのだ。

さて、仲の良いママ友と定例だった親子の食事会は、再開していいものか。上の子たちの小学校、下の子たちの保育園が一緒で「毎日、家族並みに接触している」6人で、食卓を囲むのはありやなしや。あなたはどう考えるだろうか。

斎藤貴美子
コピーライター。得意分野は美容・ファッション。日本酒にハマり、Instagramの#SAKEISAWESOMEkimikoで日本酒の新しい切り口とコピーを思案中(日本語&つたない英語)。これからの家族旅行は酒蔵見学。二児の母。