「ねー、今日の晩ご飯何がいい?」

4歳半になった娘は日増しにおしゃべりが上達し、自分の考えもしっかり言ってくれるようになったので、夕飯の献立に迷ったときには、リクエストを出してもらうことが増えた。

娘の希望はたいてい麺類だから楽で助かるというのもあるのだが、意思疎通が図れるようになった証拠だなと感じる瞬間だ。

「うーんと、ミートソースじゃない、まえにたべた、きのこのスパゲティがいい」


……あれっ、今何て言った?

2歳くらいからずっとスパゲティと言えなくて、スパチ、と言い続けてきた娘が、ハッキリと「スパゲティ」と発音した。

「よし分かった、スパチね」と返すと「スパチじゃないでしょ、スパゲティ」と念押しを返された。

もうそんな赤ちゃんみたいな言葉は使わないわよ、と言わんばかりの得意げな顔に、ただただ淋しさが残った。言い間違いがひとつ、終わってしまった……。

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