病院の待合室で、赤ちゃん連れのお母さんに話しかけているおばさんがいる。
ちょうど孫がいるくらいの年の頃。

「母乳?」
「はい」
「あらいいわねぇやっぱり母乳は……そろそろ離乳食かしら?」
「そうですね」

感じのいいおばさんで、ただおしゃべり好きのご様子。微妙な母乳の話題に触れてしまうあたりも単に無邪気なだけで、決して嫌な感じはしない。あまりお母さんの負担になることを言ってはいけない、と気をつけている風もある。

一方、赤ちゃん連れのお母さんの方は、決して迷惑そうとかではないのだけれど、どうやら、初対面のおしゃべりは苦手で言葉少ないタイプらしい。

■赤ちゃんを媒介にしたコミュニケーション【微笑ましい系】


そのうち、おばさんは赤ちゃんに話しかけ始めた。

「あらいいわねぇ、いっぱい食べなきゃだわねぇ」
「本当にかわいい時ねぇ」

お母さんはそれを受け、おばさんに直接ではなく赤ちゃんに語りかける。

「そうだねぇ」
「よかったねぇ」

あぁ、なんか大人ふたりで話しているようでいて、すべて赤ちゃんが媒介している……。
会話のボールを赤ちゃんに投げ、そのボールを赤ちゃんを通して受けて、また赤ちゃん経由で返す……微妙なコミュニケーション不全。とはいえ、この場合、決して嫌な気はせず、ただ微笑ましい。大人同士が「でしゅねぇ」で会話しているように見える「ふんわり飽和」状態だ。


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